5 / 10
第5話 森で発情したら、エロいキノコにムードぶち壊された 〜フンポダケの炭火焼き〜
見渡す限り鬱蒼とした木々の中で、蓮は道なき道を歩かされていた。
気を抜けば、何かの蔦に足が絡まる。
気をつけて避けていても、何だか蔦の方から寄って来ているような気もする。
「おいバルド。まだかよ」
「ん?疲れたか。森の狩場はまだ先だ。半日はかかる。今日は野宿して明日狩場に着くからな」
(マジかよ……)
元来、蓮はアウトドア派では無い。
加えて育ちもそこそこ良いから、こんな危険そうな場所に従者も無しに来た事はない。
結果、森に入って1時間足らずで帰りたくなっていた。
近くの村で待っていればよかったと後悔するが、もうすでに一人で戻れるとも思えない。
「蓮が欲しがっていた果実も狩場の近くだ。ちょうど良いだろ」
(確かに材料は森の奥だって言ったけどな。調達に時間がかかるって意味で、自分で取りに行きたいとは言ってないからな)
蓮は前を歩くバルドに無言で視線を向け、また一歩前に進んだ。
「痛って……なんだこの葉、触れただけで切れたぞ」
蓮の腕には、ツーっと一本線ができ、そこからジワリと血が滲み出てきた。
「大丈夫か?この辺から先は、鋭利な葉を持つ植物が多いからな。上着を着ておけ」
「あ?持ってねぇよ」
「は?森に入るのに何で持ってこない」
「こんなクソ暑いのに、必要だなんて思わないだろ。俺は森に来るの初めてなんだ。最初に言っておけ」
蓮の格好はというと、半袖のTシャツに下は細身のチノパンという簡単すぎる格好だった。対してバルドは、厚手の上着にマントまで重ねている重装備で、蓮はずっと、見るだけで暑苦しいと辟易していた。
「まぁ、そうか……すまなかったな。夜も寒くなるし、仕方ない」
蓮の言い分に、バルドはそう言うと、自分の荷物を下ろし、マントの下に来ていた上着を脱ぐ。
「ほら、貸してやる。そんな格好じゃ全身血まみれになる」
「こわ……マジでこの先行くのかよ……」
蓮は上着を受け取りながら、真剣に帰る道を振り返った。しかし、やはり植物が動いているようで、もう来た道は無い。
諦めてバルドの上着を羽織るが、肩幅も袖の長さも合わずブカブカだ。
「カッコわる……」
「文句言うな。お前が持ってきた荷物は何が入ってるんだ」
「あ?水と食料。あと食後のワイン」
「ピクニックに来たのか?」
苦笑するバルドに、知識不足な自分を蓮は恥ずかしく思った。
とっぷりと日が暮れる。
一日中歩かされ、小さな湖のほとりに出たところで、ここで泊まるとバルドは焚き火を起こした。
蓮は座るのにちょうど良さそうな丸太を見つけると、腰を下ろす。
(マジで疲れた……)
「おい、飯にしよう」
バルドは持ってきた燻製肉やパンを出し、火で炙り始める。
蓮の持ってきていた食料は、昼飯で終わってしまったので、ここからはバルドに恵んでもらうしかない。
焚き火で灯りを出しつつ、火加減を調節して、肉とパンを同時に温めている。
火魔法の使い手、バルドの調理は意外と繊細だ。
「ほら、腹減っただろ。食え。明日も歩くからな」
パンに燻製肉を乗せただけの簡単なものだが、腹が減りすぎた蓮にはご馳走に見える。
「じゃ、遠慮なく」
サクッとしたパンに、じわっと肉汁が出てくる燻製肉。
「うま……疲れた体にこの味は沁みる……」
「そうか、野宿の飯でそこまで褒めてもらえると嬉しいな」
焚き火に照らされるバルドの顔が、何だかいつもより凛々しく見えるのは何でだろうか。
きっと、来たことの無い危険な場所で、頼れるのはバルドだけという吊り橋効果だろう。
(まぁ、それでもいいか。美味い飯に格好良いバルド。二人きりの時間はこれからだ)
蓮は出発前に期待した事を思い出して、火照った身体を捩る。ふと見上げれば、満天の星が空いっぱいに広がっていて、大きな満月が見事にかかっていた。
「すげぇ…………」
「ん?あぁ、綺麗だよな。街じゃこんなに見られないからな」
(何だこれ……すっげーロマンチックじゃん……)
蓮の口からは感嘆の息が漏れ、素直に感動する。
思わす片手で開いたままの口を覆ったら、借りた上着からバルドの匂いがした。
上着の長すぎる袖が、蓮の手を半分隠している。昼間は煩わしいと思ったが、今は何だか安心した。
(……やばい……興奮してきた……)
ゆっくりとバルドを見た蓮は、焚き火に照らされた凛々しい顔に吸い込まれるようにバルドの肩にもたれる。
「バルド……」
甘えたような声を出し擦り付けば、バルドはニカッと笑った。
「蓮も食べるか?」
バルドの手には、
卑猥な形のキノコ。
(は?)
