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第15話

 ハルの隣にヴォルクさんが座った。何か言わないと。ハルは言葉が出ない。 「一緒に作らないか」 「えっ、なにを」 「料理だ。昼。……食事をきちんと食え。倒れられたら面倒だ。自分で作れば食べられるだろ」  ご飯。捕まっている時は、変な薬を入れられたりして、まともなご飯を食べられなかった。薬を入れられた日はまともなご飯。腐ったパンや、変な匂いのスープの日はなにも入れられていない。 「は、はい」 「左の部屋が台所だ。行くぞ」 「わか、分かった」  食材。分かるかな。転生してから食材なんて見たことなかった。幼い頃も毒を入れられるかもしれないからと料理はさせてもらえなかった。前世での経験がカウントされるなら人並みに料理は出来ると思う。台所でハルに渡されたのは、おたまだった。 「鍋のスープを混ぜてくれ」  具材はシンプル。人参、じゃがいも。玉ねぎ。味付けはなんだろう。塩味かな。 「団長に教わったスープなんだ」  ヴォルクさんは、野菜を切って肉を炒めている。ハルは分かった。彼は心配している。刃物。包丁を持ったら、死のうとするのでは。ハルはそんな怖いこと出来ない。 「そ、そうですか」  一言言うことが精一杯で。本当は死ぬつもりはない。野菜を切ったりも出来る。料理を作るなんて余裕。見せたかった。怖さと緊張で言われたことしか出来ない。 「ごめんなさい。ごめんなさい」  ハルはおたまでスープをかき混ぜながら、謝り続けた。涙も出ない、表情筋も動かない。鍋の中のスープを見つめて。たぬき姿に戻ってしまい、作業台にさっさと隠れて耳と目を閉じた。

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