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【番外編】静寂の宿で、君という傑作を読み解く50

 服を洗い終わり、乾燥も終わって、服を干した。淡々とした作業だが、柊一さんと一緒だからそれさえ楽しく思えてくる。こうだからきっとすぐに隙を突かれてしまうんだろうなあ。 「さ、て。服も干したし、歯磨きもした。後は寝るだけだな、七瀬」  俺は聞かないふりをしたが、彼はわざと顔を近づけ来るから、スルーもできない。俺は少し頬を染めて、視線をずらす。 「七瀬、先行くぞ。ベッドルーム。待ってるからな」  俺は彼を追いかける。 「やだ、柊一さんっ!置いてかないで」  階段を上り、俺たちは二階へ向かう。寝室のドアを開けると、部屋の真ん中に鎮座するキングサイズのダブルベッドが、嫌でも目に入った。  柊一さんはそのまま、吸い寄せられるようにベッドへダイブする。 「おいで、七瀬」 「に、二回戦……?」  俺が恐る恐る尋ねると、柊一さんは口元に妖しい笑みを浮かべた。 「…やっぱりそうなるよね…」  俺は柊一さんのもとにダイブする。 「あんまりキツいのはやめてね。明日仕事だから…」 「…加減はする」 「……ほんとかなあ」  疑わしげにじと目で睨んでみても、柊一さんはどこ吹く風といった顔で、俺の腕をすんなりと引いた。  あっけなくバランスを崩し、彼の胸元へと倒れ込む。シーツと柊一さんから漂う同じ香りに包まれて、一瞬で視界が彼の顔でいっぱいになった。 「嘘は言わないさ。お前の身体に響くような無茶はしない」  耳元にバリトンボイスで囁かれ、ぞくっと背筋が痺れる。  柊一さんの手が俺の背中に回り、ゆっくりと撫で下ろされた。その大きな手のひらの温もりが服越しに伝わってくるだけで、さっきまで「明日も仕事だし」なんて警戒していた理性が、ボロボロと崩れ去っていくのが分かる。 「そういう顔をするから、甘やかしたくなくなるんだ」 「……どんな顔」 「俺の手の中で、今にも溶けそうな顔」  意地悪く囁きながら、柊一さんの指先が俺の顎を持ち上げる。  重なる視線から逃げられなくなって、俺は降参するようにそっと目を閉じた。 「……柊一さんの意地悪」 「分かってるなら、最初から大人しく身を委ねておけばいい」  触れ合う唇からこぼれた言葉は熱を帯びていて、俺はもう、彼の手のひらの上で転がされる以外に何もできなくなっていた。 「柊一さん……好き」 「……知ってる」  重ねられた唇から、彼の体温が流れ込んでくる。口内を侵食するように深く割り込んできた熱い舌を受け止めれば、うっとりと意識が白く霞んでいった。追うようにして舌を絡め合わせると、胸の奥から甘い吐息が零れ落ちる。  背中を優しく撫で上げる大きな手のひら。ただそれだけの仕草なのに、跳ね上がる心臓の鼓動がうるさいくらいに身体中に響いていた。  柊一さんは俺の身体を軽々と抱きかかえると、そのままベッドの上へと押し倒した。背中に沈み込むシーツの柔らかさと彼のズシリとした重みが、熱を帯びた身体に心地いい。  柊一さんの手がかかり、俺の服が次々と脱がされていく。抵抗するつもりなんて最初からなく、彼の手つきに身を委ねるたび、露わになった肌が空気に触れて小さく震えた。 「俺ばっかり脱がされるのは嫌……っ。柊一さんも脱いで……」  上目遣いで強請ると、柊一さんは低く喉を鳴らした。 「……分かってる」  彼は自らの衣服を無造作に脱ぎ捨て、俺たちは再び、あのバスルームの時と同じ無防備な姿で重なり合った。  柊一さんが俺の上に重なり、首筋へとしっとりとした舌を滑らせる。同時に、大きな指先が胸の突起を愛撫するように捏ね上げた。  