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【R18】魔法のデ〇ルドを友人で使用したその後について
都会から少し離れた郊外の住宅街に、惇嗣の実家はある。盆休みを使用して、現在帰省中だ。旅行など遊びに出かける計画がなければ、惇嗣は盆暮れ正月に大抵帰省していた。
両親が共働きで資金を貯め、ローンを組んで購入したこの家で惇嗣は育った。大学卒業後に家を出た後に幾度かリフォームを行ったらしく、所々は思い出のある実家ではなくなってしまったが帰ってくるとやはりここは実家だなと思う。今では惇嗣が大学を卒業するころに早めの退職をし専業主婦になった母と、まだ現役で働いている父がこの家に住んでいた。
5LDKの、購入当時としては中流家庭にありがちな一戸建てだ。小さな庭があって、子供の頃の写真は背景がいつもその庭だった。
「ねえアンタ」
「んぁ?」
そんな実家のリビングのソファで、惇嗣は寝転んでいた。半分寝ているような、寝ていないような曖昧な意識の中で、腹の上の暖かい生き物が起き上がることを妨げている。3歳児というのはここまで暖かいのか、小さい電気毛布みたいなもんじゃないかと言うと、母親は惇嗣もそうだったんだと柔らかい笑みを浮かべていた。
「彼女とかいないの」
ダイニングテーブルに頬杖をついてこっちを見ているのは、3歳児の母親で惇嗣の姉だ。さっきまでスマホで明日姉家族で行くテーマパークの情報を調べていたはずだったのに、何故かにんまり笑いながらこっちを見ている。
「何、いきなり」
「や、明日行くとこ調べてたらデートの話ばっかり出てくるから。そういやあうちの弟もいい年だったなと思い出して」
「今年24ですね。こないだは美味しい明太子ありがとうございました」
「美味かったろ。旦那の実家だから」
3歳年上の姉は5年前、22歳で結婚した。夫は小さな明太子工場の三男坊だ。夫との間には、今現在惇嗣の腹の上で昼寝をしている男児と、ソファの前、どでかいテレビでエンドレスアンパンマン体操を踊っている5歳女児がいる。
今は実家を出て暮らしているが、惇嗣と同じくお盆休みを利用して帰省してきている。昨日は惇嗣を含めた家族全員で墓参り後にファミレスで夕食を食べ、庭で花火をした。
毎年会うはずなのに、甥姪は毎年最初の数時間だけ人見知りをする。そして母親である姉と惇嗣のやり取りを見て、惇嗣を自分たちと対等に扱い始める。腹の上の昼寝然り、エンドレスアンパンマン体操然りだ。
「あつしー、あつしも踊ってー」
「惇嗣は疲れたのー。りゅっくんもお昼寝してるでしょー。なぁちゃんもお昼寝しないのー?」
「なぁちゃん赤ちゃんじゃないからしないのー」
曲が終わったタイミングで女児が近寄ってくるが、曲が始まるとまたテレビの前に駆けていく。無尽蔵の体力が羨ましいような、理解できないような気持ちになって、まだ短い手足で踊る女児の背中を眺めた。
「んで、彼女は」
「んー……いないねえ」
話を逸らすことには成功しなかった。はぐらかせば怒涛の追及が始まるので、はっきりと答えておく。彼女はいない、嘘ではない。
「あの、何だっけ。年上の人?あの後彼女出来た?」
「全く」
「えー、じゃあもう2年ぐらいいないんじゃん」
「1年半ですお姉様」
入社半年で、惇嗣はバリキャリの先輩女性社員と付き合った。落とした、と言われたのは女性社員の方だ。仕事を覚えるのに必死だった惇嗣を手取り足取り指導して、プライベートな関係にまで持ち込んだ肉食系女子だ。美人で少し肉感的なスタイルのさっぱりした人。当時で4歳年上26歳、ゴリゴリに結婚を視野に入れたお付き合いだった。
「じゃあもう結婚しちゃえば良かったのに」
「ううーん、俺には荷が重かったなぁ」
付き合って半年経たない内に、大学卒業したての男に向かって、私が稼ぐから専業主夫やってくれない?とプロポーズしてきた。働き出したばかりの惇嗣がそのプロポーズに及び腰だと分かると、彼女はあっさり別れを切り出してきた。損切りも早い。
「今すごいんでしょ?彼女」
「あー、うん」
その後、彼女は大手企業にヘッドハンティングされて転職していった。誰もが名を知る有名企業だ。昇進した今では役職を得て、時々業界紙に写真とインタビューが載っていたりする。
「勿体ない」
そうかな、と思う。新入社員の頃は、上昇志向の強い仕事のできる彼女に憧れもしたし、そんな彼女が心を開いて素を見せてくれるのも嬉しかった。他愛ない我儘や、疲れを癒してあげるのも苦じゃなかった。
だが、惇嗣は彼女ほど上昇志向はないし、仕事に希望も持っていない。かと言ってキャリアを捨てて誰かを支える覚悟まではできなくて、どっちつかずの中途半端な人間だ。きっといつか、自分か彼女か、どちらかが辛くなっていただろうと思う。現に、専業主夫になってくれと言われた惇嗣は、それを重いし怖いと感じた。
「今仲良くしてる子とかもいないの」
「いないなー。何、誰か紹介してくれんの」
「あれ、私の友達紹介してほしいの」
姉は鬼だ。類は友を呼ぶという事で、姉の友も割と惇嗣にはだいぶ気安い。惇嗣が人見知りせず親し気なのもあっただろう。
幼少期から、基本的に姉の下僕だった。お土産のケーキもアイスも、姉からまず選ぶ。姉が中学生になった頃からはコンビニまでパシリもさせられた。日曜日に姉の友達が遊びに来ると、マニキュアや化粧の試し塗りもだ。車の免許を取った以降は、送迎もさせられた。友人達との休日の小旅行に、運転手として駆り出されたこともある。パシリの代金として釣りは小遣いになったし、送迎の礼もちゃんとあったので旨味もないではなかったが。
