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『甘やかして育てた後輩に、逆に甘やかされています』 朔也 × 楓 #3
##3
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夜。
「楓」
低い声で名前を呼ばれる。
それだけで、楓の胸が熱くなる。
以前なら、朔也は自分を「楓先輩」と呼んでいた。
甘えてくる後輩の声だった。
けれど今は違う。
同じ名前なのに、呼び方ひとつで、支える側に立つ男の声になる。
「っ……♡」
朔也のキスが落ちる。
深い。
でも今日は、楓が先に朔也の肩を押した。
「……今日は俺が上♡」
朔也が瞬く。
「え?」
楓が少し笑う。
「たまには俺が余裕でいたい♡」
「楓」
「何」
「それ、甘え方ですか?」
「違う♡」
即答したのに、朔也は少しだけ嬉しそうに笑った。
その顔が腹立たしい。
「お前、最近すぐ俺を甘やかす側に回るだろ♡」
「楓が譲ってくれたので」
「世話を譲っただけで、主導権まで渡した覚えはない♡」
そう言って、楓は朔也へ跨がった。
****
「楓、それ反則です」
朔也の声が掠れる
楓はわざとゆっくり腰を落とした。
すると、朔也の呼吸が一気に乱れる。
「っ♡♡ か、えで……♡」
「……っ、その顔ずる♡」
楓の胸が熱くなる。
いつもは冷静に見てくる年下の恋人。
家事も覚えて、体調も見抜いて、すっかり支える側の顔をする男。
でも今は、自分へ縋るみたいに眉を寄せている
それが、妙に嬉しい。
「ぁ♡♡ 楓、待っ……♡」
「待たない♡」
楓が少し笑う。
昔は、無茶する後輩を止めるのが自分の役目だった。
今は、支えられることにも少しずつ慣れてきた。
けれど、全部を譲るつもりはない。
「今日は甘やかされねぇから♡」
わざと深く動く。
「ぁ♡♡!」
朔也が本気で声を漏らした。
その瞬間、楓の胸が跳ねる。
勝てるかも。
そう思った。
「朔也、顔真っ赤♡」
「っ♡ 楓、わざと……♡」
「ちょっとだけ♡」
楓が笑う。
でも、完全には攻め切れない。
朔也が苦しそうな顔をすると、胸がきゅっとなる。
「っ♡♡ かえ、で……♡」
「ん♡」
「その動き、やば……♡」
「……そんな顔するな♡」
思わず、朔也の頬へ触れる。
その瞬間。
ぐい、と腰を掴まれた。
「っ♡?」
空気が変わる。
「……楓」
低い声。
ぞく、と背筋が震える。
「調子乗りました?」
「っ♡ し、らな……♡」
言い切る前に、深くキスされる。
「んっ♡♡!」
逃げ道を塞ぐみたいな口づけ
強引なのに、熱い。
「っ♡ む、り♡」
「楓、口数減ってきた」
朔也が笑う。
その顔が、妙に男っぽくて悔しい。
「ぁ♡♡ ば、か……♡」
「甘やかされる練習、続きですね」
「今それ言うな♡」
「言います」
またキス。
強がろうとすると、全部口づけで潰される。
「っ♡♡ ん、ぁ……♡」
「楓が頼る練習をするなら」
朔也の声が耳元へ落ちる。
「俺も、受け止める練習をします」
「っ♡ 重……♡」
「楓に育てられたので」
「便利に使うな♡」
睨もうとした瞬間、また奥を突かれた。
「ぁ♡♡♡!」
視界が揺れる。
「楓、ここ弱い」
「っ♡ い、うな♡」
「顔真っ赤」
朔也が笑う。
年下のくせに、完全に余裕を取り戻していた。
悔しい。
でも、そのまま深く突き上げられるたび、楓の身体が勝手に震える。
「ぁ♡♡ さく、や……♡」
「はい、楓」
「っ♡♡ や、ば……♡」
「もっとこっち見て」
低い声。
そのまま、指を絡め取られる。
恋人繋ぎ。
「っ♡」
「俺に頼るの、まだ怖いですか」
その問いが、胸の奥に落ちた。
「っ……♡」
怖い。
少しだけ。
自分はずっと、世話を焼く側だった。
誰かを支える方が楽だった。
甘やかされるのは、まだ照れくさい。
でも、朔也の手はもう、後輩の手じゃない。
楓を支えると決めた男の手だった。
「怖く、ねぇよ……♡」
声が震えた。
朔也の目が、少しだけ揺れる。
「楓」
「っ♡ でも、悔しい♡」
「はい」
「お前に余裕崩されるの、めちゃくちゃ悔しい♡」
朔也が、嬉しそうに笑った。
「俺は嬉しいです」
