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第29話

 奴隷商人潰しの騎士団。シアンの言葉に確かな重みをハルは感じていた。誇りと自信。どれもハルには無いものだ。 「落ち着いたよな。嘘はつくなよ。でどうなんだ。落ち着いてなかったら膝枕に切り替える。どうする」 「いや、いいです。遠慮します。落ち着いています。大丈夫です。シアンさん」 「良かった。オレだって男を膝枕はごめんだ。あんたの気持ち教えて。騎士になる覚悟みたいなのあるわけ。これからやるのは騎士団の仕事。一般人の仕事じゃない」  騎士になる覚悟。重たい覚悟なんて。僕には出来ない。自分のことで精一杯な弱い僕には。 「ごめんなさい。ありません」 「ん。それで良い。意地悪を言ってごめん。ここで覚悟があるなんて言われたら、気絶させて置いて行くつもりだった。オレもさ、奴隷商人に売られた。あんたと同じ。親に。オレの場合は売られてすぐに奴隷商人をぼこぼこにして、暴れている所にエルンストさんがきて、騎士にならないかって」 「シアンさんはなるって言ったの」 「内緒。ここからの話は有料。この空間に何人いるか言ってみなよ。目を閉じて、神経を研ぎ澄まして」  何人。シアンさんの言葉に従い、ハルは目を閉じる。ハルが感じられたのは。 「えっと6人かな」 「惜しかったねぇ。見張りが外に2人。全部で8人」 「外まで分かるの。シアンさん。凄い」 「ふっ、まぁね。オレは騎士団の後方支援の弓担当。気配には敏感なんだよ。気配はオレが読むから、たぬきになって。手錠から手が抜けるだろ」  ハルはたぬき姿になる。手錠がするりと抜けた。たぬき姿なら牢屋も通れる。 「行ってきます。シアン……先輩……。」 「頼むよ。ハル」  初めて名前を呼ばれた。少しだけ信頼されたかな。頑張ろう。自分に出来ること。一緒に来てくれたシアンさんのためにも。

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