ちなみに、姉の友人達とのエッチな美味しい思いは一つもなかった。みんな、自分の弟ができたみたいと可愛がってくれはしたが。
「いえ、結構ですお姉様」
「でしょーね」
ふと浮かぶのは喜勇の顔だ。セックスするようになってから早3ヶ月。週末はほぼ一緒に過ごしている。時々は平日も一緒に飲みに行く。以前より、かなり会う頻度は増えたと思う。
けれど恋人という程甘い感じはない。惇嗣も喜勇も女性とばかり恋愛してきたし、高校時代からの付き合いの長い友達でもある。セックスしたからといって、お互いの態度は男友達の域を出ることはない。
かと言ってセックスフレンド、という程、性欲だけで繋がっているわけでもない。仲のいい友人と遊ぶだけじゃなくセックスもするようになった、というのが惇嗣から見た正直な所だ。
だが喜勇は惇嗣の事が好きだと言う。それも、大学を卒業する頃からだ。そんな相手とセックスするのだから、やっぱり付き合ってることになるだろうか。これまでも、特に恋愛感情のない女の子と付き合い始めてセックスすることは普通にあったしそこから恋愛感情が生まれることもあった。
ならばやはり、自分は喜勇と付き合っているのだろう。
「姉ちゃん」
「何よ」
「……、いや、うん。何でもない」
家族に打ち明けるのは、躊躇われた。俺の事好きだっていう男と付き合ってセックスしてますが、俺はその男を友達としか思えていません、なんて言う気にはなれなかった。
『今日帰ってくる?』
そんなメッセージが届いた時、惇嗣は実家で少し遅い昼飯を食べていた。ピロン、と音がして、ロック画面に全文が表示された。唐揚げを頬張りながら画面を見ていると、正面から覗き込んできた姉が口を開く。
高校時代に何度か家に遊びに来たことがあるから、姉も喜勇を知っている。恐らく、覚えているはずだ。
「何?彼女?」
「違うよ、喜勇」
「あぁ、あの子。アンタまだ付き合ってもらってんの?」
「家近いんだよ」
付き合ってもらっているだなんて、自分が無理に喜勇を連れ回しているような言い方だった。アイツが俺を好きなんだぞ、と心の中で思いつつ、けれど姉に口答えなどできず言い訳じみた言葉を返すしかなかった。
「あのイケメンで背の高い子でしょ」
「……、間違ってはないな」
「バレー部だったんだっけ」
「そうそう」
高校時代、喜勇はバレー部員だった。結構しっかり活動している部だったから、ほとんど毎日朝練から放課後の部活動もあった。惇嗣も何度か試合に応援しに行った。あの頃から今でも喜勇はクラスの誰よりも背が高くて、体格も抜きん出て良かった。
「モテそうなんだから、邪魔しちゃだめよ」
「邪魔って」
「アンタら揃いも揃っていつまでも高校生みたいなノリしてんだから」
姉の言葉で、惇嗣は思い出した。バカなことばっかりやっている仲間内の中で、何故か喜勇は周囲の人間からいつも惇嗣たちに付き合わされている、という風に見られていた。実際には喜勇が提案したバカなこともやったし、誰かの提案にもノリノリだったのだが、見た目でそう思われていたようだった。喜勇はその都度、苦笑して否定したが特に同年代の女子からはよくツンケン言われたものだ。
「仲良くやってるならいいのよ。ねえ、惇嗣」
「んー、まあ仲良くやってるよ」
母親が取り成して、姉はようやく口を閉ざした。これ幸いと箸を置き、スマホを手に取って喜勇に返信する。
『今日帰るつもりだった。なんかあった?』
『家行っていい?スイカ一個持たされた。一緒に食って』
『りょーかい。夕方6時ぐらいに着く予定』
了解!と白いキャラクターが言っているスタンプを押して、スマホを伏せて置いた。箸を取って味噌汁を啜りながら、来るのか、と思う。
来るからには、いつも通りセックスはするだろう。なら色々準備しておきたい。移動で汗もかくし、シャワーも浴びておきたい所だ。
「喜勇くん何だって?」
「スイカもらったから一緒に食ってって」
「あら、ならうちからもいろいろ持って帰んなさい」
食事もそこそこに立ち上がった母親がキッチンにしまわれている「とっておき」と称された余り物を紙袋に詰めるのを、惇嗣はぼんやり眺めていた。
去年までは家に帰ってもどうせ一人だからと断っていた余り物の分配だったが、喜勇が来るなら一緒に消費してもらえるだろう。スイカの礼とでも言って押し付ければいい。
「母さん、俺飯食ったら出るわ」
「え、もう?夕方までいると思ってたのに」
「うん。でも喜勇来るから」
「えー、あつしかえるのー?」
「かえるのー?」
それぞれ子供用のフォークに唐揚げを刺した姪と甥が、くりくりした目でこっちを見ている。年に数回しか会わないが、会うたびに大きくなっているのが感慨深い。
「惇嗣は帰るよ。なぁちゃんとりゅっくんは明日までいるんだろ」
「あつしももっと遊ぼうよー」
「あそぼー」
「うーん。あつしの友達も惇嗣と遊びたいって言ってるから」
「そっかぁ、じゃあさあつしのともだちもいっしょにあそんだらいいよ」
自分と喜勇が甥姪と遊んでいるところを想像する。子供が好きだとは聞いたことがない。嫌いでは無さそうだ。誘ったらどんな顔をするだろうか。あの大きな体で、アンパンマン体操を姪と一緒に踊るだろうか。
「惇嗣の友達がいいって言ったらな」
「うん」
母親の手に持たれた紙袋が2つ、はち切れそうになっているのを見ながら惇嗣は昼飯をかき込んだ。
惇嗣の実家から自宅までは、電車で小一時間ほどだ。見送りたいと言い出した甥姪とその付き添いの父親とは一緒に駅まで行き、アイスを買ってやって別れた。人混みに紛れながら電車を乗り継いで自宅に辿り着いてから、もらった色々を片付けたりゆっくりシャワーを浴びて準備を整えたりしているとあっという間に夕方になった。
