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#33 アーメンガード♡ラビニア 鞭の後の飴

生徒会室での、あの悪趣味な惨劇の後。重い足取りで自室へと戻ったセーラは、冷え切った屋根裏部屋のベッドに腰掛け、片腕のもげたエミリーを膝に乗せた。 ランプの薄暗い光の中、昼間の生徒会室での出来事が頭を巡る。 「……なあ、エミリー。ラビニアって、一体どういうつもりなんだろうね」 「……」 エミリーは応えない。ガラス玉の瞳が、ただ虚空を見つめているだけだ。 「それはラビニアも同じ気持ちか……僕があいつを庇うなんてさ……」 自嘲気味に息を吐く。ラビニアには散々酷い目に遭わされてきた。なのに……。 ——プールで着替えを盗まれたあの日、僕はラビニアにせがまれて……あの時、僕はどうかしていた。 ——図書室で助けられたあの日も、今日の生徒会のことも……。 僕はいったい、ラビニアのことをどう思っているのだろう。 いくら考えても答えは出ない。ただ、狂った歯車が噛み合うかのように、互いの熱を知ってしまった身体の記憶が、どうしようもなくセーラを惑わせる。 加害者と被害者が入れ替わっただけの、終わりのないマウント合戦。こんな泥仕合にはもううんざりなのに、勝手に身体が動いてしまった自分に呆れるしかなかった。 ふと、天窓の向こうで微かな気配がした。 顔を上げると、月明かりに照らされた隣の屋敷(クリスフォード邸)の屋根に、見覚えのある人影がしゃがみ込んでいる。 (……ラムダス?) 火事のどさくさで行方がわからなくなっていた彼だ。人影はセーラに向かって小さく一礼すると、すぐに闇の中へ溶けていった。 いずれ、彼がここから連れ出してくれるかもしれない。そんな淡い予感だけが、冷え切ったセーラの心に小さな灯りをともした。 ◇ 翌朝。学園の廊下の片隅で、アーメンガードはラビニアを壁際に追い詰めていた。 少し離れた場所では、一般生徒たちに混ざって、セーラが無表情で授業の準備をしている。 「昨日は邪魔が入ったけど……あの続き、どうする?」 アーメンガードのねちっこい声に、ラビニアはギリッと唇を噛んだ。 「……触るなよ」 「強がるなよ。それよりさ……」 アーメンガードは視線の先のセーラを顎でしゃくると、悪魔のように目を細めた。 「おい、昨日のセーラのセリフ、覚えてるか?」 「え?」 「何でも言うことを聞くってな」 「……ッ!」 「お前さ、あいつの前だと変に意地張るよな。だったら……みんなの前で、あいつにお前のあの『可愛い乳首』をいじらせてみようかな? セーラに命令してさ」 ラビニアの顔から、さっと血の気が引いた。 (セーラに……!?) ラビニアの脳裏に、数日前の記憶がフラッシュバックする。ロッティとの勝負で、自らセーラにその弱点を責めさせ、あっけなく果ててしまったあの夜(28話参照)の狂態だ。 アーメンガードは知らない。すでにセーラの手によって、自分が一度陥落させられていることを。あのどうしようもない快感と羞恥を、今度は皆の前で、アーメンガードの命令によって晒されるなど……「公開死刑」以上の絶望だった。 「……や、やめてくれ」 「おや? 震えてるじゃないか。どうする? 皆の前でセーラに辱めを受けるか、それとも……大人しく俺に可愛がられるか。どっちがいい?」 逃げ場はない。究極の二択を突きつけられ、ラビニアのプライドは音を立てて崩れ去った。ガクガクと震える膝を必死に堪えながら、ラビニアは消え入りそうな声で絞り出す。 「……わかったよ」 「ははっ、いい子だ」 アーメンガードは満足げに笑うと、ラビニアの耳元で甘く囁いた。 「今日の授業が終わったら、すぐ部屋に戻ってこい。……たっぷり可愛がってやるからな」 数メートル先では、そんな地獄の取引が行われていることなど露知らず、セーラが静かに教科書を開いていた。 ◇ 激しい快楽の波が引き、甘く気怠い余韻(ピロートーク)の時間が部屋を包む。 ベッドに半身を起こしたアーメンガードは、シーツに突っ伏して荒い息を繰り返すラビニアの背中——赤く腫れた鞭の痕を、今度はどこか労わるように指先でゆっくりとなぞった。 「……痛かっただろう」 「……自分で打たせたくせに、白々しい」 「俺だって、あの時はひどく痛かったんだぜ。