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#01 アーメンガード♡ロッテイ 濡れ場あり ——ずぢゅ♡*

「Je t’aime.」 「Très bien! さすがだ。完璧な発音だね、セーラくん」 ムッシュ・デュファルジュが満足げに手を叩いた。教室の視線が、一番前の席に座るセーラに集まる。 一番後ろの席からアーメンガードは、その背中をぼーっと眺めていた。 (あぁ。。。アイツのことが気になってしょうがない……) ノートの端に意味のない線を書き殴りながら、小さくため息をつく。 (どうしちゃったんだろう、……) 優等生で通っている彼が抱える、誰にも言えない——秘密。それは、セーラへの狂おしいほどの片思いだった。そして、彼にはもう一つの秘密があった。 ——夜の相部屋。 ラビニアが寝息を立てているのを確認してから、アーメンガードはベッドの毛布を引き被り、ロッティの首筋に顔を埋めた。 「ん……あ……アーメンガードくん……」 ロッティが甘い声を出して、背中にしがみついてくる。 アーメンガードは冷めた頭で、細いロッティの体を抱き寄せる。 ——ずぢゅ♡* 「あ”……っ」 ・ (セーラ……) ・ ・ ・ (セーラ…… セーラ……) ・ ・ ・ ——ぬちょっ… ・ あっ……//// ・ 「すきだよアーメンガードくん…… やめないで//」 (あ゛あ゛セーラ……) 「……あ……アーメンガードくん……」 「コエ   」 ・ ・ ・ ——ぬちょっ… 「あ゛あ゛  」 「コエタ”スナ   キコエちゃぅダロ 」 ・ ・ ・ ——ぬちょっ…  ——ぬちょっ… ・ ・ ・ あ”っ……//// —ぬちょっ…ぬちょっ… ぬつちよ (あぁ セーラ…… セーラ…… セーラ……) ✨ つ「う…/////」 「/ぅ/////」 ・ ・ ・ ——ぬちょっ…  「あ”ぁ…//」    ——ぬちゅうううう……      *       「ふぅ…/」 ◇ その数日後。放課後のサロンでは、ミンチン院長が主催するセーラの誕生日パーティが開かれていた。 「ビンゴ! やったね!セーラくん、特賞だよ」 盛り上がる空気の中、手渡された景品を見て、セーラは少し困ったように苦笑いした。 「フランス人形って…… ORZ」 「ちょっとまってそれ! ……可愛いんだけど!」 セーラが持て余しているのを見て、ロッティが目を輝かせる。 「えっ、なに? こういうのお前好きなの? ならやるよ。これ」 「イイの?ホントにホントにイイの? あとになって返してとかって言ってもダメだからね」 ビンゴ大会がひと段落すると、次は定番の王様ゲームが始まった。 「よーし、王様だーれだ!」 「はーい! じゃあ、3番と7番、キスしろ!」 男子校ならではの悪ノリで、誰かが叫んだ。その直後、アーメンガードの心臓が嫌な音を立てて跳ねた。 (……嘘だろ) 周囲の囃し立てる声が、急に遠のいていく。視線の先で、セーラが笑いながら割り箸を掲げたかと思うと、その前に進み出たロッティの顎に、ためらいもなく手を添えるのが見えた。 セーラは悪戯っぽく笑うと、ロッティの顎をクイッと持ち上げ、王子様めいた甘い声で囁いた。 「ほら、逃げるなよ。……食っちまうぞ?」 わざとらしく色気たっぷりに迫るセーラのお芝居に、ロッティも顔を真っ赤にしてノリに乗る。 「んっ……や、やだぁ……っ////」 寸劇めいた二人のやり取りに、周囲の男子たちから「フゥーッ!」「セーラ様、最高!」「ロッティ、そこ俺と代われ!」と、男子校らしからぬ黄色い歓声が爆発した。 ——重なる唇。 頬を真っ赤に染めて、だらしなく嬉しそうに身を委ねているロッティの姿が、スローモーションのように視界に焼き付く。 (チッ… 何やってんだアイツら) 気がつくと、アーメンガードは囃し立てる人混みを足早にかき分けていた。 「そこまでにしろ。見苦しいぞ」 二人の間に無言で割って入ると、ロッティの腕を強く掴むと。 「痛ッ……な、なに? アーメンガード?」 「いくらゲームでも限度があるだろ。こんな破廉恥な真似は認められない」 そう吐き捨てると、アーメンガードはロッティの手首をギリッと強く掴み、有無を言わさぬ力でサロンから引きずり出した。 「えっ、ちょっと待ってよ! 痛いってばぁ!」 文句を言うロッティの声が、廊下の奥へと消えていく。残されサロンには、すっかり白けきった空気が漂っていた。 「……なんだよ、アイツ」 「ただのゲームじゃん。風紀委員かよ」 「なにマジになっての」 すっかりドン引きしてぼやく生徒たちの中で、セーラだけは少し不思議そうに、バタンと閉ざされたドアを見つめていた。 ◇ それから季節が変わり、吐く息が白くなる頃。学園にバレンティーヌスの祭日がやってきた。