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第6話 もっとって言ったら熱出すまで抱かれたんだが、同棲も悪くない 〜ファラの手打ち麺〜

 蓮の引越しはすぐに終わった。  元々あまり荷物の無い蓮は、飾られていたペアグラスだけは絶対に持っていくと丁寧に梱包してバルドの家にやってきた。  本や服を片付け、半日で部屋の整理は終わった。 「蓮、夕飯にしよう」  バルドの部屋に入ると、テーブルセットがされていて、ランタンの灯りだけでムードを作っていた。 「なんだよ、雰囲気いいじゃねぇか」 「そうか?」 「これ、初めて寝た時もつけてただろ?」  ランタンの火を指せば、バルドの顔が染まった。 「……そ……そうだな……電気より、火の方が扱いやすいから……」 「え、普段から電気使わないのか?」 「まぁ、火の方が楽だろ?」 「いや、電気だろ」  魔法が使えれば火の方が楽なのだろうが、蓮には断然電気の方が馴染みがある。 (なんか、一気に生活感が……)  せっかくの引越し初日に、恋人のムードも無く生活の話をするのはやめようと、蓮は椅子に座った。  バルドも向かいに座り、火に照らされた顔に蓮は少し気恥ずかしくなる。  食事が終わり、シャワーも終えたバルドが、バスローブ姿で蓮にお次どうぞと言い、頬を染める。  その顔に蓮は吹き出しながらシャワーへと向かった。  これから一緒に暮らしていく。ニヤニヤとシャワーに向かいながら、蓮は思う。 (いつでもヤり放題だ)  きっと身体中舐められるだろうと、丹念に洗って、バルドの寝室へと向かった。 「バルド、お待たせ」 「ん?別に待ってないぞ」  そう言ったバルドは、綺麗にパジャマを着ていて、今にもスヤスヤ寝ようかとベッドに横になっていた。 「は?お前、なんなの?」  蓮はズンズンとベッドに向かって歩いていき、バルドの被っている布団を剥がす。  驚くバルドに、腕組みをして見下ろしてやった。 「俺の同棲の条件、俺が気が済むまで抱けって言ったよな」 「えぇっ、そんな初日から良いのか?」 「良いに決まってんだろ!」 (むしろ期待してんだよ)  鼻息荒く言った蓮は、次の瞬間に腕を掴まれベッドに引き倒されていた。 「ふぅっ……蓮……今日からずっと一緒だ」 「そうだな」  ペロリと首筋を舐められ、バルドの体温に溶かされていく感覚がした。 「はぁ……バルド……あぁっ……あっ」 「蓮……気持ちいい……蓮……」  一回達した後、すぐに始まった二回目は、いつもと何かが違った。  バルドに突かれるたびに衝撃と快感、星が散るような感覚はいつも感じるが、腹の奥からゾワゾワと競り上がってくる何かを蓮は感じていた。 「はぁっ……蓮……もっと舐めたい……」 「うっあぁっ……あぁぁっ……ぅふぁっ……」  バルドに揺さぶられながら、胸の突起を吸われた瞬間、蓮の身体は反り上がり何も吐き出していないのに、達している快感が駆け巡った。 「蓮……すごい締まってる……腰止めらんなぃ……」 「あぁぅっ……あっ……まっ……くぅっ……やっ……」  駆け巡る快感は、バルドの腰の動きに合わせて何度も何度もやってくる。  身体の自由が効かず、息の仕方もわからない。 (苦しい……これ……女がイキすぎて辛いって言ってた時のか?)  もはや口から出るのは嬌声のみで、助けを求めるようにバルドに手を伸ばしたら、屈強な体が覆い被さってきて、首筋を舐められる。  角度が変わったバルドの抽挿に、蓮の身体はまた震えだす。 「うあぁっ……あぁっ……やっ……も……」  息も絶え絶えにバルドにしがみつき、溢れる快感と涙に身を捩る。 (ダメだ……これは……苦しすぎて……気持ち良い……) 「あ、蓮……締めすぎ……出る……んあっ、あぁっ」  中で震えたバルドが、息を乱しながら笑顔を向けてくる。  ボロボロと涙をこぼす蓮に、バルドは慌てた。 「大丈夫か?!」 「ぅん……やばぃ……もっと……」  溶けた顔で泣きながら笑った蓮に、バルドはまた、勃ち上がった。  気付けば朝だった。  何度繰り返したか分からない情事に、目覚めた蓮の体は悲鳴をあげていた。 (結構序盤で満足してたんだけどな俺……)  隣でモゾモゾと起き出したライオンを見れば、寝起きに似合わない爽やかな笑顔を向けられた。 「おはよう、蓮」 「あぁ…………」 「体は大丈夫か?」 「そう思うか?」 「…………満足はさせられただろ?」 「…………したけどな」 (明け方まで続けたのはバルドが止まらなかっただけだろ)  だるい頭で思い出すが、自分の体に夢中になるバルドにストップをかけなかったのも蓮である。 「今何時だ?」 「ん?蓮はまだ寝ていていいぞ。開店時間に間に合えばいい」 「そうもいくか。ワイン蔵見にいかねぇと」  ギシギシと軋む体を動かして、蓮は支度を始めた。バルドは上機嫌に蓮を抱きしめる。 「階段は抱っこして行ってやるからなっ」  ニカっと笑うライオンの耳を、蓮は強めに引っ張ってやった。 (だるい……)  営業スマイルは崩さないが、開店時間を少し過ぎた頃から蓮は身体の不調を感じていた。  ラストオーダーも終わり、客が席を立つ。  チェシュが会計を済ませ、ありがとうございましたと明るく言って、蓮もその声に続いて声を出したと思う。  客がいなくなったカウンターにもたれ、蓮は息を切らした。  まともに呼吸ができず、身体が熱い。  カウンターに戻ってきて、閉店作業を始めるチェシュに、不思議そうに顔を覗き込まれその顔を押し除けた拍子に視界が歪んだ。 「んにゃっ、何……するんだにゃん」  気付けば蓮はカウンターにチェシュを押し倒している。 「オーナーの匂いがするにゃん、嫌にゃん!」  抵抗するチェシュにどいてやらないとと思うが動けず、ズルズルとそのまま床に引き倒してしまった。  狭くなる視界に、テーブルの皿を片付けていた志岐の姿が映って、白く消えた。 「蓮さんっ!」  滅多に聞かない志岐の大声に、バルドは厨房から出てきた。 「どうした、志岐。思春期か?」  まぁ落ち着けと軽く笑うバルドは、声がした方向を見て、血の気が引いた。  カウンター裏でチェシュを押し倒し倒れる蓮を志岐が揺さぶっている。  一瞬で心拍数が上がったのがわかり、志岐を押し除けて蓮に触れる。 「うぅっ……」  荒い呼吸を繰り返す蓮の体はいつもより熱かった。 「蓮っ……」  バルドは焦り、蓮の手を握る。なぜか身体が動かない。 「早くどかしてほしいにゃん、ベッドに連れて行ってあげるにゃん」 「べ、ベッドなんて……」  チェシュの言葉に、真っ赤になって破廉恥だと言い返そうとするバルドだが、チェシュと志岐に白い目で見られ、ハッとした。 「……そ……そうだな……ベッドだ……」  なんとか取り繕いながら、さっと蓮を抱き上げて、二階の蓮の部屋へと運んだ。  ピピピと電子音が鳴り、バルドは蓮の脇から体温計を取り出す。 「39.5度……」 「微熱だにゃん」  さほど高い熱じゃ無くてよかったとバルドもホッとした。  しかしその横で、志岐が滅多にない大声を出す。 「人間には高熱ですよ!」  志岐は慌てて蓮のベルトを緩め、靴下を脱がしていく。  着替えを探そうと洋服ダンスを開け始めた。 「そうなのかっ!?…………蓮……」 「オーナーが抱き潰すからだにゃん」 「……ぅ…………」  高熱と聞いて、蓮の顔を両手で挟んで覗き込むバルドに、チェシュは冷たく言い放つ。  バルドには返す言葉も無い。 「抱き?」  着替えを探し出してきた志岐は、蓮のシャツのボタンに手を伸ばしながらチェシュの言葉に首を傾げた。  チェシュは優しく志岐に笑いかけ、頭を撫でる。 「分からない子は良いのにゃん。お店の片付けに行こうにゃ~」  蓮の着替えをバルドに押し付けて、チェシュは志岐に部屋を出るように言う。  バルドは着替えを受け取ると、苦笑しながら志岐の肩を押してチェシュに付いて行かせた。  店への内階段を降りながら、前を歩くチェシュの揺れる尻尾を見て、蓮に押し倒されていた姿を志岐は思い出した。  途端になんだか動悸がしてくる。 「あの……チェシュさんも、さっき蓮さんに抱き潰されてました?」 「にゃっ!?あれは押し潰されてただけにゃん。いやらしい事なんて無いにゃん」  勇気を出して聞いてみると、チェシュは慌てて否定する。  