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第17話

 全身が水へつかると、サカキは紫をおびた水龍の姿に変わる。守る水域に全身をひたしたときにだけ可能な変容だ。  大雨のせいで濁った池の水の中、木々の枝や葉、草と一緒に静かに沈んでいく葉太を見つけた。  水龍の姿になれば、邪魔する木々などがあったとしても簡単にすり抜けられる。サカキはすぐに葉太の体を絡めとり、水面へ向かって上昇を始める。 「ごぼ、ッ! が……!」  突然葉太が暴れ出し、サカキの体をきつく握りしめ、しがみついてきた。苦しいのだろう、すがる力は強い。  泳ぎの妨げにはなるけれど、葉太が生きているとわかり、サカキは力が増す。尾に力を込めて、水を蹴った。 「葉太!」  池から上がり、ぐったりした葉太を抱えて社の中へ連れ込む。すぐに龍神の社へと移って、広い和室の畳へ葉太を寝かせ、様子を見る。  口元へ耳を近づけると、息をしていなかった。水が呼吸の邪魔をしているのかと、細心の注意で葉太の気道に入った水を避けてやったけれど、まだ目を覚まさない。 「葉太、起きろ」  衣服の水分をとばしてやり、体温をこれ以上奪われないようにする。  自分が遊びに来いと言ったせいで、大切な存在が命を落とした。動かない、小さく大切な存在を目の前に、サカキは自分をきつく責め始める。 (そばにいて欲しいと思ったばかりに、優しいこの子はこんな目に)  小さな胸へ手を当てると、まだぬくもりがあった。けれど鼓動は感じられず、みるみるうちに顔色が悪くなっていく。 (どうしても葉太を助けたい)  水分を飛ばす程度の力では足りないので、何か代償が必要だ。  仰向けに寝かせた葉太の口を開かせて覆うように口づけると、少しずつ神力を注いでみる。まずは、持てる力を注いで、息を吹き返さないか試してみることにした。人工呼吸に近く、直接葉太の生命力へ働きかける方法だ。 (戻らない。この程度では代償が足りないのか)  もしすでに命が尽きているとすると、生命のエネルギーを湧き出させる魂が消えてしまったのかもしれない。  体温だけ残し、すでにこの世を去っているのかもしれない。  サカキは葉太を失うことに耐えられず、自身を顧みない決断を下した。 (葉太の体が耐えられなかったら…だがもうこうするしかない)

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