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第20話

記憶のことは気になるけれど、とにかく泳いで水面へあがらなくては。  葉太は忘れていた古い記憶はいったん置いておき、池からあがることを考える。 (前とは違う、今はちゃんと泳げるから)  誰かに助けてもらわなくても、大丈夫。そう思った矢先、また視界が歪む。 (くそっ、何で)  瞬間、水の中を懸命にかく腕をつかまれ、水面へ向かって強引に引っぱり上げられた。  池の脇の道へ投げ出され咳き込んでいると、作業員が慌てて駆け寄ってくる。 「大丈夫か! だから入るなって言ったろ!」 「はい、すみません」  しおらしく謝っておくと、作業員はそのまま入口の詰め所へ戻って行ってしまった。  助けてくれたのは、その男ではない気がする。 「葉太」  男の姿が見えなくなると、背後から声をかけられた。 「サカキさん、ですよね。助けてくれたの」 「いいから、こっちへ来い」  そう言って社の方へ先に向かうサカキの衣服は、全く濡れていなかった。  池へ飛び込んで助けてくれたのが彼なら、衣服も髪もびしょ濡れのはずだ。  濡れたスクールバッグを拾い上げ、水をしたたらせながら、サカキの背中を追う。 (前にも落ちたことあるんだっけ、この池に)  スイミングスクールへ通い始めたのは、小学3年生あたりなので、池で溺れたことがきっかけだったのかもしれない。  それでも不思議と水に恐怖心はなく、むしろ水中が心地よく感じたほどだった。  社へ行くと、いつものように格子戸が開いて、異空間への道が開く。サカキのいる世界へ一歩踏み入れると、濡れた髪も衣服も、バッグまでがすっきりと乾いてしまった。 「座って、話をしよう」  まるで春のようにおだやかな空気、障子を開け放ち、何十畳もありそうな和室が広がっている。  面した庭が見える縁側近くへ、ふたりで腰を下ろした。 「さっき助けてくれたんですよね?ありがとうございます」 「しばらく離れてしまったからな。具合が悪いんだろう」 「どういうことですか?」

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