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アイレとレオナードの出会いは、二週間ほど前に遡る。
前王崩御後五周年追悼式の後、レオナードがひとりで王の墓を訪れるという情報を掴み、アイレはその首を掻く計画に乗った。
アイレが住む、アカサと呼ばれる貧困地域では、飢饉と熱病で数千人が死んだ。周辺住民が環境の改善を再三訴えてきたが、王も施政官たちもなにひとつ動いてはくれなかった。
情報どおり、レオナードはひとりで王の墓にやってきた。白薔薇の花束を王の墓の前に置き、思いに耽るように佇んでいるレオナードの首をかっ切ろうとしたが、アイレのナイフは首には届かなかった。
ただ、レオナードは驚くほど簡単に地に捻じ伏せられた。まるで暗殺者が来ることを分かっていたかのような、ーー。でも、生存本能がそれを上回り、ナイフを弾いたかのような、そんな感覚だった。
レオナードを仰向けに捻じ伏せたアイレは、その胸倉をつかみ、アカサの現状を吐き捨てた。
「あんたの失策のせいで、何千人が死んだと思ってやがる! 何千人の命を奪った原因の追究よりも、死んだ王の式典が大事か? ふざけんな!」
レオナードはなにも言わなかった。その沈黙は、アイレから二の句を奪った。レオナードの赤い目は、まるで空虚をさまようかのようだった。
胸倉を掴まれたままで、捻じ伏せられたままで、なにを言うわけでもない。空をさまよう瞳は、アイレを捉えることもなく、すいと逸らされた。
「それは施政官さまに言えよ。生憎と俺が出る幕ではないらしい」
かなりの沈黙のあと、ぼそりとレオナードが言った。
アイレは王の声を初めて聴いた。けれどその声は、獅子の咆哮とはかけはなれた弱々しいもので、か細かった。無意識に眉根が寄る。「どういう意味だ?」と尋ねたが、アイレはすぐに状況を察した。
一国の王が、こんな無防備に晒されるわけがない。護衛の気配も、においもない。式典のあとにひとりで墓に来るなどという情報が、どこから漏れたのか。何故ひとりなのか。レオナードの兄・サイードは何故来ないのか。
それを悟ったアイレの手から、少しずつ力が抜けていく。
「……まさか」
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