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第2話 王子様系Aと獣系Bと平凡な平民Cの運命の出逢い
なんか、胸のところが重い……。
昨日、へんな夢を見たから頭が痛い。頭痛薬飲まなきゃ。あれ、なんだろ。これ、ごつごつしてて大きくて。
「っ!?」
男の人の腕。しかも4本?
その手は僕の体を両サイドから包み込むように回っていた。なんか、囲われてるみたいな。
右を見たら、夢で見た王子様みたいな男の人の顔。左を見たら、ちょっと強面の黒髪の男の人の顔があった。
なんで? どうして?
僕は固まってしまって動けなくなった。だって、夢が現実になるなんてことありえない。
心臓をばくばくさせていると、王子様みたいな男の人がゆっくりと動き出した。大きな欠伸を一つして僕を見つめる。薄ら開いた瞳は茶色くてあたたかい。
「おはよう。しぃくん」
そう言って、頭を撫でてくる。
すごく、優しい手つき。お姫様になったみたい。何がなんだかわからなくて動けないでいると、反対側から
「まだ寝とけ」
って声が聞こえた。恐る恐る振り返ると、不機嫌そうな顔をした男の人が僕の肩に手を回してる。
「あ、の」
勇気を出して声を振り絞る。僕の声は小さいとよく仕事先の人に言われるから、ちゃんと聞こえてるだろうか。
「なぁに?」
「なんだ」
2人して体を起こして僕を見つめる。僕はなんと言ったらいいのかわからなくて、もじもじとしてしまった。
「おふたりは、どなたですか?」
なんとか言葉を振り絞って、聞く。
起きたばかりで気づかなかったけど、ここホテルみたいだ。ベッドの上で寝てたみたい。ベッドしかない部屋。ラブホテルって、いうのかな。入ったことないからわかんないや。
そしたら、王子様みたいな男の人がくすっと笑って
「しぃくん。忘れちゃったんだ」
って言った。隣のもう一人の男の人は少し難しそうな顔をして眉を顰めている。
「あれだけ酒飲ませれば覚えてないだろ」
強面の男の人が王子様を睨む。王子様はけろっとして答えた。
「しぃくんが飲みたいって言ったんだもん。俺のせいじゃないし」
僕、そんなこと言ったの?
お酒、弱いからあんまり飲まないようにしてたんだけどな。
「じゃあもう一回説明してあげる。けどその前にお水飲もっか」
そう言って王子様がベッドを降りて、備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して僕に渡してくれる。
すごい。ラブホテルって部屋に冷蔵庫があって飲み物付きなんだ。
言われた通りに水を飲もうとしたけど、キャップが固くて開けられない。
もたついてたら、黒髪の男の人が無言でペットボトルを奪ってキャップを開けてくれた。優しい、のかな。見た目や雰囲気はトゲトゲしていて怖い感じがするけど……。
こくこくと喉を通っていく水は冷たくて美味しい。僕が水を飲んでいる間もずっと、二人は僕を見てる。なんだか、恥ずかしいな。
キャップを閉めると、王子様が言った。
「じゃあ昨日のことを教えてあげるよ」
「……はい」
「しぃ君はね。俺たちの前に現れた天使なんだよ」
「へ?」
天使? 僕が?
「天使というより、救世主と言った方が伝わりやすいだろう」
黒髪の男の人がこめかみに指を当てて言う。
結局僕は、天使なの? 救世主なの?
わけがわからずおろおろしていると、不意に王子様が僕の手を握った。包み込むような手つきに、ちょっと安心する。
「大丈夫。怖いことしたわけじゃないよ。詳しく説明するとね──」
僕は話を聞き終わったとき、頭の中が真っ白になってしまった。
唯一理解できたのは、僕はこれから二人の前では「C」という記号の人間になること。
そして、彼らとセフレになり「しぃくん」と呼ばれるということだけだった。
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