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第16話
前日までの台風で大雨がふり、鳥居からサカキのいる龍神の社へ続く道は、ひどくぬかるんでいた。
舗装されておらずむきだしの土は、強い雨にたたかれていびつに削れ、ところどころ水たまりができている。
『立ち入り禁止』の看板は、台風が過ぎ去った今朝、道の様子を見に来た高齢の男が立てていった。
もし、幼い葉太がやってきて大きな水たまりをよけようと池寄りを進んできた場合、池に落ちる可能性がある。
(もう少しの辛抱か)
立ち入り禁止とした男に感謝するも、少しだけ寂しい。
すっかり葉太が話し相手になっていたサカキは、台風の間早くおさまらないかと耐えていた。
(いっそ、水たまりの水をとばして、ぬかるみも消してしまったら)
葉太がやってきたときは、そうしてしまおうと考えていた。さすがに天気を変えるほどの力は持っていないけれど、道の水分を飛ばす程度の力はある。
「……さーん、サカキさーん!」
いつもやってくる鳥居側の道ではない離れたところから、葉太の声がした。
社から顔を出し、いつも葉太がやってくるぬかるんだ道を見るがそこにはいない。
「後ろー、後ろだよ! こっち!」
社のすぐ後ろは緑が生い茂る山の斜面になっている。
そちらの方から張り上げる声がした。
「入口、入れなかったから、こっちから来たよ」
社の後ろへ行き、山の斜面を手前から向こうへ見ていくと、木々の間で小さな手が振られている。
わざわざ道のないところを、進んできたらしい。
(無理してこなくてもよかったのに)
そう思うも、危険を冒してまで会いに来てくれたことが、嬉しくなってしまう。
「今いくからね、ちょっと待ってて……」
葉太のいる山の斜面のすぐ下は池になっており、鳥居から社までのような道はない。
斜面下の木々は、台風によって増えた池の水にひたってしまっている。
「待て、私がつれに行く……」
言った矢先、葉太が踏み出した足元の土が崩れ、真下の池に流れていく。
草木が支えているはずの斜面も、大量の雨によって緩んでしまっていた。
葉太はわけのわからないまま、崩れる斜面とともに池へ飲み込まれる。
「葉太!」
池へ吸い込まれた葉太のところまでは距離がある。
斜面をたどるよりも池の中を進んだ方が早いと、サカキは池へめがけて飛び込んだ。
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