ベランダからの赤く染まった空を眺めていると、何となく終わってしまったような寂しいような気持ちになる。子供の頃に、友達との遊びを切り上げて家に帰らなければならなかったからだろうか。何も終わってないし、大人の時間はこれからなのにだ。
『もう駅着く。スイカ重い』
『東口から出てきて』
黄色い顔がウルウルと涙を溜めたぴえん顔の絵文字と共にメッセージが送られてきたのは、18時を少し回った頃だ。汗を流したいと思ってシャワーを浴びたのに、惇嗣は駅前にいた。部屋着のTシャツと短パンにクロックス姿で休みの日の買い物ぐらいでしか使わない自転車を引っ張り出して、駅の出口で喜勇を待っている。
惇嗣の家は西口から出てきた方が自宅には近いが、夕食の買い出しがある。この間喜勇に言った総菜屋に行きたい。きっと喜勇が喜ぶだろうから。
もう日差しは駅の建物に遮られているのに、真夏の気温はまだ高い。じっとりと背中に汗が滲むのを感じながら、駅の入り口から出てくる人々を眺めていた。
『何で東口?』
『俺がいる』
両手を祈るように組んで目をウルウルさせた猫のキャラクターのスタンプが送られてきて、どういう意味なのかは分からないがとりあえず嬉しいらしいことだけ受け取っておく。それで、つい惇嗣も口が緩んだ。駅前でスマホを見下ろしてにやけているのは不審者でしかないので、口元を手で覆って隠す。
『はよ来い、暑い』
『えきついた』
どうやら喜勇は急ぐと変換を忘れるらしい。返信が来てから顔を上げた惇嗣がスマホを尻のポケットにしまって自転車のスタンドを上げた頃、駅の入り口から喜勇が走り出てきた。くすんだグレーの半袖シャツに、軽い素材の黒いワイドパンツとサンダル姿だった。背が高くてスタイルが良く、おまけに顔もなかなか整っている男だなと、遠目に見て改めて思う。
そんな男が、ネットに入った大きなスイカを持ったまま走ってくるのはなかなかに目立つ。惇嗣のそばを通り抜けていった女子高生らしい女の子たちが、奇異の目を向けていた。
「おー、お疲れ。スイカでかいな」
「む、迎えに来てくれた?」
「晩飯も買いたいし。ほら、あの総菜屋」
「うん」
スイカをカゴにいれて、自転車を喜勇の方に傾ける。素直にハンドルを手に取ったのを見て、自分は荷台に腰を下ろした。
「ほら、お前漕げ」
「は?お前のチャリじゃん」
「重いスイカが不憫だろうと迎えに来てやったんだろ。運転はお前だ」
さして不服でもないのか、喜勇は自転車に跨るとペダルを漕ぎ始める。ギィ、と軋む音を立てて自転車が進みだした。
「漕ぎにくい。サドル上げていい?」
「ダメに決まってんだろ。俺のチャリだぞ」
背中を丸めてペダルを漕ぐ喜勇の背中はさらっとしていた。風を受けてはためくシャツの素材のせいだろう。触ると少し冷たくて、けれどすぐにその下の体温がじんわり伝わってくる。制汗剤の良い匂いに混じって、喜勇の汗の匂いがした。セックスの時にいつも嗅いでいる匂いだ。男の汗なんて気持ちいいものでもないのに、嫌な匂いだと思ったことがない。セックスと結びついているせいか、何だかちょっとソワソワする。
「何、危ないからちゃんと掴まってろって」
背中に手を当てたままの惇嗣を、赤信号で止まった喜勇が振り返っていった。目が合って、ギョッとした顔をして慌てて前を向いたから、惇嗣は首を傾げた。
「何だよ」
「別に、何でもないけどさ。飯何買う?酒も買ってくか?」
「買ってくぅ!」
「明日も飲むのにな」
「それはぁそれ、」
「これはぁこれ」
二人で言い合って笑う。信号が青になって、グン、と自転車が勢いをつけて進み始めた。突然の勢いにぐらついて、惇嗣は喜勇の腰に腕を回す。荷台よりサドルの方が高いせいで、喜勇の腰の少し上あたりが目の前にあった。
「身長差がマジでえぐい」
「はあ?」
「うちのねーちゃんがお前の事イケメンだってさ」
「そりゃどうも」
「自覚あんのかお前」
「お世辞だろ」
やさぐれた声で絡むが、喜勇は気にも留めていないような口調で言い捨てた。自分の顔がイケメンの部類に入っていることを実感していないらしい。中身を知れば知るほど残念なイケメンになっていくと愚痴っていたのは、大学生の頃の女友達だ。
「マジだよ。ねーちゃんはお世辞言わねえ」
「へえ。……んで、お前もそう思ってた?」
「あー……、まぁ、思ってた」
ああそう、そうなの。なんてちょっと弾んだ声で言うから、既婚ではあるが一応女である姉からの評価より、自分からの評価が嬉しいのかとツッコミかけて口を噤んだ。惇嗣の事が好きな喜勇にとってはそうなのだ。それは何だか悪くないなと、惇嗣は思った。
旨い飯、美味い酒、気心の知れた友人、盆休みで疲れも取れて睡眠もばっちりとなれば、あとに残るは性欲だ。
きっとセックスする。喜勇にその気がないなら誘うつもりでいた惇嗣は、隣に座る喜勇を眺める。膝を立てて座っている喜勇は、シャワーを浴びて惇嗣の部屋着に身を包みすっかりリラックスモードだ。両膝の上に腕を置いて、片手でビールの缶を揺らしながらスマホをいじっていた。
そう言えば、セックスするようになってから喜勇は隣に座るようになった。今まではベッドを背凭れにして床に座っている惇嗣の、テーブルの角を挟んで右隣に座っていた。そこはちょうどテレビと正面になる位置だった。今では、肩が触れ合う程隣に座っている。身じろぐ度に人の体温が伝わる距離にいるのに、普通に落ち着いて過ごせているのも変な感じだなと今更思った。
