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【番外編】静寂の宿で、君という傑作を読み解く28

 呆然と吐息を吐き出す俺を置き去りにして、彼は手加減を緩めない。イッた直後の敏感すぎる肌は、彼の指先が触れるたびに歓喜の悲鳴を上げて熱を拾い集める。 「う……あ……あッ……ん、んっ……!」  抜かれることのない指が、収縮する内壁を執拗に弄り開く。一度つけられた火種は、あっという間に俺の全身を再び灼熱の渦へと巻き込んでいった。 「あ……んっ、しゅ……柊一さ……っ、俺のなか……きて……っ」 「まだだ。もっと解して濡らしておかないと」 「ロ……ローション……つ……使って……っ、は、早く……っ!」  ぬかるむ秘部に滑らかなローションを注ぎ込んでほしいと、俺は彼に必死でねだった。そうしなければ、溢れ出す快感に脳の芯まで溶かされてしまいそうだったのだ。  彼の指に弄ばれた体はどこまでも熱く、うずきを増していく。無駄な焦らしに耐えられる余裕など、もう一欠片も残っていない。    早く彼と繋がって一つになりたい。最奥の核を剛直で激しく突かれ、感情のすべてを真っ白な快楽で塗りつぶされたかった。俺は縋りつく手に力を込め、熱い吐息を散らしながらあられもなく乱れていく。 「しゅ、しゅう……いち……さん……っ、きて……っ、早く……っ!」 「仕方ないな……ローションを使うか……」  彼は一度俺から離れると、潤滑油を取りに立ち上がる。胸を激しく上下させ、身体全体で息をしながら、俺は潤んだ瞳で彼の動きを追いかけた。 「そんな目で見つめるな。余計にお前を強く抱きたくなる……」  柊一さんは俺の顔を覗き込み、低く掠れた声で呟く。 「ひゃう……ッ!」  ひんやりとした液体が奥へと注入され、俺の体はびくついた。間髪入れずに太い指が奥深くまで滑り込み、容赦なく肉壁を削り取る。俺は再び甘い悲鳴上げて体を蠢かせた。 「あ……っ、あ……んッ、しゅ……しゅう……いちさん……っ!」  彼は邪魔な俺の下着を完全に引き抜き、自らの下着も床へ脱ぎ捨てる。俺は早く彼を感じたくて、自ら腰を揺らしながら彼の熱を待ちわびた。彼は俺を覆い隠すように圧しかかり、口付けで言葉を遮る。 「……ん、……んっ……ふ……」  混ざり合う熱い吐息。お互いの蜜を確かめ合うように、深く深く舌を絡め合わせる。柊一さんは片手で俺の額に触れ、濡れた前髪を優しくかき上げた。 「……可愛くて、実に淫らな顔をしてるな、七瀬」 「しゅ……柊一さんが……っ、そう……させてるんだろ……っ」  秘部を弄る指先が、容赦なく一番弱い場所を突き始める。俺はもう我慢できず、彼にしがみついておねだりした。 「しゅ……しゅう……いち……さん……っ!きて……っ、早く……っ!」  待ち焦がれていた熱く太い塊が、一気に俺の中へと貫通する。俺は彼の肩にしがみつき、突き動かされるままに自らも腰を揺らした。 「お前の奥……信じられないくらい締まりがいい。……俺のを引きずり込もうと締め付けてくる」  狂おしいほどのピストン運動が始まると、俺の思考はあっけなく吹き飛んだ。彼が刻むリズムに合わせて腰を振り、甘く卑猥な欲望の沼へと深く沈んでいく。 「あ、あ……っ、ん、んん……っ、ああ……う……っ!」  強烈すぎる快感と、奥を広げられる激しい刺激に、目元から涙が溢れ出た。ぐしゃぐしょに乱れた俺の顔を、彼は覆いかぶさるように上から見下ろしていた。 「……あ、あ……っ、ああ……っ、ん、っ……ああッ! い、い、いっちゃう……俺、もうダメ……っ、いっちゃう……っ!」 「いけ、七瀬。俺もすぐに追いかけるから……」 「しゅ、しゅう……いち、さん、も……い、いっしょ……に……っ」 「お前ほど早くなんて果てられない。……先にいけ、七瀬」  涙と汗でぐしょぐしょになった顔を晒したまま、俺は与えられる凄まじい刺激を全身で受け止めた。激しく揺さぶられる腰に必死にしがみつき、そのまま真っ白な快楽の世界へと一気に解き放たれていく。 「うあ……あ、あ……んっ、ああ……ッ、あ……っ!」  視界も思考も白く染まり、思考が完全に停止する。それでも体にはまだ途方もない熱が残り続けていた。  絶頂を迎えてなお、柊一さんの容赦ないストロークは止まらない。一度果てたはずの(からだ)は、彼の望むままに再び激しい熱を帯び、どこまでも昂ぶっていった。 「う……、う……んっ……」  俺があげる快楽の悲鳴に重なるように、柊一さんの掠れた声が耳を打つ。秘部を叩きつけられる激しい衝撃の中で、確かに彼が興奮を抑えきれずにいるのを感じた。俺は彼の熱を受け入れるように、内壁のすみずみまで密着させて強く締め付ける。 「しゅ……しゅう……いち……さ……ん、こんど……は……いっしょ、に……っ!」 「……ああ、一緒に行こう」  腹の底に響くような低い声を受け止めながら、俺は突き上げられるリズムに合わせて腰を蠢かせた。彼の荒々しい動きに追いつくために。これ以上ないほど深い場所で、互いの快感を溶け合わせるために。 「……あっ……あっ……ああっ……ん、あ……ひぃあ……ッ!」  静まり返った旅籠の室内に、水音と俺の卑猥な喘ぎ声がどこまでも甘く響く。それに引きずられるように、柊一さんからも低い喘ぎが漏れ出していた。俺は彼の背中に爪を立ててしがみつき、身体の芯にある熱のすべてを彼へと委ねた。 「……くっ、な、七瀬……っ!」 「……あ、あ……っひぃあ……ッ!しゅ……う……いち……さ……んッ!」  お互いの激しい熱が交錯し、思考も意識も何もかもが真っ白な快楽に塗りつぶされて……俺たちは同時に果てた。  余韻に痺れる体で彼にしっかりとしがみついたまま、俺は声すら出せずに荒い息を吐き出すことしかできない。柊一さんは裏返った熱を静めるように息を整えると、避妊具を外して白濁した快楽の痕跡を手近くのティッシュで手際よく拭い取った。 「七瀬、いきすぎだ。……まあ、お前ほど感度がいいと仕方ないのかもしれないが」  そう言って、彼は俺の頬を優しく撫で上げる。 「……絶対にその顔、他の男には見せるなよ」  カラカラに乾いた喉を震わせ、俺はかすれた声で必死に言葉を紡いだ。 「……柊一さん……しか、いないもん……俺……っ」  彼の指先が愛おしそうに俺の髪を優しく撫でる。その顔には、俺を完全に支配し満たされた、深い満足感が浮かんでいた。 「部屋の露天風呂、汗かいたから、そこで汗を流すか、七瀬」 「うん。わかった。その前に水飲ませて…」  柊一さんは笑っていた。 「ゆっくり飲めよ。露天風呂は逃げないからな」 「うん…ありがとう」  俺も柊一さんに微笑みかけた。  静かな宿、暗がりな部屋に、そこだけ明るく光がさしているようだった。

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