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第3話

 午前0時すぎに誕生日祝いのラインをくれた同級生から、ラーメンをおごるといわれた。けれど店がひと駅向こうだ。近場でフラペチーノに替えてもらった。  カフェの前で礼を言うと、自転車にまたがって家路を急ぐ。帰宅後、葉太の仕事があるからだ。  家から少し離れたところにある貸し農園で、祖母は家庭菜園を楽しんでいる。一緒に暮らすようになってから、夕方の手入れは葉太が担当していた。  何でも自分でやってしまう祖母だけれど、年齢を重ねてからは、力仕事を代わってやると特に喜んでくれる。  役に立てると葉太も嬉しい。 「ただいま! ごめん、ばあちゃん。すぐ畑してくるから!」  玄関から声をかけ、ダイニングキッチン横の廊下を走る。そのまま自室へあがろうとした。 「おかえり。そんなに急いでどうした」  祖母ではない誰かがダイニングキッチンから返事をする。  知らない男の声だ。  階段へ向かった葉太は足をとめ、そちらへ向かうと男は廊下へ出てくる。 「え……なんで……」  夢で会った、白い長髪の知らない男だ。 「ツユ子さんは今、ケーキの仕上げの最中だ。静かにしろ」  ツユ子とは祖母の名前。なぜ知っているのか。そもそもどうして自宅にいるのだろう。  呆然と立ち尽くしていると、男は葉太を許可なく腕で包み、優しく抱きしめた。 「忘れていたのだったな。ならもう一度覚えろ。龍神でお前の番のサカキだ」  誕生日の午前0時に見た夢で会った男。  着物姿の美しい男は『サカキ』と名乗り、葉太の家にやってきて、しかも今自分を抱きしめている。 「りゅ……龍神って……」 「ああ、一応そうなっている。用があるなら私が手伝おう」  慌てて葉太はサカキの胸を押し、腕の中から逃げた。 「何で勝手に人んち入ってるんだよ、ばあちゃんは知ってるのか?」 「おかえり、葉太。ごめんね、ちょうど手が離せなかったんよ」  割烹着を着た祖母も廊下へやってくる。  しかしその男の存在に全く慌てていないので、葉太は不思議でたまらない。 「サカキさん、ありがとうございます。どうぞこちらで座っててください」 「いい、葉太を手伝ってくる」  自分だけ状況がわからず、仲間外れにされた気になった。 「ばあちゃん、この人知ってるの?」  なら祖母は、番にという話まで知っているかもしれない。それならわけを知りたい。 「龍神様のサカキさんやけど。葉太の成人のお祝いに来てくださったよ」  祖母の家で三年暮らしたが、サカキという家は近所にどこにもなかったはずだ。 「どこのサカキさん?」 「学校の近くの池の。お社あるやろ、あちらのよ。小さい頃よく遊んだの覚えとらん?」  当然のような顔で言うので、葉太の方が間違えた気になってくる。 「それでで、急いで葉太は何をするんだ」  サカキは葉太のとまどいを気にせず、聞いてくる。 「畑の草むしりとか、水やりだけど」 「なら私も手伝おう」  訳も分からず自室へ行って葉太は私服に着替えた。  玄関で待っていたサカキとともに貸し農園へ出かけ、畑仕事をする羽目になった。

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