姉の言っていたイケメンという言葉を思い出す。前髪が眉のあたりまで覆い隠してしまっているが、目は二重だ。大きすぎず、小さすぎず。真顔だと怖い、なんて高校生の時にクラスの女子が言っていたのを思い出す。怖い?喜勇が?とその時は茶化して笑ったが、目じりがちょっとだけ上がっているからそう思うのかもしれない。大学生の時には、口元がどうのと言っていた女の子もいた。歯並びがいいから育ちが良く見えるとか、口が大きくて下唇が厚いからそれがエロいだとか。笑うとぱっかり口が開いて目じりが下がって台無しだが、そうなると途端に人懐っこそうな顔になるからそれで何人の女子が気を引かれていたか。
加田くんの連絡先を教えて、とちょっと気になっていた女子にまで言われてヘコんだのは、実は惇嗣だけではない。今でもつるんでいる連中はみんな一度はそのエピソードを持っているし、離れていったヤツの中には喜勇と喋ったこともないはずの彼女が心変わりしたなんて爆弾もある。喜勇はそれをほとんど知らない。ちゃちなプライドだったり、気遣いだったりする。惇嗣は、半分半分の理由で言わないでいた。
その喜勇が、自分にチンポをしゃぶられて善がっていたのを思い出す。本人の談では惇嗣のテクニックよりも、視覚からくる興奮が強いなんて言っていたから、繋げていないディルドで練習中だ。あの時の喜勇の顔は確かにエロかった。肩で息をしながらうっとり目を細めて、でも食いつかんばかりにこっちを見ていた。笑顔でも真顔でもない、欲を隠しもしない性的な顔だった。長い指が巨根を包み込んで惇嗣の動きに合わせて扱いてる様は、普通の男のオナニーなのに目が離せなかった。
「何、惇嗣」
「え」
「何かめっちゃ見てるから」
喜勇が視線だけでこっちを見る。その眼の奥に自分と同じような欲情の兆しがあるのに気付いて、惇嗣が身を乗り出して体を傾ける。喜勇の方も惇嗣の意図に気付いたようで、目を合わせたまま顔を近づけてきた。
唇同士が軽く触れ合って、すぐに開く。ビールの苦い味がする舌を絡め合いながら、目を閉じた喜勇がローテーブルの上に缶とスマホを置く音が聞こえた。伸びてきた腕が惇嗣の腰に巻き付いて引き寄せられるまま、惇嗣は喜勇の膝の間に招かれる。
「ぁむ、ん……んふ」
喜勇の手が惇嗣のTシャツをたくし上げていく。脱がされながら脇腹から胸元、脇の辺りまで指の腹で優しく撫で上げられ、くすぐったさに身が竦む。そのまま背中の方に回った指先が爪で軽く肩甲骨の辺りを引っ掻き、うなじを痺れるような刺激が駆け上がっていった。刺激は頭の中で熱に変わり、惇嗣の意識を少しずつ溶かしていく。
「っ……はぁ、あ……♡」
爪先が触れるか触れないかの強さで背筋を撫で下ろされ、尾てい骨の辺りを擽られてため息に声が混じった。唇を離した喜勇がこっちを見ながら、親指で惇嗣の乳首に触れる。少しざらついた指の腹が小さく柔らかい乳頭を圧し潰し、ゆっくりと円を描いた。
「乳首感じる?」
「ッ、あんまりやってない……」
そう言いながらも、既にジリジリしたもどかしい何かが込み上げている。指先を押し込まれると、電流みたいな痺れが走って腰が揺れる。顔を歪める惇嗣を見て、喜勇がにんまりと笑った。
「アナル好きな奴って乳首も感じるらしい」
「どこ、情報よ……ッ」
「ネット」
「マジかよ、ッぁ゛!♡」
じゅっ♡と音を立てて吸いつかれ、思わず腰を浮かせる。乳首が勃起して、押し付けられた喜勇の舌を健気に押し返した。
「こんなちっちぇえのに勃ってる」
「っん♡ん♡」
爪の先で弾かれ、舌で押し潰され、舐められて唇で吸い付かれて、痛みにも似た刺激が何度も何度も押し寄せてくる。そのたびに腹の奥から甘い疼きが湧き上がってきて、段々と下腹の方に熱が集中していくのを感じる。喜勇の大きな手で服の上からチンポを包まれて、勃起しているのに気付いた。
「ぅあ゛っ♡は、ぁ……っ♡」
「こっちも勃ってんね」
「もうぬぐ、から」
惇嗣が短パンに手をかけながら言うと、喜勇もベッドに上がって服を脱ぎ始める。綺麗に引き締まった体だと思うのは、こうしてセックスするようになってからだ。それまでもガタイがいいな、筋肉ついてていいなと思ってはいたが、綺麗だと感じたことはなかった。
前髪を邪魔そうに手で払っていた喜勇は、ベッドの下からボケっと見上げていた惇嗣に気づいて両手で胸を隠した。勃起しかけているチンポではなく、なぜか胸だ。
「やだぁ、エッチ」
「萎えそう」
「ちょ、待って待って」
手を伸ばして腕を掴んでくるから、引っ張られるのに従ってベッドの上に乗り上げる。勝手知ったる他人の家とばかりに引き出しを開けてローションやらコンドームやらを出してくる喜勇が、寝転んだ惇嗣の横に寄り添って寝そべった。
「何かめっちゃ見てくるけど言いたいことでもある?」
「……、いや、別に」
「そ?あ、ケツ洗った?」
「洗った。でも洗っただけでローション仕込んでない」
にんまり、と口が裂けそうなほど喜勇が笑う。これまでは、惇嗣が自分で直腸の洗浄から尻穴の慣らし、ローションの仕込みまで事前にしていた。手っ取り早く巨根でアナルを気持ち良くしてほしいと思う即ハメ希望だからというのと、男相手にちまちました前戯も面倒だろうという気遣いからだ。アナルオナニーの手順とほぼ変わらないので惇嗣の負担は何にも変わりないのだが、魔法のディルドで楽しんでから数日後に喜勇から申し出があった。
曰く、洗浄の段階から参加したい、と。断固として拒否だ。長い友人関係の中で、あれほどきっぱりと喜勇の申し出を断ったことがあっただろうかというぐらいにはバッサリ断った。そっちの趣味は今の所ない。そもそも参加ってなんだ。話し合いの結果、お互いが譲歩して惇嗣は洗浄だけ行う、それ以降はセックスに含めたいという喜勇の希望を通した。ただし、惇嗣が即ハメを希望するときはその限りではない。あれはあれでエロくて良いと喜勇も言っていたし、今でも数回に1回ぐらいは即ハメしてもらっている。
「明日夜まで何もない?」
