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第14章:世界でたった一つの(3)
湊が暮らすワンルームを占領するシングルベッド。なのに、石動と裸になって横になると、ひどく狭い。落ちないように、湊は逞しい腕に強く抱かれていた。
「何度愛し合っても足りないな」
石動が顔を上気させて笑う。それがたまらなく愛おしくて、湊は自分から唇を重ねた。石動も舌を絡めて返してくる。最近は健康のために酒もタバコも控えて、普段からつけているバニラのようなコロンだけが、優しく二人を包んだ。
「直哉さんは、どうして僕を好きになったのですか?」
面接で初めて顔を合わせてからずっと気になっていたと言っていた。自分には何の取り柄もないのに、湊は不思議で仕方ない。
「そうだな。真面目で優しそうで、潤んだ目をしていて、いつかは俺のパートナーになってくれると思ったんだ」
石動が嬉しそうな眼差しをする。三年の月日を経て、やっと手に入れられたことを満足しているのだろう。
「でも、僕は全然優しくなかったですよ。むしろ、憎まれ口ばかり叩いて」
湊の言葉に石動は遠い目をする。
「あの頃は、何度も落ち込んだんだぜ。嫌われてるのかなって」
石動は仕返しのように、ありったけの力をこめて湊を抱きしめる。
「それでも、信じていたんだ。俺は器用じゃないけど、想っていれば必ず伝わるって」
「だから、眠っている間もずっと、僕の手を握ってくれたんですね」
ダブラーの温かくて湿った手のひらも、酒とタバコとバニラが混ざり合った匂いも、ずっと湊に教えてくれたのだ。自分を愛してくれる人が、こんな近くにいると。
「直哉さんに愛されるまで、僕は自分を粗末に扱っていました。でも今は、自分が少しだけ価値のある人間になれたような気がするんです」
「これからは自分を大切にするんだぞ。俺がたっぷり愛してやるから」
その言葉を合図に石動が湊の中へ入ってくる。大きなお腹を揺らしながら、何度も突き上げてきた。
「直哉さん、もっと……」
「湊をこんなに愛せるのは俺しかいないんだぞ!」
腰の動きが激しくなる。あまりにも気持ち良すぎて、湊は大きな体にしがみついていた。
「もう離れませんよ」
「俺だって離さないさ」
一つになるくらいきつく抱きしめ合って動きが止まる。互いに荒い息を吐いていた。
「俺たち、幸せになろうな」
「僕も一生懸命尽くしますね」
夢では叶わなかったダブラーの分まで。石動と絡めた合った左手の薬指には、確かに金色の指輪が輝いていた。
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