その日、アーメンガードは朝からどうにも落ち着きがなかった。授業中も、カバンの中に入れたセーラへの思いを綴ったカードのことが気になってしょうがない。 (いよいよ、今日だ……) 終業のベルが鳴った瞬間、アーメンガードは誰よりも早く教室を飛び出し、セーラを呼び出した体育館の裏へ急ぐ。 ——だが、廊下の曲がり角で待ち伏せしていたロッティに、がしっと腕を掴まれた。 「どこいくつもり……?」 泣きそうな顔で、ロッティが必死にアーメンガードを引き留める。 「ねえ、今日は僕と一緒にいてくれるって言ったじゃない!」 「放せよ。……しつこいな」 「やだ! 僕のどこがいけないの? 悪いところがあるなら直すから……」 「直す? ふん、無理だな。お前、抱いててもでちっとも面白くないんだよ。これ以上の時間を奪うな」 「ひぐっ、そんなぁ……!」 ロッティがその場に泣き崩れた時、背後の柱の影から、ひょいとラビニアが顔を出す。 「へぇー…… 修羅場ってやつかな(笑)」 「ラ、ラビニア……! いつからそこに」 慌てるアーメンガードを、ラビニアは嘲りを含んだ目で見下ろす。 「いつからって、最初からだけど? ほんと呆れる。夜な夜な部屋でいちゃいちゃ、ちゅぱちゅぱ聞かされてるこっちの身にもなってよ。丸聞こえなんだよ、お前ら」 「っ……!!」 夜の密事が同室のラビニアにバレていた——その事実にアーメンガードの顔が、瞬時に蒼白になる。 「セーラくんに気を持たせながら、裏ではこんなと遊んでるなんて。とんだ風紀委員だわ、笑わせる」 プライドが音を立てて崩れ落ちる。居たたまれなくなったアーメンガードは、ロッティを置き去りにして、逃げるようにその場を駆け出した。 ロッティは縋るようにアーメンガードを追いかける。辿り着いた先は、冷たい風が吹き抜ける体育館の裏——そこには既にセーラの姿があった。 (……やっぱりセーラくんと会ってる) 慌てて物陰に身を隠し、二人の様子を窺う。 風が鳴っている。二人の唇が動くたび、断片的な言葉が冬の空気に混じっては消えていく。 ……これ。受け取ってくれないかな えっ、僕に? ありがとう そんなやり取りがあったのか、それとも自分の耳が幻聴を拾っただけなのか。遠く離れた場所で震えるロッティには、もはや確かめる術もなかった。 聖バレンティーヌスの祭日——それは、胸の奥に灯した熱い想いを、愛おしい人に伝えることが許される特別な日。薄暗い夕闇の中、冬の刺すような光が二人を照らしている。ロッティの目に映るその光景は、あまりに美しく、残酷なほどに完成された一枚の絵画だった。 セーラは、この学園に舞い降りた眩いばかりのスーパースター。その隣で、頬を赤く染め、必死に言葉を紡いでいるアーメンガード。 (あの場所に立っているのが、僕だったら……) 本当なら、あの震える手の先にいるのは、自分のはずだった。けれど、アーメンガードの瞳に映っているのは、もはや影のような自分ではない。太陽のようにすべてを奪い去る、完璧なセーラの輝きだけだ。 自分はもう、必要とされていない。 捨てられたペットのように冷たい石畳の上に立ち尽くし、ロッティの目から一粒の熱い涙がこぼれ落ちる。 ——と、その時…… 涙で滲む視界の端で、アーメンガードの手から淡い色の何かが、ひらりと、枯れ葉のようにこぼれ落ちたような気がした。 (……あれはなに?) その正体を見極めるより早く、セーラが軽やかな足取りでこちらに向かって歩き出す。 見つかる。 そう察したロッティは溢れる涙を拭う間もなく、その場を逃げ出した。 静寂が戻った校舎の影で、置き去りにされた薄い紙だけが、冬の風に弄ばれるようにカサリと力なく震えていた。 誰もいなくなった体育館裏に、コツ、コツと重厚な足音が響く。冷え切った廊下の隅、床に落ちた淡い色のカードに気づき、拾い上げたのは院長のミンチンだった。 ——院長の口元が、意地悪く歪む。 「ふふ……これは、イイものを拾ったな」 手袋を嵌めた指先が、その秘められた告白をなぞる。 優等生が落とした破滅の種。そこには「親友」という綺麗な言葉では到底片付けられない、ドロドロとした執着と独占欲が綴られていた。 これから学園に巻き起こる嵐の予感を、彼は誰よりも楽しそうに味わっていた。 つづく — すべてが狂い始めたのは半年前。あの「ダイヤモンド◇プリンス」ことセーラが転校してきた日からだ。大好きなアーメンガードを取られたくなくて、(ロッティ)は放課後にセーラを呼び出した。 「アーメンガードを取らないでっ……!」 泣き叫んだその瞬間、セーラの瞳が獣のように豹変して……。 次回、A-Little-Prince 第2話。 お願い、意地悪しないで……っ!

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