「ないねえ」
「じゃゆっくりできるな」
このゆっくり、というのが喜勇による長時間のケツ穴弄りであることは惇嗣も分かっていた。人より大きなチンポを突っ込むためには、指での愛撫で太さに慣らすことが必要不可欠になる。それはケツも膣も同じことだ。だからなのか、喜勇は手マンに時間をかける。惇嗣のケツ穴を長時間捏ね繰り回してグズグズのトロトロのケツマンコにしてからようやくその巨根を突っ込んでくれる。その間、惇嗣はひいひい鳴いて前後不覚で乱れるしかなかった。
「ん……できる♡」
思い出すだけでジュク♡とケツの奥の方が疼いて、声に媚びが混じる。下腹部を撫でる喜勇の大きな手が惇嗣の目の前でローションを手に出しているのを見ながら、片膝を立てて足を開いた。ヌルヌルした手が惇嗣の勃起チンポを一撫でして、尻の谷間に滑り込んでくる。
「ぁ……♡」
「痛かったら言って」
「ん」
指一本などどうってことないのに、喜勇は律義にいつも言った。窄まったアナルを人差し指の腹で撫でてローションを擦り付け、刺激にヒク、慄いた隙に指先を食ませる。咥え込むことをとうに覚えている肉の輪が緩んで指先を飲み込もうとするのを避けて一旦引き、皴をなぞってローションの絡む小さな音を響かせた。
「っふ……♡ぁ、う♡」
「入れるよ」
「うぅ゛、んッ……あぁ゛……♡」
一声かけてから、長い指が括約筋を押し拡げて入ってくる。痛みも違和感すらもない、喜勇の指がアナルを拡げるさざ波のような快感だけで腰が震えた。何度もしているうちにすっかり把握された気持ちのいい場所を触ってもらえると体が期待して、チンポの先端からドプリ♡とカウパーが溢れる。
「あ♡……ッぁ゛ー……♡」
前立腺を指の腹で揉まれて、声が上擦った。震えるだけだった腰が明確に指を追いかけて上がり、動きに合わせて揺れる。まださほど大きくない快楽に焦れて横にいる喜勇に身をすり寄せると、下になった方の左腕で頭を抱え込まれる。息を吸い込むと自分と同じボディソープの匂いと喜勇の体臭が混じって、頭の奥が痺れた。キュウ♡とアナルが喜勇の指を締め付け、その締め付けを掻き分けるように動かされて、快感が腹の中に溜まっていく。
「あ゛っ♡ぁ゛ーっ……はぁッ♡」
「柔らかくなってきた。二本目入れるよ」
「……ッぉ゛♡ふ…っ♡」
中指も押し込まれ、二本の指がアナルを拡げていく。括約筋がさっきより大きく拡げられる感覚に、惇嗣は喜勇の腕の中で身悶えた。
「ぁ゛♡はッ……ぅう゛、ん゛♡」
二本の指の腹が腸壁を優しく撫でていく。奥まで押し込まれ、引き抜かれる。繰り返されてもっと強い刺激が欲しいような物足りないような感覚に腰をくねらせると、宥めるように喜勇の手が背中を撫でた。その手つきは優しいのに、アナルをほじる指の動きは容赦がない。抜き差しだけでなくぐるりと指が回転し、滑りを助けに括約筋に太さを馴染ませていく。
「あ゛ぉ゛♡ぉ゛、お゛っ……んッ♡」
「痛くねえ?」
「ないぃ……♡」
痛くないどころか気持ちいい。喜勇の指に擦られるだけで快感が湧き上がって、腹の内側を熱くする。もっと強い刺激が欲しいと腰を揺すると、指が引き抜かれた。
「ぅあ゛っ!♡はぁ……はーっ……ぉお゛ッ!♡」
急になくなった快楽に腰が揺れる。物欲しげにヒクつくアナルにローションが足されて、再び二本の指がさっきより強引に押し入ってくる。ぐぅ、と前立腺を押し上げられて欲しがっていた通りの強い快感に尻が浮き、だらしなく先走りを垂らしていたチンポが腹の上で跳ねた。
「お゛っ♡ぉ、あッ!♡ぁう゛ぅ……ッ♡」
二本の指で前立腺を圧しながら揺すられ、その度にバチバチと強い快楽が弾けて頭の中を掻き回した。縋るものを求めて喜勇の胸元に額を押し付け、アナルをほじる腕を掴む。制止するためではなく、先を強請ってだ。
「んぉ゛っ!?♡♡ぉ゛っ♡」
アナルをほじくる指が三本に増えて腹の中を満たした。とん♡とん♡と前立腺を圧すだけだった指が、再び抜き差しを始める。腸壁を擦り、前立腺を引っ掻き、アナルを拡げる。のちにこの場所を蹂躙するチンポの動きを明確に示唆した動きに、指を締め付けて媚びるのを止められなかった。
「お゛っ!♡ぉお゛ッ!♡♡んぐぅう……ッ♡♡」
「気持ちい?♡」
「ぉ゛ッ!♡ぎ、もぢぃい♡ッぎも゛ぢぃ♡」
腹の中でグズグズに蕩けた肉が喜勇の指に吸い付く。ローションと空気が混ざってじゅぷ♡じゅぐ♡と上がる下品な音が耳まで犯される感覚に陥って、頭の奥が興奮に浸されて蕩けていった。
「あ゛っ♡はぁ♡ぉ゛う、ん゛っ♡」
「もうケツマンコトロットロじゃん」
「んひ♡ッひぁ゛…ぁ゛う゛♡う゛ッ♡」
動きは激しさを増すのに、確実に惇嗣の良い所を引っ掻いては圧し上げてくる。ベッドに着いた足の爪先がギュウと丸まってシーツがよれ、引いては寄せてくる快楽にカクカクと腰が揺れた。
「お゛ッ…♡あ゛っ♡あ゛ーッ♡♡あ゛っ♡ッお゛…!♡」
じゅっぷ♡じゅぽ♡とひっきりなしに音が上がる。腹の奥から絞られるような快感が込み上がってきて、その感覚を捉えようと強く目を閉じた。キンタマがせり上がって、触られてもいないチンポがビクビク♡とのたうつ。
「んん゛ッ♡ふぐっ…♡はっ……♡はっ……♡♡ん、お゛ぉお♡♡」
「イキそう?」
「お゛ッ♡い゛ッぐ…♡♡でるっでる♡お゛っ、おぁ゛……んぅ゛ッ!♡」
抱え込まれた手で顔を上げさせられ、唇が塞がれる。じゅる♡と舌を吸われるまま突き出し、粘膜同士が擦れ合う気持ち良さに酔いしれた。絶頂間近のキスは頭がバカになって、何も考えられなくなる。
「ん゛ッ♡ぉん゛っ♡んぅ゛ッ♡♡う♡ん゛ッ!♡♡ぃぐっ♡んんぅ゛んんん゛ッ――!!♡♡♡」
