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第9話 スーツ萌えを体感したら、脱がせるだろ 〜ルルカのジェラート〜
店休日、バルドと蓮はスーツを買いに来ていた。
二人ともに、新調するのだ。
何のために?
「ビーバーの獣人夫婦にウケるスーツをください」
蓮は大真面目に店員に言うが、店員は笑顔のまま固まって、バルドに助けの視線を送っていた。
バルドもバルドで、伯爵に認められるスーツをくださいとお願いしている。
「ご、ご両親へのご挨拶でしょうか?」
綺麗にスーツを着こなした男性店員は、頭をフル回転させて、にこやかに二人を店の奥へと案内した。気合の入った蓮とバルドは、店員の後ろをズンズンと進んでいく。
「蓮、格好いいな。着慣れてる」
「まぁな、社交界だともっとゴテゴテ付けられるから、こっちがシンプルで良いだろ」
バルドは、どのスーツもスラリと着こなす蓮にさすがだと笑う。
すでに試着をしたスーツが何着もハンガーにかけられている。
「いや、今は社交界は関係ない。ビーバーの獣人夫婦にウケないと意味が無いんだ。お前の両親はこんなスーツは好きか?」
「蓮なら何でも好きだ」
「お前の意見じゃねぇ!」
「ま、まぁ、お客様なら無地の方もお似合いですよ。真面目な印象に見えるかと」
店員は、今蓮が着ている濃い紺色のものを鏡越しに誉めてきた。
バルドも頷き、蓮もまんざらでもないと決まる。
「バルドはこれだな」
自分は何着も持って来させたと言うのに、バルドの番になると蓮は一つを選び、バルドにあてた。
「そうか?」
着てみるかと脱ぎ始め、その背中を見て、蓮は慌ててバルドのシャツの襟を上げた。
「しゃ、シャツは今着てるので良いだろ。脱ぐな」
「なんで?」
蓮は俯いて、小さな声で言う。
「つ、爪痕あるから……」
「爪?」
「俺が付けたやつだよ……」
「え、そうなのか?!」
見たいと脱ぎ始めるバルドを試着室に押し込んで蓮はカーテンを閉めた。
カーテンの向こうからは、見えないと不満そうな声が聞こえるが、店員には貼り付けた笑顔で誤魔化しておく。
(あんなにくっきり付けてるのに気づいてないのかよ)
バルドの背中の厚みを思い出し、蓮は熱い吐息を吐く。
(ムラムラしてきた)
「なぁ、蓮。こんな感じか?」
試着室から出てきたバルドは、多少ジャケットが窮屈そうだが、いつもの雰囲気から変わり、蓮は思わず顔を逸らす。
(何だこの色気……脱がして~)
「あ、ジャケットは少し小さいですね。肩が動かし辛いのでは?」
「そうですね。なんか破けそうです」
そう言って、ジャケットを脱いだバルドに、蓮は膝から崩れ落ちそうになる。
シャツとベストを盛り上げるような胸筋に、腕まくりをした腕の筋。
コック服より体の線が出ているスーツに、蓮はゆっくりと椅子に座りなら身悶えたくなる体を抑え、平静を装う。
「に、似合うじゃねぇか」
「そうか?」
ニパッと嬉しそうに笑う顔に、蓮の方が赤くなる。
「ネクタイがな、あまり綺麗に結べなくて。ボウタイの方が良いか?」
「あ、あぁ?そ、そうだな……」
店員が、バルドのサイズに合うジャケットを探しに行っている間に、蓮はバルドのネクタイを直す。
「ボウタイの方が楽だけど、ネクタイの方が似合う。結んでやるからこっちにしろ」
「お、おぉ」
自然と近くなる距離、蓮が顔をあげるとサッと目を逸らしたバルドに、蓮もますます意識してしまう。
(スーツ萌えって、こういうことか?)