さっき森の中で見つけたんだと、嬉しそうにバルドはキノコを枝に刺し、焚き火の周りに突き刺して行った。
卑猥なキャンプファイヤーになったそれは、フンポダケというらしい。
香りが良く、すごく美味いらしいがすぐに腐ってしまうようで街には出回っていない。
見つけて獲ったらすぐ食べるのが常識と言う。
「これなら、もっと美味い食べ方をするか」
「美味い食べ方?」
「ちょっと離れてろ」
バルドは立ち上がると木の枝を何本か葉にくるみ、それを高く放り投げた。
グルルと唸ってから、一気に火柱を上げた。
「うわっ……すご……きれい……」
夜空に立ち登る赤い火柱は、月にゆらめき、湖の水面にゆらめいて辺りを一気に明るくする。
魔法の本領を見た気がした蓮は、大きな火を操るバルドの大きな背中にひどく心を持っていかれた。
(ずるいだろこんなの。女なら一発で落ちる。俺も落ちる……いや、俺が落とす!)
蓮がある決意をした後、バルドは黒焦げになった木を持って戻ってきた。
「これでフンポダケが美味く食えるぞ」
「いや、名前さ……」
「フンポダケか?なんかあるのか?フンポダケに」
「連呼すんな。それ、その真っ黒いのどうするんだよ」
バルドは焚き火の横で、さっき焼いた木に火をつけ始めた。
「付くのか?もう焦げてんだろ」
「あぁ、これでじっくり焼けるんだ」
ジリジリと黒焦げの木が赤くなり始め、じんわりと暖かくなってきた。
その周りにフンポダケの串刺しを刺し、バルドは焼けるのを待った。
「まだか?」
「じっくり焼くのが大事なんだ。いい香りがしてきただろ」
バルドの言う通り、香ばしい良い香りが漂ってきた。森の中の気持ちのいい空気が凝縮されたような優しい香りだ。
「よし、先端に汁が溜まってきてるだろ。これが美味いんだ。汁をこぼさずに、先端に吸い付いて食べろ」
バルドは焼けたフンポダケを蓮に向けて、食べ方を説明する。
(汁を啜りながら……こぼさずに…………ん?これ、何させられてんだ……)
蓮は卑猥なキノコの先端に吸い付いて、それを咥えている自分を客観的に見た。
(やばくね……?)
しかし、口の中には芳醇な香りが広がっている。
少し抵抗はあるが、そのまま齧り付けば、旨みが広がった。
「うまっ……プリプリだな。歯応えもいいし、この香りは最高だ。キノコの香りだけじゃ無いな?」
「わかるか?この黒焦げの木がいい香りをつけてくれるんだ」
「へぇ……やっぱりバルドの料理は凄いな」
「ははっ、ありがとな」
格の違いを見せつけられたようで、蓮は多少プライドが傷付いた気もしたが、素直に目の前の男が凄いと認めた。
そして、バルドに目線を向ける。
バルドはフンポダケの先端に吸い付いている。大きな口で、卑猥な形のキノコを咥え、蓮に笑顔を向けてきた。
「お前はっ!!」
さっきの感動を返せと蓮は立ち上がって憤怒する。
「なんで怒る」
バルドは何が起こったか理解できずに、まだフンポダケの汁をすすっていた。
(あぁっ……もう、エロいんだよ!)