目の前が弾けるように真っ白になり、大きな波に体が押し上げられる。ビク♡ビクッ♡♡と体が跳ね、筋肉の収縮に合わせてトプトプと勢いのない射精が続いた。長く尾を引く絶頂に強張る体を宥めるように背中を撫でられながら、惇嗣は快楽の余韻に浸った。アナルから指が抜かれ、唇も離されてようやくまともに呼吸ができるようになる。
力強い腕に抱えられたままの体勢が、男なのに同じ男の指でケツをほじられて無様に射精させられたのを実感させられる。被虐的な快感に頭の芯が痺れて、またどぷり♡とザーメンが溢れた。
「あぁ゛……♡あ゛ー……ッ♡♡」
「……すっげえエロかった」
低く押し殺した声が耳元で聞こえて、ぼやっとしていた視線を喜勇に向けた。真顔が怖いと言われ笑うと人懐っこく崩れる顔が、興奮を露にしてこちらを見下ろしている。雄の顔にキュン♡と腹の奥が疼いた。
「……ッ♡ッ♡あ、はぁ、♡もう♡うぅ゛う♡喜勇♡あ゛っ、あ♡」
「んー、まだ」
「お、ひっ♡♡うぅ゛う~~ッ♡ぎッ♡♡ぃ゛う…ッ♡もぉ、ッお゛……!♡チンポ♡ぉ゛♡♡」
あれからもう一度トコロテンイキし、ザーメンを無駄撃ちさせられた。それでも入れてもらえず喜勇が望むまま、仰向けに転がされ自分で両膝を持ち上げて足を開いた惇嗣は、グズグズと泣きながらチンポを強請っていた。三本の指を咥え込んだアナルは真っ赤に熟れた縁を覗かせ、喜勇の指に絡みついては押し退けられ痙攣してしゃぶり付いている。だが指では届かない奥が疼いて切なくなった惇嗣が尻を揺すって訴えても、喜勇は手マンを止めなかった。
「お゛ッ♡んぉ゛っ!♡♡は、はやくっ♡チンポぉ……ッ!」
「んー……♡」
「ん♡ッんぁ♡……ふ、ぅ♡んん゛♡」
チンポの代わりにキスが与えられ、差し出された舌をしゃぶり唾液を飲み下す。体を寄せている喜勇のチンポに手を伸ばすと、先走りが滲んでいる亀頭に指を這わせて確かめバキバキに硬くなった竿を握り込んでしごいた。
「んッ♡まだダメだって」
「ぁ♡あ゛♡ちんぽ♡」
息を詰めた喜勇が唇を離して腰を引いたため、チンポは惇嗣の手の中から逃げていく。名残惜しく指先を口に含み、喜勇の先走りを舐め取った。
「あと一回イったら入れるから」
「んぉ゛っ!?♡♡ぁ゛♡お゛っ!♡♡」
指三本でトロトロのアナルをほじくり返され、肉壁を擦られ、前立腺を捏ねられる。熱い腸壁で指を締め付けると、腰が蕩けるような快感に頭が痺れた。
「あ゛っ!♡んぉ゛ッ!♡♡お゛ッ!!♡♡」
「すっげえ声」
「ぎもぢぃい♡ぁ゛っ!♡きもぢぃい……ッ!♡」
アナルはすっかり喜勇の指に躾けられ早く奥まで突いて欲しいと焦れるのに、体は喜勇の愛撫に応えてまた少しずつ昇り詰めていく。甘い熱が腰から広がり、メスイキの予感に仰け反った体が震える。
「んぉ゛っ♡おッ!♡♡あ゛ぁッ!♡♡いぐっ、またイグ……ッ!!♡♡♡」
喜勇の指の動きに合わせて腰がカクつく。ぐぽ♡ぐぽ♡と下品な音を立てて指が出入りし、前立腺を揉み込まれる度に頭の中が白く染まっていく。惇嗣の弱い所を知った喜勇が、イかせるための動きで責め立てる。
「お゛っ♡お゛ぉっ!♡♡イグッ……イッぐ!♡♡♡んお゛っ!♡い、ぐぅう……ッ!♡♡♡」
「いいよ、イって」
喜勇の低い声が鼓膜を震わせた。その瞬間、腹の奥から熱がせり上がって一気に弾ける。全身に広がった熱はとんでもない甘さを伴って、惇嗣を絶頂感と多幸感で満たした。
「あ゛ぁあ゛あ゛ッ――!!!♡♡♡♡」
制御しきれない衝撃に、爪先が伸びきって強張る。じゅぷん♡と喜勇が指を抜いてもメスイキは続き、内腿を震わせて大きな快感に身悶えた。ローション塗れの手で震える内腿を撫でられ、そこから走る快感にまた体が跳ねる。さっきまで頼りない射精を繰り返していた惇嗣のチンポは、萎えてくったりとしたままだ。
「あ゛っ!♡ぉ゛、ひッ♡♡んぉお゛……っ!♡」
「メスイキ上手くなったな」
ベッドを軋ませながら四つん這いで離れていく喜勇に気を向ける余裕もなく、天井を見上げたままメスイキ後の甘怠い余韻に身を浸した。だがまだ足りない、腹の奥が疼いて仕方がない。焦れる体で寝返りを打ち、俯せになると枕を抱え込んでシーツに身を擦り付ける。
「惇嗣」
喜勇の声に顔を上げて振り返ると、ベッド脇に座った喜勇がディルドを握っていた。以前に惇嗣が使った、あの魔法のディルドだ。伸びてきた手が惇嗣の髪の毛を掻き上げて、チク、とした小さな痛みが走った。
「ぃッ、なんだよ……♡」
「こないだのお礼しようと思って」
喜勇の手に握られている髪の毛が、ディルドにセットされる。くにゃん♡と力を失って垂れたディルドを掴まれて、自分の腹の下にあるチンポを握られた感覚に息を詰めた。
「ッ♡」
喜勇の手の中で優しく揉まれ、亀頭を手の平で擦られる。ゾゾっと背筋を這い上がっていく痺れは、求めていたものとは違うが確かに快楽で腰がくねった。
「ぁう♡ぁ♡っ……ふ、ぅん゛♡」
「お、勃ってきた」
「ん゛♡ぁ、はぁあ……ッ♡」
喜勇に触られてムクムクと起き上がってくるチンポを、指の輪で優しく扱かれると腰が上がる。身を捩る惇嗣の目の前で、喜勇が口を開いてディルドの先に舌をべったり押し付けた。口内の熱さも、吹きかけられる吐息の感覚もまざまざと感じさせられて、俯せのまま膝を抱えるようにして身を丸める。
「あッ♡んぅうう゛…ッ!♡」
誰かにペニスを咥えられる感覚は久々だった。ヌルヌルした粘膜で敏感な部分を擦られる快感と、舌先で舐め回される刺激に奥歯を噛み締めるが声が堪え切れなかった。彼女にしてもらった時はこんなに声が出るようなことはなかったのにとふと思うが、じゅるるぅ♡と音を立てて吸われると些細なことは押し流されてしまう。
「んぉ♡お゛ッ♡♡」
