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第12話 秘密を告げたら、更に二人の愛に溺れていく

「えーさ、ん。くすぐったい」 「なんで? 気持ちいいの間違いじゃない?」  週末のラブホテル。いつもの場所。いつもの時間。いつもの二人。この時間だけが僕の傷を癒してくれる。  けれど、だんだんえーさんとびーさんの僕への甘やかしが激しくなっているのも事実だった。  こんなに優しくされたら、戻れなくなりそう。  僕は人の優しさに触れるのも臆病だった。 「これくらいがスキンシップだよ。ね? 猫がお互いを毛繕いしてるのとおんなじだよ」 「ほんとう?」  僕の目は嬉しくて気持ちよくて潤んでいた。えーさんは笑ったまま数秒間硬直してから、僕の身体をそっと離してくれた。 「おい。えーはもういいだろ。今度は俺の番だ」 「わっ」  えーさんのターンが終了した。いつもと少し様子の違うえーさんのことが気になるけど、今はびーさんのターンだ。僕は自分から勇気を出してびーさんの腕の中に飛び込んだ。 「!」  珍しい。いつも鉄仮面のびーさんの驚いた顔。けどそれも数秒で元の無表情に戻ってしまった。 「なんだかいつもより元気がないように見えるが、何かあったのか」 「……!」  まさか。バレてたなんて。  僕は言ってしまえたらどれだけ楽だろうと思った。けれど、こんな話を聞いたら二人に嫌われてしまうんじゃないかと恐れて口をぎゅっと結んでいた。 「なんでも言っていいんだよ。俺らの前では、ありのままのしぃくんで居ていいんだよ」  えーさんの透き通る声。優しい声音に僕の胸を縛り付けていた糸がほどけていく。びーさんの腕の中で俯きながら自分の話をした。 「僕の家、ちょっと変わってて。妾の子だから、僕。だから、家での扱いがあまり良くなくて、家に帰るとすごく冷たい気持ちになる。帰る場所がなくて、辛くて、悲しくて」  声が震えた。呼吸が荒くなる。それをわかっているびーさんが、無言で背中を撫でてくれる。「大丈夫だ」と言われているみたいで少し安心した。 「そっか。それはすごく辛かったね。話すのも怖かったよね。教えてくれてありがとう」  えーさんは僕に寄り添う言葉をかけてくれる。王子様みたいに優しくて慈悲深い人。 「……こんな話、嫌な気分にさせるよね」 「いいや。嫌な気分にはならない。むしろ気づけなくてすまなかった。お前がそんなに辛い思いをしているとはわからなくて。お前はいつも笑顔だから」  そうだったんだ。僕、二人の前では笑顔だったんだ。 「さっそく、いつにする?」 「え?」  びーさんがスマホで何かを確認しているようだ。スケジュール帳を開いているらしい。 「いつって?」 「ひとまず、お前に帰る場所を与えることができるのは俺だ」 「え……?」  冗談っぽくない、真剣な表情。びーさんのこんな顔初めて見た。 「ずるいよびーさん。しぃくん、俺の家でもいいんだよ?」 「お前の家は狭すぎるし散らかってて、しぃが気を休めなくなるだろ」  まさか、二人とも僕を居候させてくれようとしている? 「そんな、いいの? 迷惑じゃない?」  不安げな僕の言葉に二人は、安心させるように微笑んでくれた。 「いいに決まってる。俺の大切なしぃくんだよ。ちゃんと保護する」 「俺の家に来い。空き部屋もあるし、えーとちがって整理整頓しているから暮らしやすいだろう」 「えーさん、びーさん。僕、なんてお礼したらいいか……」 「礼ならいらない。と言いたいところだが、いってらっしゃいとおかえりなさいのハグはされたいがな」  びーさん、少し照れてる? 目元がほんのり紅い。  それを聞いたえーさん、大激怒。 「えーっ。びーさんばっかずるい! それなら俺もびーさん家に住む! そしたらしぃくんをびーさんだけに独り占めさせずに済むよね。しぃくんも、俺がいないと寂しいよね?」 「あっ……うん。寂しい」  言わされてる感もあるけど、えーさんにも会いたいのは事実だ。びーさんは少しこめかみに手を添えた後でぽつりと零した。 「構わない。しぃが俺の家で暮らすのなら、かつしぃがえーも呼びたいのであれば二人とも俺の家で暮らせばいい。ただ、えーにはそれ相応の家事をしてもらう」 「やったあ! よかったね。しぃくん。これで皆で仲良く暮らせるよ。俺、さっそく引越し準備しなくちゃ。じゃあ、お先に!」  台風のように去っていくえーさんの後ろ姿。  僕は二人きりになったベッドの上でびーさんを見つめる。 「ありがとう……本当に、助かる」 「いいんだ。それにお前、泣きそうだったから。泣いてる姿は見たくない」 「びーさん」  ふにゅ、と顔を上げたらびーさんの唇が僕の唇にくっついた。何度も角度を変えて優しく押し付けるだけのキス。どきどきする。胸が張り裂けそうになる。 「……悪い。つい、お前がかわいくて」  少しばつが悪そうに困り眉を浮かべるびーさん。  キス、されちゃった。ファーストキス。びーさんの唇、柔らかくて熱かった。 「ううん。嬉しかった」 「そうか。それならよかった。じゃあさっそく、お前の家に荷物を取りに行こう。今日は俺は仕事が休みだから、ちょうどいい」 「うん。ありがとう。そしたら、僕の荷物は少ないからキャリーケース1つで足りる。それと、家族に伝えてから行くよ」 「ああ、その件だが俺も着いていく。俺から告げたほうが向こうもこれ以上干渉してこないだろう」 「ありがとう。心強いよ」  僕の手を握りしめてくれたびーさん。その手は力強くて励まされているような気がした。

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