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#23 セーラ♡ロッティ 番の刻印? 濡れ場あり
「更衣室に行こう」
そう言ってセーラの肩にタオルを掛けたロッティだったが、彼がセーラの手を引いて向かった先は更衣室ではなかった。
授業中のため、完全に無人となった学生寮。ロッティはセーラを、自分とアーメンガード、ラビニアが使っている三人部屋へと連れていく。
「ロッティ……ここ、… 」
「いいから。そんな紫色の唇でウロウロしてたら、凍え死んじゃうよ」
ガタガタと激しく震え、水着から滴る水で床を濡らしてしまうセーラを、ロッティは強引に自分のベッドへと押し込んだ。濡れた水着を素早く脱がせ、分厚い毛布でその冷え切った身体をすっぽりと包み込む。
「ほら、僕が温めてあげるから」
ロッティも制服を脱ぐと、躊躇うことなく毛布の中に潜り込んできた。
冷え切ったセーラの肌に、ロッティの温かい体温が密着する。外の残酷な世界から完全に隔離された、静かで狭いベッドの中。二人の吐息だけが、シーツの中で微かに交わっていた。
「……セーラ、氷みたいに冷たいね」
ロッティの手が、セーラの背中を優しく擦る。
「……ありがとう、ロッティ。でも、アーメンガードに見つかったら、……」
「今はあいつのことはいいよ」
ロッティは少しだけ意地悪く微笑むと、セーラの首筋にそっと顔を近づけた。
「……思えてる? 僕たちの始まりって、あの王様ゲームでの罰ゲームのキスだったよね」 ※1話参照
「……」
不意に持ち出された昔話に、セーラはビクッと肩を震わせた。
「それに体育館の裏での事‥」※2話参照
ロッティの指先が、セーラの濡れた髪を梳きながら、甘い記憶をなぞるように滑っていく。
「……バスルームでの事も、覚えてる?」 ※6話参照
「ロッティ、それは……」
「僕が君の体を洗ってあげた時。僕がちょっといやらしく触ったら、君……すごく熱くなって、僕の首筋、強く噛んだよね」
ロッティの指が、かつてセーラが歯を立てた自分の首筋をツゥッと撫でる。
「ねえ、セーラ。あの時……?」
ロッティの顔が近づき、真剣な、それでいてどこか期待を込めたような瞳がセーラを見つめた。
「もしかして……僕のこと、好きだった?」
その問いかけに、セーラは痛みを堪えるようにギュッと目を閉じた。好きだと言えば、この優しい空間に甘えることができるかもしれない。けれど、セーラは自分を誤魔化すことができなかった。
「……」
セーラは首を横に振る。
「違うんだ……。君のことは大切な友達だと思ってる。でも、あの時は……ただ、体が勝手に反応してしまっただけで…… もしかすると薬を飲まされてたのかも。それともあのチョーカーのせい…」
「そうなの?」
「心と体が……別なんだ。心が拒否していても、体が快楽に反応してしまう……最低な体になってしまったんだ……」
自嘲するように告白するセーラを、ロッティは黙って見つめていた。
軽蔑されるかもしれない。そう思って身を強張らせたセーラだったが、毛布の中でロッティの腕が、より一層強くセーラを抱きしめた。
「そっか……」
ロッティの声は、思いのほか優しかった。
「でも、少しわかる気がするよ」
「ロッティ……?」
「体が勝手にそうなるんだったら、しょうがないよね。……うん、僕もそういう時あるから」
そう言うとロッティはセーラに強く密着してきた。
「好きでなくても反応しちゃうんだろ? 今みたいに…」
ロッティが押し付けてくる——もの が硬く感じる。♂
「しよ?」
——ロッティの誘い。
セーラは小さく頷いてしまった。
ビクン、と。心が命じたわけでもないのに、勝手に反応 してしまう。♂
「隠さなくってもいいんだよ、セーラ」
ロッティの甘い囁きと、シーツの中に充満するむせ返るようなオメガの匂い。
その瞬間——セーラの脳内に、けたたましいノイズが走った。
(……あ……っ)
——フラッシュバック。
体育館の裏。泣き叫ぶロッティを押し倒したあの日の記憶。そして、ロッティの首筋に深く牙を突き立てたバスルームでのこと。
毛布の中で無防備に身体を開き、自分を誘うロッティの熱い体温とフェロモンが、セーラの奥底で死に絶えていたはずの「何か」を激しく叩き起こした。
「セーラ……?」
ガタガタと震えていたはずのセーラの腕に、突如として恐ろしいほどの力が宿る。セーラは無意識のうちにロッティの身体をひっくり返し、シーツに乱暴に押さえつける。
「!……セーラ…」
見下ろすセーラの瞳孔は獣のように開き、かつての『ダイヤモンド◇プリンス』としての——いや、すべてを支配する絶対的な『アルファ』としての狂暴な光を宿していた。
それは絶望によってオメガへと性反転(ジェンダー・リバース)したはずの肉体が、極限のストレスと密室でのフェロモンの過剰摂取により、再び、「アルファ」へと回帰したかのようだった。
頭の片隅で残った理性が悲鳴を上げるより早く。セーラはロッティの細い首筋——かつて自分が噛み付いたのと同じ場所に顔を埋め、ためらいなく、深く深く牙を突き立てた。
「痛……っ!
