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第23話

 ハルはクールな演技をしたものの、内心ではレッドカーペットを歩いた時ぐらい緊張していた。 「とっ、通りすがりのライオン族の方が、どうしてこちらに」 「別に。友人から相談されて、様子を見に来ただけだ。何か文句あるか」  友人と言いながら、ハルはヴォルクを横目で見る。それだけで、喧嘩を売った相手を理解したみたいだ。 「騎士団が問題を起こしてですね」 「……また、お前らか」  低く呟くだけで、サイ族の肩がびくりと揺れた。 「あ、あれはですね……」 「失礼しました。次はないからな」  ハルを見て怯えたように、サイ族は去って行く。  姿が見えなくなった途端、ハルは変身を解いてその場にへたり込んだ。 「緊張した……。できれば二度とやりたくない。足、震えてる」  エルンストとヴォルクを見上げると、何故か二人とも肩を震わせていた。 「なんで、笑って……」 「……いや」  先に吹き出したのはエルンストだった。 「ずいぶん堂々としていたからな」 「……ああ」  ヴォルクも口元を押さえながら頷く。 「演技とは思わなかった」 「ギャップがな。面白ぇ」  短くそう言って、ヴォルクはハルの頭を軽く撫でた。  笑いながら褒められても、あまり褒められている感じはしない。けれど怒られるよりはいいか、とハルは思う。 「ハル」 「エルンストさん」 「変身術が使えるのか」 「たぬきですから。演技も、まぁそれなりに」 「あれで、それなり……か」  エルンストが感心したように呟く。 「ヴォルクさん。変な演技でしたか?」 「いや」  ヴォルクは短く首を振った。 「……助かった」  それだけ言って手を差し出す。  反対側からはエルンストも手を伸ばしていた。  ハルは少し笑って、二人の手を取った。

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