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第9話
玄関の扉を少し開けて、エルンストがたぬきの毛を整えている姿を覗いている団員がいた。覗くつもりはなかったのだが、驚いてしまい中に入って声をかけられなかったのだ。
「グレン。どうしたんだ。そんな所で」
「シアン。あの。ああ」
「歯切れが悪いなぁ。早く入室すればいい。何が見え……」
いつもは、飄々としていて空気なんかわざと読まずにずかずか入って行くシアンも固まる。エルンスト団長が他人の世話を焼くなんて、団長の姿を変えた別人。幼獣趣味。あれが噂のたぬき。小さい。団長が新たな趣味に目覚めた。シアンもグレンが固まるのは無理もないと思った。
「何をしているんですか、扉の前で邪魔ですよ。シアン。グレン。城の防壁修繕は完了したのですか?」
「した。終わっている」
「そうですか。どうしたのですか?」
ルカも同じように部屋の中を覗いて、静かに扉を閉めた。なんの動揺もしていないような顔をしてルカは言う。
「んん。新しい趣味でしょうか。エルンスト団長が小さい獣人を愛でる姿なんて、外に出せませんよ」
入るか、入らないか。3人は決めかねていた。もう少し様子を見ようか。
「……」
「どうした。入らないのか?」
やって来たのは静かに何も言わずに佇む、暗殺担当の黒豹族。黒い腰には届かないぐらいの癖毛。鋭い眼光は薄ピンク。29歳。ライオ・ノクターン。偵察担当の鷹族。銀髪だが毛先は薄水色の髪。瞳も薄水色。21歳。セオ・ハルパー。
「ライオ、セオ」
ルカが2人の名を呼び中を見るように言う。2人も中を見た後、静かに扉を閉めた。さっきは喋らなかったライオが口を開いた。
「あれが、例のたぬき」
「ああ。団長から指示だ。切り終わるから待て。お前たち。変な想像しているようだから、訓練場20周行ってこいだそうだ。俺とライオ以外」
セオは冗談を言わない。空から全員を見て、冷静に分析し的確に指示を出す。エルンスト団長に最初から気付かれていたようだ。
「行きますよ。グレン。シアン」
「分かった」
「はーい。面倒くさ。走らないで怒られるのは、もっと面倒」
3人は寮から出て行く。ライオとセオはたぬきを作戦会議室に、団長が入れたところで寮に入った。
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