「すいません、お客様。試着用のジャケットのサイズはございませんでした。生地は先ほどのものでよろしいでしょうか。採寸をさせていただけましたら、すぐに作らせていただきます」
「わかりました。では、今着てるものと、これから作ってもらうもの、両方買います」
「え、えっと、今お召しになっているのは試着用ですが」
「構いません。このまま帰らせてください」
蓮は、店員の不思議な顔に至極真面目に返す。
(このままベッドに行きたいんだ!何も言わずに払わせろ)
「何だ?着替えるの面倒なのか?」
「バルドは黙ってろ」
テーラーですったもんだした後、二人は家に帰ってきた。
蓮はバルドの部屋に入ると、すぐにバルドに抱きついた。
「バルド……何でこんなエロいんだお前……」
ジャケットは無く、シャツとベストの上から胸筋に触れて、蓮は鼻息を荒くする。
「ちょ……急だな、蓮……」
バルドは展開についていけないと蓮を剥がそうとする。
「何だよ、したくねぇの?」
スルスルとバルドのネクタイを外して、蓮は妖艶に微笑んでみる。
「かっちりと着込んだ俺を脱がせたくないか?」
自分のネクタイもほどいて、見せつけるようにシャツのボタンを外せば、バルドの喉がゴクリと鳴った。
「ま、待て、蓮。全部脱がないと……汚すだろ」
「オーダーメイドの新品が届くんだ。これが汚れたって良い」
「いや、もったいな……あっ……」
蓮はバルドの上に跨り、腰をすすめた。
未だシャツとベストとジャケットの袖は通したまま、ボタンだけが外されている。
バルドに至っては、スラックスの前をくつろげただけで、シャツがたくし上げられているだけだ。
蓮はバルドの主張を無視して、腰を振りながらよがる。
「あっ……エロい……バルド……スーツから見える腹筋……たまんね……」
「蓮……あ、蓮だって……」
「なぁ……激しく……してくれよ」
「ダメだ……また潰す……」
「じゃ……ゆっくり……我慢しろよ?」
ことさらゆっくり動き出した蓮に、バルドは息を詰める。
「バ、バルド……もう突いてくれ……奥……」
「我慢なんだろ……ぅんっ……」
「はぁ……これ、おかしくなる……暑い……」
「あぁ、溶けそうだ……蓮……」
何度も体位を入れ替え、バルドは後ろから奥をゆっくりと堪能していた。
「溶ける……あぁっ……溶ける……奥……グリグリ……すんな……あぁぁっイク……」
「はぁっ……俺も、悪い、一回だけ……」
バルド自身が引かれ、パシンと勢いよく蓮の中に入ってきた。
「あふぁっ……あぁぁぁっ」
蓮は背を反らして中を締め付ける。
バルドがビクビクと震えながら欲を吐き出しているのを感じて、ドサリとベッドに落ちた。
「大丈夫か?」
「最後、ずるいだろ……」
「我慢できなかった。悪い……」
ゴムを外して、眉を下げるバルドに息を切らしながら蓮は手を広げる。
「気持ち良かった」
「あぁ、蓮の体は最高だな」
「暑いな……」
「あぁ……あ、」
「待て待て、余韻は楽しめ」
蓮を抱きしめながらも、閃いた顔をしたバルドの背中に腕を回して、呼吸を整える。
「浮かんだのがデザートなら許す」
「あぁ、その通りだ」
魔乳にルムを混ぜて冷やしたものに、ルルカを絞っただけのシンプルなジェラート。
「これだけか?」
「いろいろ凝ったのが続くからな。さっぱりと終わるほうが良くないか?」
「確かに」
口当たりが良く、爽やかな風味がする。きっと満腹の胃袋にもすっきりとおさまるだろう。
(食後酒は、度数の強いものでも、さっぱり系でも良いな)
蓮が考えていると、バルドが後ろから抱きしめてきた。
首筋に顔を埋めて、匂いを嗅いでいる。
「これだけでも、幸せだって感じるんだ」
「そ、そうかよ……」
バルドのまっすぐな言葉に、蓮は照れる。
「抱き潰したいくらいの気持ちもあるけどな」
「それは、まぁ……。たまには、しても良いんじゃないか?」
蓮は、願ってもない言葉だと思うが、バルドは首を振る。
「大事にしたい。ずっとずっと一緒にいたいから。蓮、愛してる」
カシャンと、蓮が持っていたスプーンが落ちた。
バルドの腕の中で、蓮の体が小刻みに震えている。
カクッと膝を折った蓮の体をバルドは慌てて抱き寄せる。
「どうした?!」
「わ、かんな……胸が、じわじわ熱い……バルド……」
蓮は振り向くように、顔をあげ、バルドの唇に自分の唇を合わせた。
おずおずと開かれる唇に、蓮は舌を入れ込んで、バルドと絡める。
ピクピク反応するバルドの体に向き合い、屈ませて、深く深く何度も唇を合わせ、吐息を漏らした。
(そういえば、キス、初めてだな……)
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