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第22話
「別の騎士って誰なんですか?ヴォルクさん」
「ああ。うちが基本的に奴隷商人潰しをしているように。あいつらは街の治安隊だ。コウモリを幻術で操り従えているサイ族」
「サイ?」
「あのツノで先手必勝で攻撃する」
額のツノで突かれたら、怪我どころではすまないのでは、とハルは思った。
「いけすかないの?」
「毎回。俺らの隊が問題を起こすたびに馬鹿にして、猫族の隊長を見下している。階級は上で肉食動物だが見た目であいつらは判断する」
厳つい見た目で、エルンストさんの方が弱そうに見える。見た目が強そうな人に従うのかな。
「見た目強そうな人なら従うのか?ヴォルクさん」
「そうだな。獣人も肉食動物には逆らわないが暗黙のルール。うちの隊長は穏やかで優しい。滅多に怒らない。なめられることが多い」
ヴォルクさんの言葉通り、馬鹿にしている声が聞こえる。
「またか。おまえら爆発させて騒ぎを起こしてまで、注目されたいのか。毎度毎度ご苦労なことだな。なぁ、ねこちゃん団長さん」
「苦情でもありましたか?」
「苦情でもありましたかじゃない。大きな音を立てて苦情が無いと思ったのか。奴隷上がりが」
ハルはエルンストさんの拳がキツく握られているのに気付いた。
「サイ族はどの種族なら、逆らわないの」
「ライオン族だな」
「ヴォルクさん。ライオン族はどんな姿をしている?」
「ぼさぼさの金茶の髪を無造作に、束ねて、タンクトップ姿でかなりの筋肉をもっていて、ハル何するつもりだ」
「ヴォルクさん。おろして」
リュックを地面に下ろしてもらい、ヴォルクにリュックからハルは出してもらった。
「上着貸して、僕にかけて」
小さなたぬき姿のハルに、ヴォルクが羽織っていた上着を被せた。変身術。ハルの得意技。イメージと媒介にするものがあればどんなものにもなれる。
「はっハル」
寡黙なヴォルクさんには珍しく驚いた声を上げた。
「こんな感じで大丈夫?」
ライオン族の姿に変身したハル。
「声はもう少し低い」
「ん、んん。こんなか。合わせて。大丈夫だから」
「……あぁ。今の声でいい。合わせる。やれるだけやってみよう、」
ヴォルクは低く短く答えた。けれど肩を組まれたまま、ちらりとハルを見る目は落ち着かない。
「無茶するなよ。バレたら、面倒だ」
「大丈夫だって」
「お前の“大丈夫”は信用ならねぇ……」
ぼそりと漏らして、ヴォルクは深く息を吐いた。
騒ぎの中心では、サイ族の男がまだエルンストを見下したように笑っていた。
「どうした? 猫族の団長さんは反論もできないのか」
「……」
エルンストは何も言わない。ただ静かに拳を握っている。
その空気を裂くように、ヴォルクが前へ出た。
「おい」
低く、よく通る声。
サイ族が眉をひそめて振り返る。
「あ? なんだ狼」
「……失礼だろ。うちの隊長に」
「はっ。事実を言っただけだが?」
鼻で笑うサイ族。
その瞬間、ヴォルクの隣にいた“ライオン族”のハルが、ゆっくり顔を上げた。
金茶の髪。
鍛え上げられた腕。
獣のような鋭い眼光。
サイ族の空気が、一瞬で変わる。
「……誰だ、お前」
ハルはわざと面倒そうに肩を鳴らした。
「別に。通りすがりだ」
低い声。
「ただ、随分とうるせぇから気になった」
サイ族がわずかに身構える。
ヴォルクは内心ひやひやしながら、小さく呟いた。
「……似すぎだろ」
「ん?」
「いや……何でもねぇ」
短く言って視線を逸らす。
普段感情をあまり出さないヴォルクだったが、耳だけはぴくりと落ち着きなく揺れていた。
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