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第2話 獣人上司、可愛い恋人の体力に頑張ります

「何?なんかぐったりしてない?」 「別に…………」  高瀬は、半月でクリスマスツリーの飾り付けをしているルルの、脚立を抑えていた。  電飾を取ってだの、そっちを押さえてだのとルルの指示は細かい。毎年手伝わされているが、昨日の夜の疲れが抜けていない高瀬はソファー席で転がっていたい気分だ。  結局、成瀬とはあの後も数時間かけて交わった。単純な寝不足もあるが、自分の性欲を奮い立たせることに苦労した。  セックスが原因で別れたという成瀬の元カノの事を思い出し、高瀬は気持ちを察する。  しかし、高瀬はそれ以上に成瀬を愛している。  成瀬に求められるのならば頑張らないわけがない。 「あとは星をてっぺんに付けて終わりね♪」  体のだるい高瀬とは対照的に、ルルは上機嫌で最後の仕上げにかかった。 「そういえば、龍樹そろそろ来るんじゃないか?ケンも来るから会わせられるな」  高瀬は、さらに上まで登っていくルルに話しかけながら、脚立を持つ手に力を入れた。 「ふふふっ、二人が来るまでに終わりそうで良かった」  一番上に立ち上がり、星を付けようとするルルを見上げ、その光景に高瀬は視線を逸らす。ルルはワンピースで作業をしていたのだ。  高瀬が視線を逸らした瞬間、ずるっと音がして、見上げればルルの顔が目の前にあった。咄嗟に抱き止めて、止まらない勢いを床を転がることで止める。 「大丈夫か?」 「うん、ごめん……びっくりした……」 「怪我がなくて良かった」  高瀬はホッとして、自分の手の位置に気づいた。 「悪い……」  ルルの胸元に入っていた手は、ワンピースのボタンを飛ばしていた。はだけた胸元にはピンクの突起が見え、その横に銀の指輪のネックレスが見えた。そっと手を離そうとすると、ルルは高瀬の背中に腕を回してくる。 「もう少しだけ……シンシアに触れるの、嬉しいから……」 「……そうか……」 「そうよ、何年越しだと思ってんの?」 「この前ケンと一緒にハグしただろ」 「あれはノリよ!」 「なら、15年くらいか?」 「数字はどうでもいいの!もう、怖くないんでしょ?ちょっと抱きしめてよ」 「わかった……」  高瀬がルルに顔を近づけると、店のウィンドウチャイムが鳴った。そして「ふぇっ」と不安そうな声が聞こえ、高瀬は固まった。 「シン……さ……ル……さん……え……え?」  成瀬は、目の前の状況が理解できずにパニックになっている。  高瀬がルルを押し倒して抱きしめているのだ。  ルルの服は乱れ、胸元も太ももも丸見えの状態。  まさに、今、ことが起こるところである。  高瀬も固まったまま、何を言うべきか頭をフル回転させているのだろう。ルルは動かない二人に、飛び起きると、成瀬を抱きしめる。 「ごめんね、ごめん。私が脚立から落ちちゃって、助けてもらった所なの。何もされてないから!」 「脚立?え、だ、大丈夫ですか?」 「大丈夫、シンシアが抱き止めてくれたから」 「抱き……」 「あぁ、違う違う。ね、ケンちゃん、触って。私、男よ。ね……無いでしょ?」  ルルはまた勘違いをする成瀬の手を自分の胸元へ持っていき、膨らみがないことを証明する。 「男だから何ですか?」 「あー、あぁ、そうよね。うん、そうなんだけど……」  ルルは安心させようと紡ぐ言葉が全て裏目に出ているようで、どう説明しようか考える。 「こいつには、恋人がいる」 「え?」  ようやく動き出した高瀬は、ソファーに座りながら成瀬に微笑んだ。誤解だと両手を上げる。 「そ、そう!見て、これが彼との指輪。信じてもらえる?」  シャラっと鳴る金属の音に、成瀬はだんだんと落ち着きを取り戻してきた。 「そ、そうですよね。えっ!ルルさん、男?!」 「今、そこ?!」  再度驚かれたことに、ルルが驚く。高瀬がソファーから笑い声を上げている。 「あ、ごめんなさい。ずっと女の人だと思ってて……」 「はぁ~とりあえず誤解は解けたかしら?わっ……」 「危ない……」  ルルはホッとして成瀬から離れようとしたが、靴の細いヒールが折れていて、よろけてしまう。成瀬はルルを抱き寄せるように支え、胸元の手をさらに奥へ押し込んでしまった。 「あっ……んっ……ケンちゃ……」 「あ、ご、ごめんさない!」 「待って、んっ…………弱いの、そこ……」  目を潤ませる扇情的なルルの顔に、成瀬はゴクリと息を飲み込んだ。 「大丈夫か?」  ソファーからやってきた高瀬が二人を離そうとする。  そこに、またウィンドウチャイムが鳴り、スラリとした知的な男性が入ってきた。  その男性は、成瀬の手を見ると、メガネを押し上げてルルを奪い取る。 「これは僕の恋人だ、触らないでくれるか?」 「ふっ?え?あ、いや、これは、ごめんなさい!」  成瀬はしどろもどろになりながら、言われた事を理解しようとする。  しかし、ルルの表情が一変し、嬉しそうにその男性に抱きついたのだ。 「たっちゃん!」 「豪、また綺麗になったな」  あっという間に二人の世界が創られ、成瀬は呆けてしまった。  後ろから、豪がルルの本名で、男の名前は龍樹だと高瀬が教えてくれたが、あまり成瀬の頭には入ってこなかった。 「そうだ、シンシアがね、触ってくれるようになったの。さっきも助けてくれて、すごく嬉しくて。きっとたっちゃんにも……んんっ」  ルルの言葉を遮るように、龍樹はルルにキスをした。 「はぁっ……後で聞く……」 「んっ……ぅん……」 久々の再会で濃厚なキスを繰り返すルルと龍樹に、高瀬は呆れる。 「とりあえず帰るな。また改めて食事でもするか?」  高瀬の言葉に、龍樹はチラリと目線だけよこし、手を振ってきた。高瀬はため息をつき、成瀬の手を取ると、店を出て行った。  路地裏から商店街のメイン通りに出て、成瀬を振り返れば、まだ少し呆けていた。高瀬は繋いだ手が右手だった事に気づき、慌てて離す。 「悪い、痛くなかったか?」 「大丈夫ですよ。さっきもルルさんを支えられました」  ニコリと笑う成瀬の頭を高瀬は撫でる。 「ルルさん達、幸せそうでしたね」  さっき目の前で見た濃厚なキスは、映画やドラマとは違い、本当にお互いを求め合っているものだった。 「年に一回会えるかどうかだからな」  成瀬は頬を染めつつ、高瀬の服をつまむ。 「あの……俺も、したいなって……」  控えめな誘いに、高瀬は嬉しくなった。 「ふっ、買い物やめて帰るか?」 「あっ……買い物はしないと……」 「我慢できるのか?」 「……シンさんは?」 「できない」  昨日の回数なんてどうでもいい。この顔を見てしたくないわけないだろ。

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