「そこで喜ぶな♡」
「楓が俺に甘えてくれたので」
そのまま深く抱き込まれる。
「ぁ♡♡♡!」
奥が熱く弾ける。
「楓」
低い声。
「強がってる顔も好きです」
また奥を突かれる。
「ぁ♡♡!」
「でも」
朔也が額を押し付ける。
「俺に崩れてくれる顔は、もっと好きです」
その瞬間、楓の理性が揺らいだ。
「っ♡♡ ぅ、ぁ……♡」
「もう限界?」
「ち、が♡」
「嘘」
キス。
深い。
息が奪われる。
「っ♡♡ むり、♡」
「楓なのに?」
その言い方がずるかった。
もう“先輩なのに”ではない。
年上としての意地をからかうのではなく、楓という一人を真っ直ぐ見ている声だった。
胸が熱くなる。
悔しい。
悔しいのに。
「ぁ♡♡♡ また、負け……♡!」
そのまま奥を強く突かれ、楓の視界が真っ白になる。
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「楓」
朔也が額を押し付ける。
熱い。
「可愛すぎて無理」
「っ♡♡ ばか……♡」
「煽るからですよ」
朔也が笑う。
でも、その目は甘かった。
昔は、自分が守る側だった。
レポートを見て、飯を食わせて、寝不足を叱って。
朔也は、甘えてくる後輩だった。
けれど今は違う。
楓が無理をする前に気づく。
楓が疲れた顔を隠す前に、手を伸ばしてくる。
そして、こうして腕の中で崩れることすら、当然みたいに受け止めてくれる
それが悔しいのに、幸せだった。
****
しばらくして。
楓は、朔也の胸に顔を埋めたまま息を整えていた。
「……水」
「はい」
朔也がすぐに手を伸ばす
用意してあったグラスを渡され、楓は半分だけ飲んだ。
「準備よすぎ」
「楓が喉乾くと思ったので」
「ほんと、世話焼きになったな」
「楓に教わりました」
「俺、そこまで教えてない」
「見て覚えました」
朔也が、楓の髪を撫でる
その手つきが優しい。
「……ずるい後輩」
「今は後輩ですか?」
楓は少し黙る。
それから、朔也の胸へ額を押し付けた。
「……たまには」
朔也の腕が、静かに楓を抱き締め直す。
「はい」
「でも、基本は恋人だからな」
「分かってます」
「夫夫になる相手でもある」
「もちろん」
即答されて、楓の顔が熱くなる。
「そこは少し照れろ」
「照れてます」
「顔が平然としてる」
「中は大変です」
楓は思わず笑った
前にも似たようなことを言われた気がする。
こういうところは、まだ少しだけ年下らしい。
けれど、その年下らしさすら愛しかった。
「朔也」
「はい」
「俺、まだ甘えるの下手かも」
「知ってます」
「即答するな」
「でも、練習できます」
朔也が楓の指を絡め取る。
「俺がいますから」
楓の胸がじわっと熱くなる。
「……そういうの、ほんとずるい」
「楓が甘えるまで、待ちます」
「待つの得意になったな」
「楓相手なら」
楓は目を閉じた。
昔、自分に告白してきた朔也は、逃げてほしくないと言った。
けれど今の朔也は、待つことを覚えている。
甘やかすことも、支えることも、楓が自分から寄りかかるまで待つことも。
ちゃんと覚えてくれた。
「……じゃあ」
楓は小さく言った。
「もう少しだけ、甘やかせ」
朔也の腕に力がこもる
嬉しそうな気配が伝わってきた。
「はい」
「喜びすぎ」
「嬉しいので」
「分かりやすいな、お前」
「楓限定です」
「またそれ」
楓は文句を言いながら、朔也の胸へ頬を寄せた。
悔しい。
でも、落ち着く。
「朔也」
「はい」
「明日、朝飯作って」
「もちろん」
「俺も手伝う」
「座っててください」
「嫌だ。一緒に作る」
朔也が少し黙った。
それから、柔らかく笑う。
「じゃあ、一緒に」
その言葉に、楓は満足して目を閉じた。
甘やかされるだけではない。
世話を焼くだけでもない。
一緒に作る。
一緒に暮らす。
一緒に崩れて、一緒に整える。
それが、今の二人に一番似合っていた。
「楓」
「ん?」
「おやすみなさい」
「……おやすみ、朔也」
額にキスが落ちる。
後輩だった男の腕の中で、楓は静かに息を吐いた。
悔しいくらい、安心していた。
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