喜勇に手で愛撫されたことはあったが、それとはまた違う刺激に腰が跳ねる。裏筋を舐められ、亀頭をしゃぶられ、鈴口を舌先でほじくられると堪らなかった。目を閉じて刺激に集中してしまいたいとも思うのに、目の前で自分のチンポに舌を這わせてはしゃぶりつく喜勇から目を離せない。視覚からの刺激が強いと、喜勇が言っていたのを実感させられる。
「あ゛っ♡ぁ゛うッ♡ん、ぉ゛♡ッぃ゛あ゛…♡」
唾液にまみれた唇で竿を扱かれ、惇嗣のチンポがビクついて先走りをシーツに垂らす。抱え込んだ膝の間のチンポを手で握り込むと、しゃぶられている感覚と重なった。このまま扱いてしまおうと手に力を込めた瞬間、喜勇の口からディルドが引き抜かれ射精を取り上げられたような気持ちになる。
「ぁに…?♡なんでッ♡」
「ケツ寂しそうだし、これ入れて」
喜勇に言われて、シーツにチンポを擦り付けて床オナをしていた自分が、いつの間にか尻を上げていたのに気付いた。目の前でディルドにローションが垂らされ、とろんとした冷たい感触が亀頭にまとわりつく。
「あ♡」
「ほら、前に自分であっちのオナホ使ったって言ってただろ。見せて」
「あ♡ぁ゛♡ッ、ぉ゛……はぁ゛あ゛あ゛ぁ……っ!♡」
柔らかく解されたアナルに何度かディルドの先端を擦り付けられ、それを追いかけて腰が揺らめく。喜勇がゆっくりと力を込め、にゅぐ♡と窄まった縁を押し退けて潜り込んでくると、自分のチンポにも蕩けた粘膜が触れ亀頭を包み込んだ。チンポとアナルから同時に込み上がる快感に、枕を抱え込んだまま背中を反り返らせる。
「ッはぁ♡はーっ……♡ぁ、ふ…ッ♡」
「ケツに入れて欲しかったんだろ?ほら、自分で持って」
「ん……♡」
喜勇に促されて、震える手でディルドを掴む。ずぷ♡ぬぷぅう♡と奥まで押し込んでいくと、腹の中が満たされ息を吐いた。腸壁が自分の勃起チンポを締め付けては緩み、奥へ誘い込もうと蠢動しその度に腰を蕩かせる熱いものが広がる。チンポを押し込んでいるだけなのに細やかに扱かれ、背筋をゾワゾワとした痺れが駆け上がっていった。
「ん゛っ♡ぉ゛ッ!♡♡お゛っ♡ぁ゛……ッ!♡」
「動かさないと気持ち良くなんねえでしょ」
入れたまま身を震わせて喘いでいる惇嗣の手首を掴み、喜勇が雑にピストンを開始する。単純にアナルと直腸を擦るだけの雑なピストンでもたっぷりと時間をかけて解されたせいで十分過ぎるほど気持ち良くて、突き上げられる度に腰がガクついた。
「お゛っ!♡ぁう゛ッ!♡♡んぉッ!♡♡」
「どう?自分のケツマンコ」
「ぉ゛ッ♡ぉほ、ぉお゛……♡ッぃ゛う゛♡っんぁあ゛……♡」
ディルドにアナルをほじくられながら、チンポもアナルに扱かれて枕に顔を半分埋めて悶える。亀頭が指よりも深い部分を抉ると、高く上げた尻たぶに力が入る。引き抜かれるとブルブル震えてため息のような声が漏れた。
「う゛ん゛っ♡ぎもぢぃい……ッ!♡♡♡ケツマンコ、きもぢぃい……っ!!♡♡♡」
「じゃあ俺ももう入れさしてもらおっかな」
「は、ぇ?♡♡」
ぐりゅ♡とディルドの入ったアナルに熱い塊が押し付けられた感覚がして、惇嗣は慌てて後ろを振り返った。だが喜勇は惇嗣の傍で座り込んでいるだけで、アナルには何も押し付けられていない。座り込んでいる喜勇の足の間には、以前使った魔法のオナホが置かれていた。
「っおまえ♡それ」
魔法のディルドと一緒にベッドの下に突っ込んでおいたから、さっき一緒に取り出したのだろう。喜勇が自分のチンポを持ってオナホに擦り付けると、惇嗣のアナルにもプリプリした亀頭が擦り付けられる感覚がする。いつの間に繋げたのかと思っている間に、ぐにゅ♡とオナホへの挿入が始まる。
「っギ……ぃい゛ッ!?♡♡」
「うわ、キッツ。惇嗣、なるべく力抜いてて……」
「は♡ぁ、ぐぅ……!ぉ゛ほ、おぉ゛お゛ッ!♡」
ただでさえ自分のチンポが挿入されているアナルが、更に押し拡げられていくのが分かる。実際に拡げられているわけではないから痛みもなく、皮膚が裂けるようなこともない。だが今まで感じたことのない圧迫感が下腹部からせり上がってくる。押し入ってくる喜勇のチンポは、狭い肉筒の中で惇嗣のチンポにも押し潰さんばかりに擦り付けられた。
「お゛っ!♡ぉ、んぉお゛……ッ!!♡♡」
喜勇のチンポが腸壁を抉り、ディルドに擦り上げられている前立腺を圧する。腹の中で二本のチンポが擦れ合い快感を生み出していく。その快感に抗う術はなく、ただ喘ぐことしかできない。
「お゛ぁあっ♡♡ぉ゛お゛っ!♡ッ!!♡♡♡」
「はー……♡きもちい……♡」
チンポを二本咥え込むアナルの感覚や、腸壁と巨根に押し潰されそうなチンポの気持ち良さ、何より散々求めた奥の奥まで抉ってくる亀頭の感触も全部が一気に惇嗣を苛む。引きちぎらんばかりに枕を握り締め、全身で快楽を受け止めるだけで精一杯だった。
「お゛っ!♡ぉ゛お゛……ッ!!♡♡♡」
「惇嗣、もうちょっと力抜いてッ、じゃないと……♡」
「む゛り、ぃい゛……ッ!!♡♡♡」
「あー…♡ダメだ、動くぞ」
アナルが快感を貪って締め付けるのを止められない。締め付ければそれが大きな快感を呼んで、腹の中からもチンポからも込み上がり、頭の奥で弾けては惇嗣をおかしくさせていく。どうにもできずに身悶えるしかないのに、突如として喜勇のチンポが引き抜かれていって悲鳴じみた声が迸った。
「お゛っ♡ぉあ゛っ!♡♡んほぉおお゛……ッ!!♡♡♡」
「は、ぁ……んッ♡」
亀頭だけを含ませたところで止まったチンポが、ばちゅん!♡と一気に奥まで突き入れられる。オナホに対して行う乱暴な挿入に、頭が真っ白になるほどの衝撃と快感が惇嗣の体を突き抜けた。
「んぎッぃい゛♡♡おっ♡ぉお゛♡♡ッお゛…!!♡あ゛、ッぁあ゛ああ……♡うう゛ぅう……♡お♡お゛♡お゛♡ッぉお゛お゛♡♡」
