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#50 NTR返し ミンチン❤︎セーラの格の違いを見せつけられるロッティ

主の不在となった学園で、セーラとベッキーが誰にも邪魔されない甘美な『魔法の国』の冬休みをひめやかに過ごしていた頃。そこから遠く離れたロンドンの街では、水面下でセーラを救うための歯車が動き出していた。 霧に包まれた街の片隅にある喫茶店で、アーメンガードは元フランス語教師のムッシュ・デュファルジュと向かい合っていた。 「……なんということだ。セーラが、あのミンチン院長の番に……!?」 デュファルジュは顔を青ざめさせ、ガタッと席を立ち上がった。 アーメンガードは周囲の目を気にしながらも、深く頷く。 「ええ。あれからいろいろな事がありまして……。セーラは今、あの男の慰み者として鳥籠に囚われています」 正気を取り戻し、セーラの下僕として絶対的な忠誠を誓ったアーメンガードは、冬休みの帰省を利用して、外部の協力者を探しに走っていたのだ。 「ああ、神よ! 私がもっと早く動いていれば……」 デュファルジュは頭を抱え、苦渋に満ちた声で告げた。 「アーメンガード。君からあの時預かった手紙は、確かに差出人を私に変えて投函したんだ。その後、弁護士からセーラ宛に重要な手紙が届いてね。それを君に、または直接セーラに渡そうと試みたのだが、なかなかチャンスがなく、ようやくロッティに渡せるチャンスが有ったので彼に託したんだ」 「なんだって!?」 アーメンガードは勢いよく身を乗り出した。 「じゃあ、その手紙は今、ロッティが持っているのか!?」 なぜロッティは、その重要な手紙を自分のところに持ってこなかったのか。一瞬湧き上がった疑問は、すぐに苦い諦めと後悔へと変わった。 それも無理もない。あの頃から、自分とロッティの関係は完全に冷え切り、断絶してしまっているのだから。 だが、絶望の淵に一筋の光明が差したことには違いない。弁護士からの手紙さえ手に入れれば、セーラをあの化け物から解放できるかもしれない。 ◇ 一方その頃、ガラスケースの中に美しく飾られた革製の首輪——『オメガ用制御チョーカー』を、ラビニアは食い入るように見つめていた。 「チョーカーは、お使いになったことはありますか?」 不意に店員から声をかけられ、ラビニアはビクッと肩を揺らした。少し気恥ずかしそうに視線を逸らし、小さく首を振る。 「……いや、まだ」 「ご安心ください。そちらをつけていれば、お薬がなくてもヒートの心配はありませんから。……ちなみに、お薬の方は使われたことはございますか?」 「……はい」 「でしたら問題ありません。お薬と同じように効果があるはずですよ」 店員の柔らかな説明に、ラビニアは安堵したように小さく息を吐いた。ヒートを強制的に抑え込み、すでに刻まれた番のフェロモンすら一時的に誤魔化せるという代物。これなら間違いない。 「分かりました。じゃあ、ください。……二つ」 「二つ、ですか? ご自身用ではなく……ああ、なるほど。贈り物ですね?」 店員が察したように微笑むと、ラビニアは微かに頬を染め、「……うん」と短く頷いた。 「一つは僕の分で。……もう一つには、その…… リボンを……」 店員が丁寧にラッピングを施そうとしたその時、ラビニアはふと思い出したように声をかけた。 「……あと、これも…」 ラビニアが告げた商品名に、店員は包装の手を止め、「え?」と怪訝そうに目を丸くした。 「『α(アルファ)用抑制剤』……ですか? お客さん、ご自身用ですか? Ω(オメガ)用ではなくて?」 「あ、ああ……自分用じゃなくて、頼まれもの。アルファの……知り合いに頼まれて」 目を泳がせながら誤魔化すラビニアに、店員は少し疑わしげな視線を向けながらも、棚の奥から薬の小瓶を取り出した。 「そうですか……。くれぐれも取り扱いには気をつけてくださいよ。オメガの方がこれを飲んでしまうと、ホルモンバランスが崩壊して、即座に強烈なヒート(発情)を引き起こす劇薬になってしまいますからね」 「はい、分かってます」 ラビニアはひったくるように薬の小瓶と包みを受け取ると、コートのポケットの中でギュッと拳を握りしめた。 手に入れたのは、セーラを学園から逃がすための道具ではない。一つはセーラへ、そしてもう一つは自分へのお揃いの枷。そして、失っていた「狂気の引き金」。ミンチンの干渉を断ち切り、互いの貞操を自分たちだけの閉じた世界で守り抜く。それはラビニアなりの、あまりにも狂信的で歪んだ愛の誓いだった。 ◇ 冬休みの終わりが静かに近づきつつある学園。 ミンチンの私室では、甘い背徳の時間が続いていた。 「ああっ……セーラ、様……っ」 豪奢な天蓋付きのベッドの上で、シーツに包まれたベッキーが艶やかな声をもらす。セーラは愛しげにその髪を撫で、何度も深く口づけを落としていた。 誰もいない魔法の国で、二人は完全に油断し、互いの温もりに溺れきっていたのだ。 だが、その甘美な時間は唐突に終わりを告げた。 「……え? 今の音、何……?」 