22 / 24
#21 セーラの立ちション
使用人の身分から生徒に戻った、最初の授業。今日がその復帰の初日だったが、一時間目から泥まみれの机を押し付けられるという最悪のスタートだった。
息をつく暇もなく、チャイムが鳴る。
二時間目。うだるような熱気がグラウンドを支配していた。
「今日は異常な暑さだ。熱中症にならないよう、各自しっかり水分を取るように!」
体育教師の指示で、生徒たちが一斉に水飲み場へと群がる。セーラも乾いた喉を潤そうと蛇口に手を伸ばしたが、背後から伸びてきた腕にガシッと肩を掴まれた。
「ダメだぞ、セーラ君。先生が『しっかり水分を取れ』って言ってたろ?」
「アーメンガード……っ」
背後に立っていたアーメンガードが、蛇口のひねりを全開にする。激しい水柱がセーラの顔を打ち据えた。
「ほら、飲めよ。もっとだ。倒れられちゃ困るからな」
「んっ……ぶはっ、もう、いい……っ」
「ダメだ。全然足りない。ほら、もっと飲め!」
アーメンガードの強い力で首根っこを押さえつけられ、セーラは無理やり大量の水を飲まされる。むせ返り、口の端から水を溢れさせながらも、胃がタプタプになるまで冷たい水を流し込まれた。
「よし、偉いぞ。それじゃあセーラ君、次の体育の準備だ。用具室からマットを出してきてくれないか?」
「……っ」
膨れた腹を抱え、水浸しの顔でセーラは体育館の奥にある用具室へと向かった。
薄暗い用具室に入り、重いマットに手をかけた瞬間だった。
——ガシャンッ!!
背後で重い鉄扉が閉まる音がした。慌てて振り返り、ノブを回すがビクともしない。外からかんぬきを落とされたのだ。
「開けて……! 開けてよ!」
外からはジェシーたちの下劣な笑い声が遠ざかっていくのが聞こえた。セーラは窓一つない、埃っぽい暗闇の中に完全に閉じ込められてしまった。
◇
五時間目。
「そういえば、セーラ君を見ないが、誰か知らないか?」
教卓から教室を見渡し、アメリアが尋ねた。
「さあ? サボりじゃないですかね」
ジェシーがニヤニヤしながら答える。
「午前中、泥だらけになってましたからね。恥ずかしくてどこかに隠れてるんじゃないですか?」
アーメンガードが優等生の顔でそう同調すると、教室にクスクスと嘲笑が広がった。アメリアは「まったく、あいつは……」とため息をつき、気にも留めずに授業を再開した。
その頃、用具室のセーラは地獄のような苦しみの中にいた。
無理やり飲まされた大量の水が、完全に膀胱の限界を圧迫していた。冷え切ったコンクリートの床。誰も助けに来ない絶望。下腹部が破裂しそうなほどの強烈な尿意がセーラを襲い、内股になって必死に堪えていた。
かつてダイヤモンド◇プリンスと呼ばれた最後のプライドが、彼に限界を超えた我慢を強いていた。しかし、震える足はもう立っていることすら困難だった。
◇
「くくっ……おい、見ろよ」
用具室の扉の通気口の隙間から中の様子を覗き見て、ジェシーが声を殺して笑った。
「あいつ、そろそろ限界じゃねえか? 」
「身悶えしてるやがる…」
アーメンガードの取り巻きたちが意地悪な笑みを交わす。
「そろそろいい頃合いだな、先生を連れてこい」ジェシーが呟いた。
◇
「先生、セーラ君がこの辺にいたって話です」
「本当か? まったく、こんな所でサボって……」
外からアメリアと、案内してきた生徒会役員の足音が近づいてくる。
ジェシーが絶妙なタイミングを見計らい、かんぬきを引き抜いて大声を上げた。
「あ、先生! ここにいました!」
ガチャン! と勢いよく扉が開け放たれた。廊下の眩しい光が、薄暗い用具室を照らし出す。
——その刹那。
静かな室内に、ジョロジョロと情けない水音が響き渡る。
「お前……っ!」
アメリアが目を剥き、激しい嫌悪感を露わにして怒鳴りつけた。
「こんな所で何をしているんだ! 用具室で立ちションなんて、気が狂ったのか!!」
「ちが……これは……っ」
言葉にならない嗚咽を漏らすセーラの背後から、アーメンガードが静かに姿を現した。
「セーラ君……いくらトイレの場所がわからなくなったからって、学校の備品室を便所にするなんて……あんまりです」
わざとらしく眉をひそめてみせるアーメンガード。しかし、その瞳は極上の快楽に打ち震えていた。
「公共の場で排泄を行う異常者」という烙印を完璧に押し付けられ、セーラはただ水溜まりの中で、音もなく崩れ落ちるしかなかった。
つづく
21話グラレコ https://fujossy.jp/fanarts/8139
—
どうして余計なことをするのかな、ロッティ。せっかく俺 が、あいつにふさわしい最高の地獄を用意してやったのに、タオルなんか掛けてさ。
……随分と優しいんだな。
そんなにセーラを助けたいなら、お前もあいつと同じように俺の標的(ターゲット)になりたいってことだよね?
次回、A-Little-Prince 第22話。
俺の邪魔をする奴は、誰であろうと絶対に許さないよ。
ともだちにシェアしよう!