喜勇は惇嗣の反応に構うことなく腰を動かし始める。音を立てて腰を打ち付け、ぐりゅ♡ぐりゅ♡と亀頭で媚肉を掻き回し、かと思えば動くことさえままならない惇嗣のチンポにわざと擦り付けるような動きを見せた。
「ぉ゛お゛♡っお゛が♡お゛がじぐな゛る゛、ッがら゛ぁ゛♡♡ぁ゛はッ♡んぐぅ゛う゛……ッ!!♡♡」
「んッ♡は、ぁ……っ」
喜勇のチンポが奥を抉る。圧倒的な力でピストンされるチンポと、自分のチンポでアナルをほじくられる快感。そしてチンポを腸壁で扱かれる感覚も合わさって、もう何が何だか分からない。
「お゛っ!♡♡ぉお゛ッ!!♡♡♡いぐっ♡いぐぅう……っ!♡♡♡」
「……ッ俺もイきそ♡」
「ひぐッ♡♡ぎッ♡ぅ゛ぐ……!!♡♡っほ、ぉ゛♡♡♡……おぉおッ――!!♡♡♡」
急激に引きずり上げられるメスアクメに、惇嗣は目を見開いて全身を突っ張って仰け反った。ケツに咥え込んだディルドを支えていられずに手を離して両手で枕を握り締め意識を蕩かせるほどの法悦に浸る。絶頂の反動で不随意に収縮するアナルからディルドは抜け落ち、残った喜勇のチンポを絞り上げるように締め付けた。
「っぐ、ぅ……ッ!!♡」
その締め付けに堪え切れず喜勇も射精する。大量の精液を腸壁に叩きつけられながら、惇嗣は全身を痙攣させて絶頂から降りてこられない。
「ぉ゛ほッ♡♡お゛っ!♡♡んほぉおおぉおお……ッ♡♡♡」
「はー……ッ♡」
ぷしゅ♡と弱々しい音を立てて、惇嗣のチンポから潮が迸った。それをきっかけに、最後の一滴まで飲み込ませようと腰を揺する喜勇の動きに合わせて、壊れたようにぷしゃ♡ぴゅ♡と連続で溢れ出す。
「らめ♡きゆぅッ♡こし、とめて♡」
「潮吹いてんじゃん」
気付いた惇嗣が慌てて腰を上げるが奥まで突っ込んで腸壁にザーメンを擦り付けられてしまうと、チンポからは潮が迸りいまだ収まらないアクメの余韻に絡め取られ満足に動けない。
「気持ち良すぎて潮吹いたんだ?」
「ん゛っ♡ほぉ゛……!♡」
「お前もう完全にメスじゃん。エッロ」
オナホからようやく引き抜かれた喜勇のチンポは、さっき射精したばかりなのにビタン♡と腹につくほど反り上がっている。亀頭にザーメンをまとわりつかせたまま血管をバキバキに浮き立たせたチンポに、惇嗣の腹の奥がまたじくじくと疼き始めた。
「惇嗣、こっち向いて。俺まだしたい」
「ん……♡」
力の入らない体をなんとか反転させ仰向けになると、惇嗣は自分で膝裏を抱えて大きく開いた。クパ♡クパ♡と、ローションにまみれてヒクつくアナルに喜勇の視線が突き刺さる。
「きゆう♡おれのケツマンコ、使って……♡」
堪え切れない性欲に生唾を飲み込むのは二人とも同じで、メスの悦びを覚えた惇嗣は圧倒的なオスに屈服させられるのを待ち望む。見下ろす喜勇の表情も、己のメスを屈服させんとするドロドロとした情欲を惜しげもなく晒していた。
興奮すると後先考えずに煽るような言葉が口をついて出る癖を、もう少し何とかした方がいいのではないかと惇嗣は冷静になった頭で思っていた。所謂賢者タイムというやつだ。クーラーでキンキンに冷えた部屋で、喜勇が後片付けをしていた。
あの後も散々盛り上がって、気が付いたら真夜中だった。惇嗣は数えきれないほど絶頂を極め、潮を噴いた。喜勇が事後に脱水を心配するほどだった。その喜勇も夥しい量を中出ししたせいで、ザーメンをひり出すのにもう一回洗浄をする羽目になった。
「あーあ……こりゃダメだ」
「嘘だろ、もう3時半……布団買いに行く元気ないんだけど」
ローテーブルに凭れている惇嗣の目の前で、喜勇がベッドの上に敷かれた布団を手の平で圧す。ぐじゅ、と濡れた音がして染み出る液体は、タオルで吸い取れるほど少量ではない。とりあえず布団を畳んでバスルームに持って行く喜勇と会話をしながら、惇嗣は大きくため息をついて下腹を撫でた。
「次からさ、何か敷いた方がいいな」
「何かって?」
「防水のなんか、ペットシーツとか」
「ああ……」
落胆のため息ではない。確かに布団がダメになったのは惜しいが、そのせいではない。メスイキを繰り返した体が、いまだふわふわと落ち着かないからだ。甘い怠さが腰にわだかまり、脱力感が全身を包んでいる。
「あ、でもマットレスは大丈夫そう」
「もうしばらくはそれでいいか」
「休み終わるまでに買いに行こうぜ」
戻ってきた喜勇が、敷布団の下のマットレスを撫でて言った。古くなったマットレスが気に入らなくて暫定的に敷布団を敷いて凌いでいたのが功を奏したようで、とりあえずの寝床は奪われずに済んだようだった。
「ほら惇嗣、もう寝よ」
「んー」
伸ばしてきた手を掴んで、惇嗣は引っ張られるままベッドに上がる。真夏でも何か体にかけていないと眠れない惇嗣のために、喜勇がタオルケットをかけてくれた。背中から抱え込んだ喜勇の足が絡んで、体の背面が人の体温で温められる。
「暑い……」
「クーラー効いてるじゃん」
腹に回った手が惇嗣の下腹部を撫でて、その手の大きさと熱さに、ゾ、と熱が燻るのが分かった。うなじの辺りに頬擦りされて、燻った熱が背筋から脳天を這い上がっていく。
「今日はもうしないって……」
「さすがに俺ももう勃たない。もう眠いし」
「ん、」
喜勇の声が眠気に溶けていくのが分かった。湿った低い声を耳元で聞かされ、惇嗣も意識がぼやっとしてくる。暖かい喜勇の体に包まれる安心感が、優しい眠気を誘った。
「明日さ、」
「ん」
「スイカ、皆で食おっか……」
頷いたかどうか、惇嗣は覚えていない。心地よい眠りに落ちる方が先だった。
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