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第7話
朝と夜は毛布の中から分かる、外の明るさから知ることが春樹には出来た。翌日の朝。毛布から出られず縮こまっていた。引きこもっていても何も変わらない。
「動かないと、出ないと」
分かっているのに身体が動かない。お腹が空いた。久しぶりにお腹が空いたなんて思った。
「聞こえるか」
この人は昨日の人。深みのある声。心地が良い。俺を助けてくれた人が少し高めのテノール。綺麗な声だった。
「……はい」
「自己紹介が必要でしょう。ルカに言われた。俺は、騎士団の団員以外とほとんど話さない。愛想も良くない不器用だと言われる。ヴォルク・アッシュハイムだ。年齢は29。狼族の大剣士。騎士団の副団長でもある。魔法は身体強化以外は使えない。エルンスト団長を尊敬している」
ヴォルクさん。声は愛想が良くないようには聞こえない。不器用。表情の作り方かな。声だけなら怖くない。彼を見てしまって怯えない自信は春樹にはなかった。
「お腹空いてるだろ。スープだ。具はない。固形物を控えよと医者に言われた。置いて行く」
怖がっているだけじゃ駄目だ。俳優の先輩から自ら声をかけなければ、仕事は来ないぞと言われた。実を言うと人見知りで最初は何も出来なかった。先輩にお礼も言えずに死んでしまったことを、春樹は今更後悔していた。後悔はしない生き方を今度こそしたい。お礼も言えない人にはなりたくない。
「あっありがとう。ヴォルクさん。俺は」
春樹は前世の名。今は転生したから。
「ハルです。多分、歳は19歳。助けてもらわなかったら、10年牢屋暮らしだった。えっエル、エルンストさんにもありがと。伝えて……いや、俺自身で伝えます」
「分かった。ハル。礼は不要だ。ではおれは行く」
遠ざかる足音。美味しそうな匂い。毛布から鼻と口だけ出す。匂いでスープの位置は分かる。
「おいしい」
転生して初めてハルは涙を流した。
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