お互い様だろ」 耳元で意地悪く囁かれた過去の罪に、ラビニアの肩がビクッと跳ねる。だがアーメンガードはそれ以上責めることはなく、ふと視線を虚空へと彷徨わせた。 「そういえば……」 ——アーメンガードは、静かに思い起こしていた。ラビニア鞭を打たれ、痛みを引きずりながら夜の暗い廊下を歩いた、あの日のこと。向かった先は、当時ベッキーと一緒に住んでいたセーラの部屋だった。そしてあの夜(12話参照)、セーラとの手紙をデュファルジュ先生の託したことを。 (あの手紙どうなったかな……?) アーメンガードがぽつりと独り言をこぼした、その時だった。  ——ガチャッ。 不意に部屋のドアが開き、そしてすぐに、バタン!と弾かれたように激しく閉まった。慌ただしく遠ざかっていく足音が、夜の廊下に響く。 「……今の、ロッティ?」 「……たぶんな」 「……追わなくていいの?」 その言葉に、アーメンガードは冷たく鼻で笑った。 「そしたらお前は、ここに1人だけど、いいの?」 「……っ」 「強がるんじゃないよ。お前は俺のペットなんだから」 アーメンガードが再びラビニアの唇を強引に奪う。 「んんっ……」 「またするの…/////」  ゆさ… ゆさ… ——ずぢゅ♡* ❤︎ 下働きメイド、ベッキーの私室。 「……どのくらい、待っていたの?」 「……夕方から」 ロッティはうつむき加減で、消え入りそうな声で答える。 「鼻の頭が真っ赤だったよ。……そうだ、合鍵を渡しておくね。隠し場所を教えるから、次からは勝手に入って中で待ってて」 「いいの……?」 「いつでも来ていいよ」 ベッキーの優しい言葉が、凍りついていたロッティの心を少しずつ溶かしていく。 「何か私に用事があったの?……あの手紙? ならちゃんと預かってるわよ」 「……ううん。手紙のことじゃないよ」 「そう…」 「……部屋に帰ったらね、ルームメイトの二人が……」 ——あの瞬間、ドアの隙間から見えた光景——乱れたシーツの上で肌を絡ませるアーメンガードとラビニアの生々しい姿がフラッシュバックする。 そこから先を言葉にするのは、今のロッティにはあまりに苦痛だった。唇を噛み締め、それ以上語ることを拒むロッティの様子に、ベッキーはすべてを察したようにそれ以上は何も聞かず、ただ優しくその身体を抱きしめた。 「わかった、もういいよ。……言わなくていい」 「……ねえ、この前してくれたみたいに……」 「…おいで」 ロッティの懇願に、ベッキーは愛おしさと、そしてどこか歪んだ所有欲を瞳に宿し、その細い肩を抱き寄せた。 冷え切っていたその耳たぶに優しく触れる。 「また、したいの?」 ロッティは潤んだ瞳で、小さく頷いた。 夜風がガタガタと窓を揺らしていた。 ベッキーの手がロッティの衣服をそっと解き、二人の肌が重なり合う。 「可愛いこ♡」   っ …  ゆさ… ゆさ… 外の厳しい寒さから逃れるように、狭い部屋の中に微かな水音が溶け出していく。 ——ぬちょっ… やがて甘い吐息が夜の静寂を破る。 「あ”……っ」  し-!♡ シズカに♡ 窓を叩く冷たい風の音を塗り潰すように、二人は何度も何度も互いを求め合った。傷ついた孤独を埋め合わせるように貪り合う二人の終わらない夜は、いつまでも、いつまでも深く続いていった。 つづく 33話グラレコ https://fujossy.jp/fanarts/8162 — 吐く息も白くなるくらい秋が深まって、いよいよ新学期。クラス替えもあって、新しい毎日が始まるっていうのに……(ロッティ)の身体、様子が変なんだ。自分の身体に何が起きてるのか分からなくて……怖くて、部屋にいたラビニアに聞いてみたんだ。 「男のオメガでも、赤ちゃんができるの?」って。 そしたら「当たり前だろ」って呆れられて、僕もう頭が真っ白だよ! ……でも、変なんだ。僕の話を聞いた後、ラビニアまで急にさっと血の気を引かせて、自分のお腹を押さえながらガタガタ震え出しちゃったんだ。 次回、A-Little-Prince 第34話。 ねえ、ラビニア。どうして君までそんなに怯えてるの……? まさか、君もセーラと……!?

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