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第20話 星降る夜に#1
「りっちゃん、あのさ。一緒に天体観測行かない? たまにはちゃんと観測しに行きたいなーと思って」
昴が高校二年、理月が大学一年の一月頃のこと。その夜もバイト帰りの昴が手土産と共に家に立ち寄って、二人並んでソファに腰かけていた。マカロンを食べながら、ふと思い立ったように昴がそう口にする。
「天体観測? 良いけど、どこでするの?」
「ふらっと行ける都内近郊の、海とか山とか辺りで。りっちゃん、いつ暇?」
「天体観測って言うなら夜だろ。大抵いつでも大丈夫だよ。星を見るって言うなら、新月の日が良いんじゃない? 月が出てない日の方が、星がよく見えるよね」
「それはそうだけど――まあ、いっか。月が出ない日に合わせて行ってみよう。っていうと……二十三日の月曜日かな」
――そんな流れで天体観測の日取りが決まり、一月二十三日月曜日。十九時半頃に理月がタクシーで昴の住むマンション前まで迎えに行くと、ダウンジャケットを着て大荷物を背負った昴がやってきた。
ライフルでも入っていそうな縦長のバッグを背負い、手にもバッグを持っている。運転手がトランクに荷物を積むために運転席から降り、理月も一旦外に出た。
「なかなかの大荷物だな。天体望遠鏡、こんな大型なんだ」
「そうそう。実家からこっちに持ってきたやつ。高くて性能が良い望遠鏡だよ。だからすっごくよく見える」
そう会話しているうちにトランクに望遠鏡のスタンドを入れた縦長のバッグが積まれ、理月がタクシーに乗車して、続けて昴も乗車する。目的地は練馬区にある公園だ。
「今日、晴れて良かったねー。よく見えそう」
「うん。外で天体観測するのって初めてだから楽しみ」
車内でそんな会話をぽつぽつとしているうち、二十分ほどで目的地に辿り着きタクシーから降車した。
望遠鏡を担いで公園の中へと入り、樹木が周りを囲っている池の付近まで足を向ける。夜間の照明は点いてしまっているけれど、照明が点いていなければ危険だから仕方ない。
上空を見上げても肉眼ではやはり満天の星空、とはならないけれど、一番星がちかちか光っているのはよく見える。マンション等の公園周囲の都会の明かりは殆ど入って来ないから、都内の中ではなかなか良い立地だろう。池付近で昴が望遠鏡をバッグの中から取り出して、慣れた手付きであっという間に設置する。
「りっちゃんって、そんなに星とか宇宙とかには詳しくないんだよね?」
「まあ、常識的な知識がある程度じゃないかな。地学の授業取らなかったし、小中学校でほんの軽く学んだくらいだ。あとは、小さい頃にガリレオとかニュートンの伝記読んだり、宇宙の図鑑とか読んだり。そういえば、ガリレオも音楽が好きなんだっけ。確か、親が音楽家だとかでさ」
「あ、それ僕も覚えてる。伝記も図鑑もどっちも読んでた。宇宙の知識なら僕の方があるかもって思ったけど、りっちゃん物知りだからなあ~」
「大して知らないよ。天体観測するのだって初めてだし。今日は昴が先生だね」
「りっちゃんの先生になれるなんて光栄だなぁ。じゃあ、星見ながら解説をする前に……クイズです。昴はどこに居るでしょーか?」
昴が立ち上がり、夜空を指差す。理月は釣られて夜空を見上げ、ぐるっと辺りを見渡した。
星の昴の探し方は知っている。まずは三つ星のオリオン座を見付ける。その付近に、オレンジ色のアルデバランを見付ける。そこまで見つければ、昴はもうすぐそこだ。南西の空に青白く輝く昴――プレアデスの星団を見付けて、そちらを指差す。
「見付けた。あれが昴だね」
「流石りっちゃん、大正解。ここで豆知識、日本だとプレアデス星団は昴の他に六連星(むつらぼし)って名称でも呼ばれます。でもギリシア神話だと七つの星で、七姉妹ってことにされてたり、国によってバラつきがあるんだよね。りっちゃんはいくつに見える?」
「んー……六つに見える、ような気がする」
「僕も肉眼では六つに見える。でも本当は、もっと沢山居るんだよ。どうぞ、覗いてみて」
昴に促され、望遠鏡を覗いてみる。そうすると、狭い範囲にぴかぴかと青白い星が数十個集まって光っている様子が見て取れた。
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