不意に外から聞こえた微かな物音に、ベッキーがビクッと体を強張らせる。嫌な予感に背筋を冷やされ、セーラは素早くベッドから抜け出した。窓の隙間からそっと下を見下ろすと、そこには見覚えのある豪奢な馬車が停まっていた。 「ヤバい……ベッキー、急いで服を着て! ここを出るんだ!」 血の気が引いたベッキーは慌てて衣服を身につける。 しかし、無情にも廊下の奥から、革靴が床を叩く重々しい足音が近づいてくるのが聞こえた。間に合わない。 「セーラ様、どうしよう……見つかったら、……殺されちゃう……!」 「落ち着いて。あのクローゼットの奥に隠れて。僕がいいと言うまで絶対に出てきちゃ駄目だ」 セーラは泣きそうに震えるベッキーを薄暗いクローゼットに押し込み、素早く乱れたシーツを整えた。そして、自分はミンチンから与えられた上質なシャツを急いで羽織り、ベッドの脇に立った。 ガチャリ。 重い扉が開いた。部屋に入ってきたミンチンは、自分の寝室に立つセーラの姿を見て、ぴたりと足を止める。 「……私の留守中に、ここで何をしている?」 鋭い声が飛ぶ。セーラは心臓が破裂しそうなほどの焦燥を必死に押し殺し、氷のように冷たく、尖った視線をミンチンに向けた。 「……あの手紙を、返してください。あなたがどこかに隠し持っているんでしょう。だから、探しに……」 「ほう。手紙を探しにね」 ミンチンはゆっくりとセーラに歩み寄る。そして、セーラの顔を至近距離でしげしげと覗き込み……やがて、喉の奥で低く笑った。 「……嘘をつけ」 「……っ!」 「私を欺けると思うな。お前はもう、手紙などどうでもよくなっているはずだ。違うか?」 ミンチンの指先が、セーラの火照った頬をなぞり、開いた襟元から覗く『番の痕』へと滑り落ちる。 セーラは先程までベッキーと肌を重ねていたため、全身が熱を帯び、オメガ特有の甘い匂いを色濃く漂わせてしまっていた。しかし、ミンチンの傲慢な自尊心は、それを全く別の理由として都合よく解釈したのだ。 「お前の体は正直だ。氷室のような屋根裏部屋でこの『痕』が疼き、アルファである私の匂いを本能的に求めて、惨めにもこのベッドに潜り込んだのだろう? ……いいのだぞ、もっと素直になれば」 「ちが……っ!」 否定の言葉を紡ごうとしたセーラの唇は、ミンチンの強引なキスによって塞がれた。 そのまま力任せに押し倒され、セーラは乱れたベッドの上に背中から沈み込む。 ギシッ、とスプリングが重い音を立てた。 (……ベッキー!) セーラの視界の端には、薄暗いクローゼットの扉が映っていた。 ほんの数メートル先。ルーバー扉の隙間の奥で、ベッキーが両手で必死に自分の口を塞ぎ、声にならない悲鳴を上げながら震えているのが分かる。 「ああっ……いや……っ!」 「大人しくしろ。せっかくお前の方から私を求めに来てやったのだ、たっぷりと可愛がってやる」 ミンチンの重い体がのしかかり、無慈悲にシャツのボタンが外されていく。 抵抗すれば、不審に思ったミンチンが部屋の中を調べ始めるかもしれない。クローゼットの中のベッキーを守るためには、甘んじてこの暴力と屈辱を受け入れるしかなかった。 「……っ、ぁ……あっ、ああっ……!」 愛するベッキーの目の前で、自分を破壊した元凶に蹂躙される地獄。だが、さらに残酷だったのは『Ω(オメガ)としての本能』だった。 先ほどのベッキーとの優しく甘い情事とは、抗う術もないほど次元が違った。 絶対的なアルファであるミンチンの暴力的なフェロモンと支配に、拒絶する心とは裏腹に、セーラの身体は芯から熱く蕩け、あられもない嬌声を無理やり引き出されてしまうのだ。 シーツを限界まで強く握りしめ、屈辱と、決して認めたくない圧倒的な快楽に涙を滲ませるセーラ。 暗いクローゼットの中で、ベッキーは溢れ出す涙と絶望を止めることができなかった。 自分のせいで気高きセーラが犯されている。それだけでなく、自分では決して引き出せないほど深い悦びに、愛する人の身体が強制的に屈服させられていく様を、ただまざまざと見せつけられているのだ。 飛び出して助けたい。けれど、セーラとの「絶対に出てこないで」という約束が、呪いのようにベッキーの身体を縛り付けていた。 主の不在を狙ったはずの甘美な逢瀬は、最も残酷な形の地獄へとすり替わり、重く苦しい夜が更けていった。 つづく 50話グラレコ https://fujossy.jp/fanarts/8197 — 今度こそ、(アーメンガード)がセーラを守る騎士(ナイト)になるはずだったのに。庇って飛び出した俺はあっけなく押さえつけられ、嘲笑の中、大勢の生徒の前で下着一枚に剥ぎ取られてしまった。 「やめろ……ッ! 見るな!」 冷たい床で無様に震える俺。でも、一番惨めだったのは……守りたかったはずのセーラから、そっと上着を掛けられたことだ。 次回、A-Little-Prince 第51話。 守るどころか哀れまれるなんて……俺は本当に、底辺まで落ちぶれちまったんだな……。

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