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第14話

葉太が幼い頃に祖父が亡くなり、祖母はひとりで暮らすようになった。  今でこそ元気で丈夫な祖母だけれど、10年前は弱っていて、幼いながらもそばについていないとと思ったことを覚えている。 「おばあちゃん、水やり行ってくるね」  当時も家から少し離れた同じ場所に畑があり、夏休みの早朝の水やりは葉太の仕事だった。 「ありがとう、気ぃつけてよ」  小学生になると、夏休みなど長期の休みには、祖母のところで暮らすことになっていた。  両親は共働きで家には常におらず、どうせひとりで過ごすなら、祖母のそばにいて役に立ちたかった。  帽子をかぶって外へ出ると、駆け足で畑へ向かう。 「あっ!」  突然ふいた風に、道の反対側まで帽子を飛ばされた。あわてて車道へ出て追いかけるも、なぜか帽子に追いつけない。 「危ないから走るな」  目の前に突然現れた大人に道をさえぎられると、その向こうを猛スピードの車が走っていく。 「ほら」  その大人に帽子を拾われ、頭へそっとかぶせられた。  帽子に夢中になっていて、車が迫っていたことに葉太は気づかなかった。 「あ……ありがとう」  腰まである白い髪、髪と同じ真っ白な着流しをまとった珍しい格好の男だった。彼のような紫色の瞳を見たことがなく、美しさに見とれて思わず顔を眺め続けてしまう。 「この辺りの子供じゃないだろう」  そう言われて葉太はうなずく。事情を話すと、帽子の上から頭を撫でられた。 「優しい子だ。遊び相手はいるか」 「おばあちゃんと遊ぶよ」 「なら、たまに私と遊ばないか?」  知らない人についていってはいけません。  小学校でも教わってはいたけれど、その大人を疑う気持ちには全くならなかった。 「いいの?」  優しく笑ってうなずく男の顔は美しく、幼い葉太はもどきりとした。 「向こうに池があるだろう。その傍の社にいるから、いつでも来い」 「わかった」  祖母のことは心配でそばにいたいと思っていたけれど、家の周りには小学生はおらず遊び相手がいなかった。  なので、不思議な格好をした大人であっても、友達になってくれたのは嬉しかった。 「お前は用事があるだろう、もう行け」 「そうだった!」  うっかり忘れていた水やりを思い出し、男へ手を振ると葉太はあわてて畑への道に戻る。  池のそばの社は、龍神をまつったものだと祖母から聞いていた。  特別な場所で会って遊ぶなんて、と特別さから興奮し、足取り軽く跳ねながら畑へ向かった。

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