・
・
・
・
・
…いいよ‥ 好きにして‥」
ロッティの悲鳴が毛布の中に響く。血の味がセーラの舌に広がり、それがさらなる起爆剤となった。
——ずちゅ♡*
一気に最奥まで貫かれ、ロッティの身体が弓なりに跳ねる。
⚡️ ⚡️ ⚡️ ⚡️ ⚡️ ⚡️ ⚡️
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ」
♡
激しい熱狂が過ぎ去るとやがて静粛が戻り、そして——賢者の刻(タイム)が、訪れた。
憑き物が落ちたように穏やかで、それでいてどこか空虚な瞳で薄闇を見つめていたセーラが、ぽつりと静寂を破った。
「……エミリーのことだが」
セーラは、ぽつりと呟いた。
「あの夜、引き裂かれた片腕だが……。その後進捗は無い……。あれからと言うもの、オレは、数多の波に呑まれてしまい……結局、オレは……は何一つ、元通りにすることはできない…」
セーラは悲しげに目を伏せた。
重く沈殿していた賢者の刻(タイム)の余韻が少しずつ薄れ、シーツの中の空気が日常の温度を取り戻していく。ロッティは慰めるようにセーラの背中を撫でると、意識的に声のトーンを和らげ、先ほどの「心と体の不一致、そして薬」についての話題へと慎重に水を向けた。
「……さっきの話の”薬”なんだけど…今、呑んだってわけじゃないんだよね?」
セーラは小さく頷いた。
「え? 飲んでないよ。あんなもの自ら呑んだりしないよ。あれは、無理やり飲まされて……。そうなると、もう自分の意志じゃどうにもならなくて。頭では嫌だと思っていても、奥の方が勝手に疼きだして……自分じゃないみたいになっちゃうんだよ」
セーラの告白を聞きながら、ロッティの瞳に、同情とはまた別の、奇妙な光が宿った。
「へえ……薬を飲むと、そんな風になっちゃうんだ。そのときって……?」
ロッティは好奇心に抗えない無邪気さで、その禁断の「力」について問いかけた。
「……うん。自分を失うのが、一番怖いんだ。あんなもの、二度と見たくもない……」
怯えるように身を縮めるセーラ。しかし、その震えを抱きしめるロッティの心には、薬という未知への、危うい興味が芽生え始めていた。
——と、その時だった。
廊下から、コツ、コツと足音が近づいてくる。そして、部屋の前で止まった。
——ガチャッ。
「えっ……嘘、誰か帰ってきた!?」
ロッティの顔からサッと血の気が引く。放課後はまだ始まったばかりで、誰も戻ってくる時間ではないはずだ。
「セーラ、早く隠れて! ベッドの下に!」
ロッティは大慌てで制服に袖を通すと、セーラをベッドの下の暗がりへと押し込んだ。
間一髪のところで、ドアが開いて姿を現したのは、気怠げな表情を浮かべたラビニアだった。
「……ふぅ。……おや、ロッティ。随分と早いんだな」
「ラ、ラビニア……! ええと、うん! ちょっと気分が悪くて、休んでたんだ……。ラビニアこそ、どうしたの?」
ベッドの下で息を潜めるセーラは、心臓が破裂しそうなほど早鐘を打っているのを感じていた。
「生徒会長の座をアーメンガードに奪われてからさ、放課後にやることがなくなっちゃってね。すっかり帰宅部さ」
ラビニアは自嘲気味に鼻で笑い、ふと床に放置されている濡れた布切れに気づいて眉をひそめた。
「……ん? なんだこれ、水着? お前、今日プールなんてあったか?」
「えっ!? あっ、い、いや、プールは昨日だよ! 洗い忘れててっ…つ…」
ロッティは血相を変えて水着を拾い上げると、誤魔化すように隠す。
「ふうん……」
かつての刺々しいオーラはすっかり鳴りを潜めたラビニアは、それ以上追及することなく、どさりと腰を下ろした。
ロッティはセーラが隠れているベッドの下からラビニアの気を逸らすため、必死に機嫌を取り、会話を繋ごうと試みた。
「そ、そっか……。ラビニアも、色々大変だったんだね……」
「まぁね。……でもさ」
ラビニアは天井を見上げ、ぽつりと呟いた。
「少し肩の荷が下りた気もするんだ。院長先生のご機嫌取りも、アーメンガードとの面倒な権力争いも……なんかもう、どうでもよくなってきたっていうか」
その声には、今までロッティが聞いたこともないような、穏やかで無防備な響きがあった。
「……ラビニア」
ロッティは少し驚いたようにラビニアを見つめた。全てを失ったことで毒気が抜け、人が変わったように素直になったラビニア。その予想外の変化に、ロッティはいつの間にか警戒を解き、自然と言葉を交わし始めていた。
ただ一つ、チリチリと熱を持つ自分の首筋を、無意識に手で覆い隠しながら。
——そして、ベッドの下の暗闇。
冷たい床に這いつくばるセーラは、頭上で繰り広げられる二人の穏やかなやり取りを、ただ息を殺して聞き続けていた。口の中に微かに残る、鉄の味。自分がまたしてもロッティの首に牙を立ててしまったという罪悪感に苛まれながら。
しかし、二人ともまだ気づいていない。
ロッティの指の隙間、深く噛み付かれたその肌に。オメガバース特有の決して消えることのない痣——『番の刻印』が、うっすらと、しかし確実に浮かび上がり始めていることに。
つづく
23話グラレコ https://fujossy.jp/fanarts/8144
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新旧の生徒会長が、負けた方が相手の『ペット』になるっていう条件で激突することになったんだ。しかも、僕 がレフリー(証人)だなんて……!
それに……この勝負、絶対におかしいよ。
二人してあの危ない薬を飲み込んだかと思ったら、「先に絶頂 っちゃった方が負け」だなんて。
次回、A-Little-Prince 第24話。
どうしよう……二人とも知らないんだ。そのベッドの下には今、セーラが息を潜めて隠れてるなんて……っ!
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