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第27話
「お呼び出し賜り、ご尊顔に拝謁致します。王太子殿下」
王太子殿下の部屋にエルンストは来ていた。王太子殿下。リジェスは美しく珍しい黒豹族の獣人。ゆうに、5人は寝られる豪華なベッドと来客用のソファー以外は簡素なもので、平民が使う様な本棚や机、椅子しかない。王族らしからぬ部屋だ。
「堅苦しい文言はよしてくれ、エルンスト。この間の奴隷商の件はご苦労だった。そこにかけてくれ」
エルンストは素直に来客用のソファーに座る。主従関係の間柄だが、同じ獣人アカデミーで学んだライバル同士。お互いの事情を知り過ぎている。
「いつもの感じでいいか」
「それでいい。ぼくもさっきまで頭の硬い文官と、財務官と会議をしていたから、疲れた。疲れたなんて言っている場合でもないんだけど」
大きく伸びをしたリジェスは、天井を見上げたまま、だらしのない格好で話し始めた。
「西の密猟者の話だけど」
「密猟者。いなかったのか」
「いなかったら、どれだけ良かったか。奴隷を餌にして、魔物を捕まえている。みたいなんだ。今日。森で遺体が見つかった。遺体の周りの草木が枯渇した」
「枯渇。ありえない」
「普通ならありえないのさ。調査に行った偵察隊が送って来た映像がこれさ」
最近開発された水晶の形をした記録用の魔導具である。映像は見るにおぞましい光景だった。痛いなんて可愛いものではない。骨。骨格の標本のように綺麗に並べられた骨。それを中心に、周りが砂漠化して半径5メートルが何も棲めない状態になっていたのだ。
「なんだこれは」
「分からない。砂漠。1日経過するごとに広がっている。まるで呪いのように。このままでは西の森が死んでしまう。弟と胡散臭い神官は、和平交渉をしている人間国から聖女を借りてくるべきだと主張している」
「怪しいね。リジェス」
「そうだろ。そのための予算を組まれそうになったから、誤魔化してお前と約束があると言って逃げたわけさ。言い方は悪いが、聖女なんて、神官以上に胡散臭い女の力を借りられるわけがない。神殿が、そんな案を出してきたのが、馬鹿げている。自分らは浄化もできない無能だと言っているわけだ。神殿に予算をはたいている我々王家も無能というわけだ。弟はそれすら分かっていない」
「うまくいっていないのか。和平交渉」
「詳しいことは言えないが、まだまだ平行線だ。こちらは物資や食料を、向こうは魔力がなくても使える魔導具や武器を求めている。人間には魔法が使えないからな。和平までは程遠い」
「弱みは見せられないか」
「そういうことだ。騎士団にも神殿の神官にも、弟と通じている者が居そうだから気をつけてくれ。映像はあげるから、上手く活用してくれ」
扉をノックする音が聞こえた。
「これから、父上と食事なんだ。また会おう。友よ」
「では、失礼致します。王太子殿下」
エルンストはリジェスに、騎士団長としての綺麗なお辞儀をして、呼びに来た侍従に軽く会釈して部屋を出た。
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