蓮はバルドに啜られているキノコに自分の下半身を重ねてしまい、内股を擦りながら、熱い視線を向けてしまう。
「ハックシュン!」
急に吹いてきた冷たい風に、蓮はくしゃみをして身を縮めた。
「あ、冷えてきたな。蓮、火のそばに来い」
バルドはそう言うと、焚き火を少し大きくして蓮に手招きをした。
蓮は仏頂面のまま、バルドと焚き火の前に立ち、不思議そうなバルドの足の間に座り込んだ。
「え…………」
「寒い。ここならあったかいだろ。バルドは体温が高いんだ」
「ははっ、そんな格好でくるからだ。でも、確かに効率的だな」
そう笑って、バルドは着ていたマントの中に蓮を包む。後ろから抱きしめられる格好になり、蓮の心拍は上がった。
(エロいことするよりエロい気分になるな……)
「蓮は細いな……。こんな体で歩き続けて、今日は疲れただろ」
「ん?だったら労ってくれ」
蓮はバルドを仰ぎ見て、首元に顔を寄せ、甘えた。
(バルドの匂い、安心する……マジで、一つになりたい……こいつに抱かれたい……)
「は?いや、違う」
「何が。どうした」
蓮は自分の心の声を言葉で否定して、バルドの頬を両手で挟みまっすぐ見た。
「舐めろ。疲れた。癒してくれ」
「ははっ、だからマッサージ師じゃ無いっての」
呆れた声を出しつつも、バルドは向き合って座る蓮の首筋を舐め上げた。
「あんっ……」
服を捲り上げて乳首を舐めてやれば、ビクビクっと蓮の体は跳ね、背が反れる。
「あぁっ……もっと……んっ……バルド……噛んで……」
「ん?あぁ」
バルドは乳首に歯を当てて甘噛みをする。蓮の乳首の歯応えはバルドのお気に入りになりつつあった。
「蓮……歯応え、舌触り最高だな。ホクロも甘い……疲れは取れてるか?」
「んあぁっ……まだ、足りない……もっと下……俺の、フンポダケも……」
「下?」
蓮はバルドの手を自分の下半身へ持っていき、膨らんだそれを握らせた。
「脱がせて、直に触って……」
興奮した息で、蓮は懇願した。
バルドの手に擦り付けるように腰をくねらせて、更に固くさせている。
バルドは人間の性器など、どう扱っていいか分からない。
経験がない。
この前腹を噛んだ時も細心の注意を払って噛んだのだ。そっと蓮から手を離し、首を振った。
「い、いや、いやいや。出来ない。フンポダケのように引きちぎりそうだ」
「は?ちぎるなよ……。なぁ、バルド……もう辛いんだ……頼む……」
蓮はバルドの手に指を絡めながら胸に擦り寄って腰を擦り付ける。
「む、む、無理だ。無理。蓮は細いんだ。しかもこんなところでそんなことしたら……」
「あ?俺は細くない!ちゃんと立派なのが付いてる!」
蓮はザッとズボンと下着を脱いで、立派に勃ち上がったものを見せつけた。
「おい、蓮。何してんだ」
「あ?お前が焦らすからだろ。もう自分でする!そこで見てろ!」
そうしてバルドの目の前に座り込むと、自分で慰め始めた。
「んんっ……あぁっ……」
久しぶりの快感に、蓮の手は止まらない。バルドが見ていることを意識して、更に興奮していた。
「いや、おい。こんなところで下半身を出すな」
蓮の行動に慌てたのはバルドだ。尻尾を振り、耳をピクピクと動かしながら周囲を伺って何かに警戒を始めた。
「は?もうどこだって良いだろ……」
バルドは蓮のズボンを上げようとするが、そこに、ヒラヒラと鱗粉を撒きながら虫が飛んできた。
「ん?」
1匹2匹……
ヒラヒラと舞っている……そして……
突如、大量に目の前に現れる虫。
「わっ、何だこれ!」
「モンフォルだ。フェロモンに寄ってくる。生気を吸い尽くされるぞ。ズボンを履け!」
バルドは虫を払いながら、蓮のズボンをあげる。
「はぁ?こんなんがいるならなんで舐めた」
「舐めろって言ったのは蓮だ。そんなに興奮するとは思わないだろ」
ブンブンとモンフォルの羽音が、二人の言い合う声を掻き消す勢いで増えていく。
「おまっ……あんな舐め方……普通に興奮する。この無自覚童貞!」
「童貞関係ないだろ!あぁもう、離れろ。火魔法で追っ払う」
そう言って、バルドは火球を作り、虫達を一掃した。
散々な夜だったが、翌朝、無事に目的の狩場に着き、蓮の欲しかった果実と、濃い味の肉を持った魔物、ブラックカウを狩ることができた。
帰りの道中はなんとなく変な空気になっていたが、バルドの優しさと料理の味だけは変わらなかった。
ともだちにシェアしよう!

