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誰かが暗殺に来ることを、施政官たちが望んでいるとでもいうのだろうか。その言葉は、口から出て行かなかった。
王がこんなにも弱々しく、そして若いと思っていなかった。前王はかなりの大柄だったうえに、もっと威厳があったのを記憶している。アカサの民は王都にはあまり近寄らないこともあり、アイレは数度しか顔を見たことがない。
レオナードがすんと鼻を動かした。伏せられた目が、長いまつげがあがる。そうかと思うと、ばちりと目が合った。
赤い目になにかが宿るのを見て、ぞくりと腰の奥から熱が這い上がるような感覚に見舞われる。
明確な殺意に射抜かれたような気がして、無意識に唾を呑んだ。けれど、鋭く光ったレオナードの目は、なにか楽しいことを思いついたかのように細められていった。
「いいことを思いついた。顔を貸せよ、暗殺者」
レオナードの口元が、にやりと不遜に歪む。
まさかそう来るとは思わなくて、アイレは眉を顰めた。
「アカサとナクシャ、そのほかの地域の視察に行きたい」
「……はあっ?」
なに言ってんだと声を荒らげたが、レオナードの目は揺らがない。まるで獲物を見つけた時のように細められ、らんらんと輝いているように見えた。
兄・サイードの存在。施政官の存在。そして側近たちが誰一人としてこの場を治めに来ないことへの疑念。それはアイレの予想通りに、レオナードが駒として使われているだけなのだと、再認識する。
アカサだけで数千人が死んだこと。もしかするとほかの地域はもっと人が死んでいる可能性もあるというのに、王が動かないという、たったそれだけしか見えていなかった自分の浅慮さに、アイレはなぜか胃の奥のむず痒さを感じた。
「……報酬は?」
ぶっきらぼうに問う。レオナードの獅子の耳が、微かに揺れた。
「民が暗殺に手を染めるのは、王の愚策が原因だ。前科があるのかは知らないが、どのみち“王の首を獲る”のが目的だったんだろう?」
そう言われて、アイレは瞠目した。この男はなにを言っているのか。普通に考えれば、それはあまりに無謀な意味合いだ。
けれど、言葉の裏があることに気付いた。アイレはにやりと笑って、わざとらしく小首を傾げた。
「それ、“どっちの王”の首のこと言ってんの? あんたか? それとも」
レオナードの目が細くなる。アイレはそれを見て、はんと鼻で笑った。
「マジかよ、頭沸いてんのか?」
「二週間後。満月の夜に、処刑塔に来い。
地下なら脱獄はできるが、“塔の上”なら脱獄イコール死だ。“普通”、ならな」
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