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第5話

 祖母が用意した誕生日祝いの夕食には、龍神サカキも参加した。 「今年のお祝いは特におめでたいねぇ」  はりきった祖母が次々と料理をふるまい、サカキも一緒に口にしていく。 (神様は人の食べ物を食べるのか?霞とかじゃなくて?)  それは仙人か、とぼんやり考えていると、サカキが機嫌よく声をかけてきた。 「今年贈ってくれた葉太の酒が特別うまい。お前も一緒に飲もう」  今朝龍神の神棚へ供えたお神酒を勝手に開けて、おちょこにくみ味わっている。 「お供え物、勝手に飲んだらだめでしょ」 「私にくれた物だ。かまわないだろう」 「龍神様へのお供えだから、違うって」 「だから、一応だが私が龍神だ」  隣同士に座ってふたりで言い合っていると、ダイニングテーブルをはさんだ向こうで祖母はにこやかに眺めている。  祖母に助けを求めて視線を送っても、笑顔しか返ってこない。  飲み干したおちょこに清酒を注いだサカキが、また口をつける。そのあと葉太へ差し出した。 「祝いの酒だ。飲むといい」 「俺は未成年なので、飲めません」  飲みかけのものを、初対面の自分に渡してくることも気になった。龍神だとしても、デリカシーがない。 「ちょっと口をつけるだけでいいよ、葉太」  なぜか祖母はサカキへ助け舟を出す。サカキが葉太の口元へおちょこを突き出すので、仕方なく受け取ろうと手を伸ばしかけた。 「飲ませてやる」 「ちょっ!」  急におちょこを口元へ突きつけられ、そのまま傾けられたせいで、葉太はひと口分酒が入ってしまう。 じわじわと口内に沁みていき、いつの間にかなくなった。 「うまいだろう」 「だから、未成年だって……」  抵抗する間にも、御神酒を飲んだ体がぽかぽかと熱くなる。もしかすると酒に弱いのかもしれない。  葉太が思っていると、サカキが目を細めて眺めている。 「もう飲みませんよ」 「ああ、十分だ」  祖母が今度は拍手をし出した。  いったいどうしたんだろう。  誕生日祝いの食事が終わると、サカキは席を立ち、廊下へ向かった。 「またいつでもいらしてくださいね」 「正式に契れたからな。そうする」  立ち上がってサカキを見送る祖母について、葉太も廊下をのぞく。  廊下の先にある神棚を祀った部屋へ足を踏み入れたとたん、サカキの姿は消えた。 「どこ行った……?」 「お社に帰られたんよ。龍神様やからね」  言い残して、祖母は食事の片付けへ向かってしまった。  これも夢かと思って頬をつねってみたけれど、ちゃんと痛い。 (明日になったら、またいつもどおりの一日が始まりますように)

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