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第4話
祖母が警戒していないのなら、危険は相手なのかもしれない。
(遠縁の会ったことない親戚、くらいに思えばいいのか?)
サカキは着流しにぞうりのまま畑へ出かけ、一緒に草むしりを手伝ってくれた。
「裾、汚れちゃいましたね」
畑からの帰り道、サカキの姿が気になり声をかけた。勝手にまとわりついてくる、葉太にとっては不審者の相手だけれど、着物を汚してまで手伝う姿に少し心が動く。
「ああ、気にするな。すぐ直る」
不思議な言い回しだと葉太が思っていると、サカキは着物の腿あたりををぽんぽんとはたいたあと、葉太へほほ笑んだ。
「どうだ、きれいになったろう」
裾や袖にはねていた泥が、すっかり消えている。
「え、ほんとだ……なんで」
「手を貸せ」
備え付けの水道で適当に洗っただけの、汚れがまだ残った手のひら。大切そうにサカキは手をとり、手のひら中央へ口づけた。
「わっ!」
しかし口づけたあとの手のひらは、すっかり汚れが消えている。
「あ、ありがとう……ございます……?」
「そちらもだ」
「いい、いいって。家でちゃんと洗うから」
強引に反対の手を取られ、同じように口づけられてしまった。ぞくり、と背筋が反応する。
(変な感じ、何だこれ)
気味の悪さからくる寒気ではない気がした。口づけられたところから、何かが沁みる感じがする。
「あっ、もう、やめろ」
サカキは葉太のひとさし指を口へ含んで、吸い始めた。そのたびまたぞくりと反応してしまい、葉太は慌てて振りほどいた。
「ばあちゃん待ってるから、帰らないと」
「頬の血色がよくなった。何よりだ」
顔が赤いといわれたようで、葉太は恥ずかしくなってくる。
知らない男に手へキスを受けて、気味悪く思うことはあっても、どうして照れるのか。
経験がないせいかと思うも、自分の気持ちがわからない。
(あれ、指、痛くない)
サカキには言わなかったが、吸われた指は草むしり中にうっかり傷ができてしまった箇所だ。その傷はすっかり治ってしまっていた。
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