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第8章:報われなくても(5)
次の日、湊はダブラーの店にいた。この前は夜に来たが、明るいところで見ると店構えといい、店内といい、色使いが派手である。赤を基調としており、湊の目がチカチカした。
「おぅ、まずは調合を手伝ってくれ」
ダブラーは湊を奥の作業場に招き、客からの注文書を渡してくる。それは湊が作り慣れている薬ばかりだった。ダブラーと向き合う形になりながら調合を始める。いつの間に買い揃えたのが、まだ新しい器具たちが窓から差し込む光を反射して煌めいていた。
立て替えた診療代の代わりとして、湊が一日ダブラーの店で働く。金に余裕がないアルダスはその要求を飲むしかなかった。悔しそうに俯くアルダスの姿が、湊の目に焼きついて離れない。今頃どうしていらっしゃるのだろう、と思うと気が気でなかった。
呼び鈴が鳴って、ダブラーに促されるよりも早くカウンターに向かう。そこにはアルダスの店でも見かける客がいた。
「あれ? クォーク、どうしたんだい」
湊が答えるよりも先に、奥から出てきたダブラーが口を挟む。
「今日から俺の子分になったんだ」
「違います。訳あって今日だけお店を手伝うことになったのです」
客は面食らった顔をしたが
「いや、その方がいいよ。ずっと思ってたんだ。あんたたちお似合いだって」
と、のたまった。ダブラーはガハハと大声で笑う。湊は嫌そうな顔をしようとするが、釣られて笑いそうになる。誤魔化すように咳込むと、客に注文されていた薬を渡した。
客が帰ってしまうと、ダブラーは
「俺たちお似合いだってよ」
と嬉しそうにじゃれついてくる。湊はそれを軽くいなすと
「調合を続けましょう」
と先に作業場へ入っていった。
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