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第23話 恋人が甘すぎて、満月まで待てません
「ただいま、満月」
成瀬は満月のケージを開けて、小松菜を差し出す。
満月は飛びつくように葉を齧り始めた。
「帰ってくる途中にシンさんと買ってきたんだ。新鮮だろ?」
「うまそうに食うな」
高瀬も満月の食べっぷりを見て笑う。
高瀬の家からマンションに戻ってきた。
コレットは休みの間、居てもいいと言ってくれたが、満月がいるのでと成瀬は遠慮した。
なんだかんだで三泊もしてしまった。
ルルが何も言わずに満月の世話を引き受けてくれたから良かったが、今度お礼をしないといけない。
成瀬が帰るなら、高瀬も帰ると少し寂しそうなコレットに高瀬は挨拶のキスをしていた。
フランスの挨拶は見ていてまだ慣れない。
龍樹のアレも、挨拶だったのだろうか。
龍樹はフランスで仕事をしてると言っていたし。
「ケン、夕飯はどうする?」
「あ、色々貰ってきたんで、食べないと悪くなっちゃいますよね」
コレットは帰り支度をする成瀬に、たくさんのお土産を持たせた。全て食べ物だ。
実家の母親みたいだと成瀬は思い出しながら、どの国でも母親はこんな感じなのかなと少し安心したのだ。
大量にあったコンビニのおにぎりは何故かパーティーで好評で、すぐに無くなった。
シェフが悲しそうな顔をしていたが、クリスマスのご馳走は保存食が多いから、余ったものはほとんど成瀬が貰って帰ってきた。
「ずっとこれだな……」
「おせち食べ飽きたみたいに言わないでくださいよ。お正月はこれからですよ」
「おせちの方が珍しい。むしろ食べたいくらいだ」
「あー、フランスにはおせちないんですか?」
「年末はクリスマス料理でBûche de Noëlはずっと食わされる」
「ブッシュドノエルですか?シンさん甘いの好きじゃないですか」
「少し甘いくらいが好きだ」
「う~ん……じゃあ、貰ったケーキは俺食べていいですか?」
高瀬は少し黙ったあと、成瀬に口を開けてきた。
成瀬はニコニコと笑いながら、高瀬の口にスプーンを運ぶ。
もぐもぐと口を動かしながら、高瀬は成瀬と目を合わせる。
互いに触れたいと思った時、満月がテーブルの上を気にするように二人の間に入ってきた。
「ダメだよ、満月。食べられないから」
成瀬が苦笑しながら、満月を膝に乗せる。
満月はフンフンと鼻を鳴らしながら、チラリと高瀬を見て成瀬の膝に丸くなった。
ぎりっと高瀬は奥歯を噛む。
「ケン、早く食べろ」
「え、なんで。ゆっくり食べましょうよ、美味しいのに」
「眠い」
「あ、疲れましたよね……」
獣化は体力を使うとレオニアから聞いていた。
そのすぐ後が満月で半獣化していたのだ。
しかも、朝まで成瀬が求めてしまった。
「今日はゆっくり寝ましょうね」
「あぁ、ケンのベッドでな」
「……ぅ……」
「なんだ?」
「…………我慢、できるかなって……」
高瀬と一緒に眠れるのは嬉しいが、隣にいる綺麗な寝顔を見て、欲望を止められる自信は成瀬にはない。
「昨日、朝までしたのにか?」
「シンさんが、気持ちよくするから……」
「………………悪かった……」
高瀬は笑いながら成瀬を抱き寄せる。
成瀬がいとおしくて仕方ない。
顔を近づければ、黙って目を閉じる。
唇を合わせ、舌を絡める。
甘い……
甘くて、溶けそう……
離したくなくて後頭部に手を回し、深く深く舌を滑り込ませる。
息継ぎに口を離せばトロンとした潤んだ瞳がさらに求めてきた。
もう一度、軽く息切れする唇を覆うように合わせて口の中を蹂躙してやった。
ーガチャー
「シンシア?ケンちゃ~ん!!」
突然、リビングの扉が開き、上機嫌なルルと龍樹が入ってきた。
成瀬が慌てて離れようとする。
高瀬は不満そうに、二人を睨みつけると、もう一度成瀬に口付けた。
「ちょ……シンさん……」
バタバタと成瀬が動き、満月が不満そうに足を踏み鳴らしてケージに向かっていった。
「動くな。もう一回だ」
「や、ルルさんも龍樹さんも見てますから」
「関係ない」
「あります」
成瀬の手に口を塞がれて、高瀬は成瀬にのしかかるのをやめた。
「なんか、ごめんね」
「オートロックの意味わかってるか?」
「ちょうど人が出てきてたのよ」
「ケンも、鍵かけろ」
「ごめんなさい」
完全に機嫌を損ねた高瀬のイライラに、成瀬は素直に謝る。
そのやりとりを見て、ルルは苦笑しながらちゃぶ台にワインを置いた。
その後ろから、龍樹がルルの背中にのしかかった。
「僕も、キスしたい……豪……気持ち良いのしてあげるから……」
龍樹はだいぶ酔っているのか、グラグラと頭を揺らしている。
「わかった、あとでね。今は、シンシアとケンちゃんに大事な話があるでしょ」
「う~~~ん?そう!そうだ!」
そう言って、龍樹は座り込み、話すのかと思ったら目を瞑った。
「話ってなんだ」
高瀬が低い声で問いかける。
「もう、機嫌直してよ」
「お前らが悪い」
高瀬の態度がなんだか子供っぽくて、成瀬はニヤリと口角が上がった。
「そうね、ごめんなさい。それより、シンシア…………心配したんだから……」
「…………あぁ……悪かった……」
ルルは高瀬の前に座り込み、ゆっくりと確認するように高瀬に腕を回して抱きしめた。
「大丈夫?」
「あぁ、もう大丈夫だ。全部。ありがとう」
高瀬もルルの背中に手を回す。
抱き合う二人は、初対面でも思ったように、恋人のようで成瀬は心の中がモヤモヤとした。
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