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第11話

(やめさせたいけど、できない。龍神の力ってこんなことにもきくのか?)  理由を考える間もなく、サカキに舌を絡められ、上あごをぬるりとなぞられる。  そのたびぞくりと背中が痺れ、内側からじわじわと温まる感じがした。  洋酒入りのチョコレートを、うっかり食べてしまったときの感覚に似ている気がする。 「心地がいい。お前とひとつになるのは」 「い、言い方っ!」 「だがもうやめておく。なくなってしまうから」 (なくなるって、何が? 俺……?)  一瞬自分が食いつくされるのかと思ったが、すぐに持ってきたお菓子のことだと勘違いに気づく。 「何でこんなことするんですか」  返事はきっと、番になったからだろう。なぜそうなったのかが知りたいし、できることなら解消したい。 「お前に慣れてもらうためだ」 「答えになってないんですけど」 「私を受け入れてもらいたいからだ」 「ば、ばかなこと言わないでください!」  身の危険を感じて、懸命に抵抗する。サカキは力を強め、さらに抱きしめて拘束する。  まるでサカキと体の関係を持てと言っているようだ。そのためにキスから少しずつ慣らそうとしているのか。 「無理です。俺、男ですよ」 「男も女も関係ない」 「だいたい、俺はサカキさんとこんなことする仲じゃないんで」  いくら何でもあったばかりで突然キスをするなど、葉太はありえないと思っていた。  すると急に腕の力が弱まったので、その隙にサカキの膝の上から逃げて距離をとる。 「18になったら、番う約束をしただろう」 「してません」 「毎年歳を重ねたと、報告してくれただろう」  祖母の家にある、龍神を祀った神棚。幼い頃から、誕生日にだけは何歳になったと報告して御神酒を供えていた。 「それを聞きながら、ずっと待っていた」  祖母から聞いていないし、両親も何も言わなかった。もしや誰かが生贄になることで、この土地が守られる、みたいな話かとも思う。 (そんな話、聞いたことねぇよ)  腹立ちが顔に出ていたのか、向かい合って座るサカキが肩を落とした。 「そうだな。私が勝手だった。迷惑をかけて悪かった」  しゅんとしてひと回り小さくなったサカキが、静かに空間を歪ませた。 「帰るといい。菓子、ありがとう」 「待てって、まだ話っ!」  呼びかけたけれど、景色はもとの古い社に戻っていた。  いつもなら名残惜しそうに見送ってくれるサカキが、今日はこない。よほど気を落としたのだろう。  結局、なぜ龍神と番う約束ができたのかは、聞けずじまいだった。

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