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第5話(※)

「馬鹿馬鹿、惺厳(せいがん)の馬鹿野郎〜!ごめんなさい、おばあちゃん!呪うなら惺厳だけ呪ってください!俺は無実です、被害者です!」 「うるさいよ」 「バチ当たりもいいとこだぞ!おばあちゃん泣いちゃうぞ!お前が知らないだけで死んでも泣くんだから!お空で泣いてんだからな!」 志水日晴鳥(しみずひばり)が泣き喚くのには訳があった。 先ほどまではしおらしく、山女惺厳(やまめせいがん)にされる優しい愛撫に翻弄されては涙を浮かべ鳴いていたが今は状況が違う。 最初、怒りに任せて後ろ側に指を挿れられた時は余りの痛みと拒絶に耐えられなかったが、今は拒絶はないにしろやはり慣れないことに痛みは治らなくて。 受け入れたいのに受け入れられない自分を歯痒く思いながらも不可抗力なそれに志水はどうすることもできなかった。 すると、山女は何かを思いついたように立ち上がり、居間に消えると手に何かチューブに入った薬のようなものを持って帰って来た。恐る恐る志水は口を開く。 「それ、なに?」 「おばあちゃんの軟膏」 さらりと真顔で返され志水は口を大きく開いたまま返す言葉も見つからず何度も首を横に振っては、自分の体に布団を巻き付けて触られることを拒絶した。 「お前が痛い痛いって泣くから」 「だからっておばあちゃんの薬使う??バチ当たりな孫め!!おばあちゃんだって孫の性行為にまさか利用されるとは夢にも思ってなかったろうよ!今頃泣いてるよ!」 すでにムードもクソもない。ぐいぐいと山女は志水の布団を引っ張り、志水も負けじと必死に応戦する。 「俺が泣くのはいいのか?」 山女の発した言葉に志水の動きが止まる。 「なに?」 「俺、最後までお前としたいんだけど。頭に血が集まってて、もうさっきから頭もチンコもおかしくなりそうなんだけど」 山女は神妙な面持ちなで煩悩丸出しな言葉を吐いている。その表情(かお)と口から発される内容が乖離し過ぎていて志水の頭にうまく内容が入ってこなかった。固まってる隙に志水の布団を引き剥がし、その体を抱き締める。肩の上で山女がようやくその体を触れられることができたせいか、幸せそうにため息をつくので志水は思わずドキリとした。 「日晴鳥、俺に触られるの嫌か?」 鼓膜と骨に低く、淫靡な囁きが響き、志水は思わず反応した。山女がどんな顔をしてそう告げるのか、志水が覗こうと横を向くと、それが罠だったみたいに唇を重ねられる。 「んんっ……」 簡単に押し倒され、腰に手を回されるとそれだけで体が火照るのがわかった。志水は思わず単純な自分に腹がたつ。自分の口の中で別の生き物みたいに山女の舌が這い回る。太腿の内側を撫でられ腰が揺れた、さっき吐き出したはずの場所がまた熱くなる。ぼんやりと与えられる快楽に酔っているとぬるぬるした指が後ろに入るのがわかり、息が止まった。 「日晴鳥、俺はお前をもう傷付けないよ」 山女は優しい眼差しと柔らかい声色のまま言葉を続ける。 「それでも、どうしても嫌だったり、痛かったら」 「手を挙げるんだろ?」 志水の声に少し驚いた山女は一瞬黙るが、すぐに笑みを作り頷き、優しくもう一度口付けた。 「ん、あっ」 ぬるぬると志水の中に長い指が器用に出入りするたびに志水は声を抑えられずに鳴いた。 最初はやはり怖くて体も固いままそれを受け入れられずにいたが、繰り返されるキスが鎮痛薬がわりみたいに恐怖を少しずつ消していってくれた。 不意に腹の裏側を中から押され大きな声が出た。背中に何か電気のようなものが走って志水の中心は完全に熱を持ち、起き上がった場所は濡れていた。 我慢出来なくて自らの手をそこに伸ばし触れると山女の手に阻まれた。 「意地悪、すんなよっ」 肩で息をしながらやや涙目の志水は抗議する。 「だめ、一人で気持ちよくなるな」 「じゃあ触ってよ」 「だめ」 もう一度同じことを告げようとするも後ろに入った指が二本に増えてぐちゅぐちゅと掻き回され志水は反論の声を失う。 「やっ!ああっ、だめ、だめっ」 ガクガクと志水は泣きながら腰を震わせた。湿った鳴き声を閉じ込めるみたいに山女はその唇を塞ぐ。口の中を舌でめいいっぱい犯すとだらしなく唾液が志水の唇を濡らした。指で触れている場所もそれに反応したかようにぎゅうぎゅうと締め付けてくる。 今まで想像したことも見たこともない志水の淫らな姿に山女は喉を鳴らした。 日に焼けることを免れた志水の胸元が桜色に火照りますます山女の雄を興奮させる。 そこにある尖った場所を甘噛みすると志水はこどものようにかぶりを振って泣き、細い体がそのまま壊れてしまいそうだった。 乱暴に突き上げて、壊してしまいたい狂気のような欲望を押し潰しながら志水の誰にも触れさせたことのない場所に自身をあてがう。先端に粘膜が触れるだけで山女は頭が沸騰しそうになった。志水は必死に閉じてしまいそうになる足を震わせながら耐える。 「ごめんな、怖いよな?」 志水の上気した頬を優しく手の平で撫で、口付ける。 この淫靡でどうしようもない小さな生き物を骨まで食べ尽くしてしまいたいと思う反面、傷付けたくなくて逡巡する。 山女が頰に添わせた手の上に志水は自分の手を重ね、瞳を潤ませたまま優しく微笑む。 「平気、だよ。惺厳はもう傷付けないって約束してくれたじゃん。俺はそれを信じるよ」 山女は自分の中に瞬間にして、湧き出た感情をすぐには理解できなかった。 壊して食べてしまいたいのも、そうしてはならないと思うのも、一見して両極端に思われたそれはどちらも同じところからくる感情であることに山女は初めて気付き、理解した。 「好きだよ、日晴鳥」 ストレートな言葉に志水は面食らうも一気に火照り熱を持った自分の顔を見られないように俯いて小さな声で「俺も」と告げた。

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