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掌編集【アイス】

悠優×大和の場合  ある日の深夜。  トラブルがあって持ち帰りになってしまった仕事を終えて漸く一息ついた悠優の頬に、突然ひやりと冷たいものが触れて悠優は飛び上がった。 「わっ……なんだ、びっくりしたなぁ、どうしたの?」 「どっちがいい?」 「お、アイス?高いやつだ」 「僕はこっちがいいんだけど」 「ふふ、いいよ」 「でもこっちも食べたいんだよね」 「わがままだなぁ」  悠優は真剣な顔で首を傾げながら悩んでいる大和の手をそっと引き、その両手にあるアイスのうち大和が「こっちも食べたいんだよね」と言った方をさらった。 「一口あげるよ」 「やった」  そうして二人でアイスの蓋を開け、一口。  皆が既に寝静まった深夜のリビングで、いつもよりも身を寄せて、低く小さい声で囁き合う。 「……背徳の味、だね」 「禁断の味だ」 「明日は一緒に2キロ歩こうか」  膝がふれあう距離で、悠優は己のアイスを大和の口元に差し出した。  悠優×燈の場合  燈は大きな目を更に大きくしていた。  何故なら今、彼の目の前に至高の光景が広がっているからだ。 「ゆっ……ゆうくん……」 「ん?」  ちょっとゆとりのあるタンクトップ。  なにそれ、拓海くんの?  ハーフパンツ。  なにそれ、ナマ脚が長い、長いよ脚が!  ハーフアップにした髪。  髪伸びてきたね、うなじ美人ですね?    極めつけの、棒アイス(咥えるのみ) 「神凪悠優という概念……」 「何言ってるの?」  そのちょっと反応に困ってる顔、165点。もちろん100点満点中の187点。  棒アイス、あざとい。悠優くんはカッコよくて最高の旦那様だけど、これをあざといと言わなかったら広辞苑からあざといという文字を永久に抹消すべき。尊い。288点。  燈はもはや自分が何を考えているのかわかっていない。手の中で棒アイスが悲鳴を上げていることもわかっていない。 「あ、燈」  はい、なんでしょう 「溶けるよ」  昇天。  それはずるいよ、旦那様。  悠優×拓海の場合  ぺりぺり、とめくった蓋からふたつのまあるい大福アイスが顔を出す。今日の買い出しで期間限定新発売の文字にまんまと釣られた拓海はちょっと嬉しくなりながら付属の楊枝を取って、いただきますと手を合わせようとしたその時。  ぬ、と後ろからフォークが出てきた。 「あっ!てめ、大和……!?」  こんな暴挙をするのは絶対に大和だろうと振り返った瞬間、拓海はフリーズした。 「へへ、半分こしよ」  普段ゆったりと微笑みをたたえて四人の妻を愛し尊重しこの世で一番幸せにしてくれるパーフェクトダーリンと(妻達の間で)評判の悠優の、まるで悪戯っ子のガキ大将のような、そんな顔。 「………………くっそおおおお」  許しちゃうだろ、そんなの。  ぽっかりと空いた容器の穴の一つを恨めしく睨む拓海の顔は、期間限定のいちご味に負けないほどピンクに染まっていた。  悠優×賢太郎の場合  暑い。  車でちょっと移動というのは意外と不便なのだ。空調が効く前に目的地についてしまって暑いまま。賢太郎はイライラしながらコンビニを後にした。  悠優は灼熱の車内に残って電話している。賢太郎は小走りに車まで戻り、中の様子を伺って、悠優の電話が終わっているのを確認して後部座席の窓をコツコツ叩いた。 「おかえり」 「お待たせしました、アイス買ってきました」 「わー嬉しい!流石……あ」  悠優がおもむろにちょいちょいと手招きする。賢太郎は何も疑わずに近くに寄る。暑くて緩めたネクタイをぐいと引っ張られて、  べろり。  首筋に滴る汗を、舐められた。 「んなっ……悠優!!」 「あはは、塩分塩分」  舐められた首筋を押さえながら、賢太郎はさっさとアイスを頬張っている悠優の舌の動きから目が離せないでいた。

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