蓮を簡単に抱き上げたバルドや、熱を出しているのに色気のある蓮の雰囲気に、自分だけが子供のように志岐は感じてしまう。悔しくて、チェシュの肩を数段上から掴んだ。 「…………チェシュさんより背が伸びたら、俺が抱き潰します」 「にゃ~ん……楽しみにしてるにゃん」  一瞬目を見開いたチェシュが、妖艶に笑いながら志岐の頬を尻尾で撫でた。  バルドは、蓮を着替えさせると、氷枕を作り頭の下に敷いてやった。  そっと蓮の額に触れ、ゆっくりと息を吐く。 「ごめんな……」 「んっ……?バルド……」 「あ、起こしちゃったか」  ゆっくりと目を開けた蓮は、ボーッとした顔でバルドを見上げ徐々に状況を理解して少し慌てた。 「み、店は?」 「もう片付いてる」 「あ……悪い……俺……」  倒れたことをしっかりと思い出し、迷惑をかけたと蓮はつぶやいた。 「気にするな。倒れたのは俺のせいだ」 「あ……まぁ……そうだな……」 「ごめんな、蓮……」  蓮の枕元に額を付け、バルドの頭は沈んでいく。 「あー、熱が出たくらいだ。壊れてない」  実際、頭も身体も痛むのだが、バルドにへこまれる方が蓮には辛く思え、無理矢理に笑ってやった。 「何か、食えるか?」 「……いや、今はいい……」 「そうか……」  バルドと話しながら、蓮の瞼は重くなっていく。 「あ、暑くないか?」 「……いや……」 「辛いなら、舐めるか?」 (なんでだ) 「………………寝かせてくれ……」 「じゃあ、ゆっくり眠れるように……」  バルドの舌が、そっと蓮の頬に触れた。 「いや……寝かせてくれ……」 「あぁ……ゆっくり寝ろ……」 (寝られるかっ)  ペロペロと舐められ、蓮はくすぐったさに壁を向く。  寝返りをしたことで現れた蓮のうなじに、バルドはスンと匂いを嗅ぎ、ペロリと舐めあげた。 「んんっ……やめ……」 「蓮……良くなれ……」 (舐め方がやらしいんだよ、寝れるかっ!) 「んっ……やめろって!」  ゾクゾクと反応する体に息を荒げながら、蓮はバルドの頭を押し除けた。 「寝かせてくれ。何もしなくていい……」 「……心配なんだ……」  眉を下げたバルドの顔が霞む。 「……あぁ、もう……出てってくれ……」  それだけ言うと、蓮はまた、まどろみの中に落ちていった。  翌朝、目覚めた蓮の着ているものが、また変わっていた。  氷枕も冷たく、氷がしっかりと残っている。 (バルド、出てけって言ったのに見ててくれてたのか)  幾分楽になった体は、少し熱が下がったのだろう。  体を起こしても頭が痛くない。  下の厨房からだろうか、いい香りがしてくる。 「腹減ったな……」  蓮が呟いた瞬間に、部屋の扉が開いた。 「あ、良かった。そろそろ起きるかと思ったんだ」  バルドが、どんぶりを乗せたトレーを持って入ってきた。  途端に部屋にふわりと優しい香りが漂う。 「キャンの出汁か?」 「あぁ、食えそうか?」 「腹減った」 「良かった」  バルドがテーブルに置いた丼には、白い麺が入っていた。  ベッドを降りて椅子に座ろうとしたら、バルドに制され、小さな器に小分けにされた麺を口元に運ばれた。 「え……」 「あーんだ」  ニコニコと笑うバルドから蓮は目を背ける。  恥ずかしくて顔に熱が集まっているのがわかる。  そっと口を開ければ、嬉しそうに口に麺を入れられた。  キャンの出汁がしっかりと香り、鼻に抜けて優しく包まれる。  麺は弾力があり歯応えが良いが、喉越しも良い。 「…………うまい……」 「そうか、蓮がすごく締め付けてきたから、蓮みたいにファラの粉を強く練り込んでみたんだ。良い硬さになってるだろ?」 「…………………………は?」  ニカっと笑うバルドの言うことを理解した蓮は細い目でバルドを睨む。 (食べやすい病人食を作ってくれたんじゃないのかよ)  バルドにとってはこれも試作品のようだ。 (まぁ、でも……)  次の一口を差し出してくるバルドに、蓮は微笑みながら口を開けた。 (家に誰かいるっていうのも悪くないな)

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