一度にふたつの弱点を攻め立てられ、思わず喉の奥から甘い声がこぼれ落ちる。その反応に火がついたのか、柊一さんは執拗にそこを突きながら、空いた手でゆっくりと下肢の中心へと手を伸ばした。 「ん……っあ……んっ、ぁ……」  必死に抑えようとしても、熱い吐息が洩れてしまう。柊一さんは快感に揺れる俺を愛おしむように、首筋から胸元へと追うように唇を這わせていく。  舌先で片方の突起を転がされ、指先でもう片方を意地悪く弾かれる。さらに下半身へも絶え間なく熱い刺激を与えられ、俺の意識甘い痺れの中に溶かされていった。 「ん……っ、しゅ…う…いち…さん…っ」  俺の声に応えるように、彼の指が甘い熱を帯びた箇所を容赦なく揉みしだく。逃げ場を失った指先が握りしめるシーツの皺だけが、彼から与えられる過剰な快楽の証拠だった。 「七瀬、可愛い」  鼓膜を揺らす低い掠れ声。胸元から離れた指先が、何のためらいもなく熱く固く締めつける蜜壺へと滑り込んでくる。 「あ……んっ、ぁ……ッ、ん、う……あ……ッ!」  途切れ途切れに溢れ出るのは、言葉にすらならない惨めな喘ぎ声。熟知された弱点を正確に突かれるたび、脳裏が真っ白に焼き切れていく。俺は天井を見つめたまま、乱れきった呼吸の整え方すら忘れて、ただ彼の思い通りに揺さぶられていた。 「……っあ、ダメ……ッ、そこ、は……っ」  指先が最奥の熱を帯びた一点を擦り上げるたび、腰が跳ね上がり、シーツを掴む手に一層強く力が入る。拒絶の言葉とは裏腹に、身体は彼の指を強く締めつけ、さらなる刺激を求めて蠢いてしまう。 「ダメ?こんなに締めつけておいてか?」  耳元に吹きかけられる甘く熱い吐息。彼はクスリと低く笑うと、侵入させた指の数を二本、三本と増やす。急激に押し広げられる異物感と、それを上回る圧倒的な快感に、視界がじんわりと涙で滲んでいった。 「う……ぁっ、あ、んっ……!あ……っ、……も、っ……!」 「いい顔だ、七瀬……。もっと声を聞かせろ」  内側から執拗に掻き回され、すでに思考はまとまらない。天井を仰ぐ首筋をなぞるように彼の唇が滑り落ち、鎖骨へと強い痕を残していく。  逃げ場を塞がれたまま与えられ続ける熱に、俺はただ翻弄され、自ら彼にしがみつくことしかできなくなっていた。 「……っ、柊一……さ……ん……っ、……柊一……さん……っ!」 「……そんな声で、俺の名前を呼ぶな……ッ。手加減できなくなるだろ」  掠れた声で漏らされる熱い吐息。内側を執拗に抉り取られる激痛のような甘美さと同時に、もう一方の彼の手が容赦なくペニスを擦り上げてくる。過剰な熱量に耐えかねて、俺は無意識のうちに腰を浮かせていた。拒むためではなく、より深い刺激を乞うように、自ら浅く腰を揺らし始める。そんな俺の無防備な仕草が、さらに彼の理性を削り取っていくのが分かった。 「……しゅう、いち……さんっ、もっと……っ」  快楽の熱に浮かされるまま、俺はついに本音を零してしまっていた。その言葉を受け止めた柊一さんは、熱っぽい瞳で俺の顔を凝視すると、覚悟を決めたように一気に指を抜いた。急な喪失感に息を呑み、俺は離れていく彼の表情をただ見つめることしかできない。 「……ここから先はローション必須だな。お前が満足するまで、徹底的に可愛がってやる」  柊一さんは一度ベッドを離れ、手際よく何かを準備し始める。俺は呆然としながら、彼の背中を目で追っていた。 「ローションもゴムもちゃんと持ってきた。……お前の中に余計なものを残さないように、な」  戻ってきた柊一さんは俺の髪を優しく撫で上げると、息をつく暇もなく、ぬめりを帯びた指先を再び俺の最奥へと滑り込ませ、容赦なくかき回し始めた。

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