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第24話 酔っ払い研究者とウサギが戦い始め、恋人は甘えたすぎる

 高瀬とルルのなんだか甘い雰囲気に、成瀬は視線を逸らした。  その先に、龍樹が見え、その口には満月の乾燥牧草が咥えられている。 「た、龍樹さん?それ、食べられませんよ?」  バンバンと、満月が足を踏み鳴らしている。 「ん?君が満月くんだね。可愛い、綺麗な目をしてるね」  龍樹が伸ばした手に、満月がサッと距離を取る。  その様子に、龍樹の口角がニヤリと上がった。 「あー、ダメね。なんかスイッチ入っちゃったみたい」 「……スイッチ……?」 「大丈夫よ。手荒なことはしないから」  そうルルに言われるが、成瀬は多少不安がよぎる。 「えっと、そうじゃなくて、話させて?」 「あぁ、なんだ」  ルルは改まって座り直し、高瀬と成瀬に向いた。 「たっちゃんがね、どうしてケンちゃんだけがシンシアを落ち着かせられるのか気になってて。ケンちゃんのご実家に行きたいんだけど、どうかしら?」 「え、うちの実家ですか?」 「そう、なんか昔話が気になるみたいなの」 「昔話って?」 「むかーしむかし、たくさんの動物を統べる事ができた仙人がいましたとさ……」  ルルは神妙な顔で話し始めるが、途中で止まってしまった。 「なんだっけ?たっちゃん」 「あっ、大丈夫ですか?!」  三人が龍樹に振り返ると、龍樹はうつ伏せで寝ていた。  その背中に満月が乗っていて、バシンと足を踏み鳴らす。  そして、まるで勝利のポーズのように後ろ足で立ち上がった。  ウサギのスタンピングは、時に人の肋骨も折るほど強力だ。  成瀬が満月を抱き上げるが、龍樹はスヤスヤと眠っていた。 「あらら、ま、怪我はなさそうね」  ルルは龍樹の服をめくりあげて確認すると、ポンポンと頭を撫でた。 「とにかく、なんかね、地元に行けばわかるんじゃないかって言うのよ。ケンちゃんお正月帰るんでしょ?」 「はい。帰るつもりです。シンさんと」 「一緒について行っちゃダメかしら?」 「良いですよ。泊まるの納屋みたいな部屋ですけど……」 「ふふっ、いいじゃない楽しそう」  快諾した成瀬に、高瀬はジトリとした目線をむけた。 「出発は明後日だ。ケン、今日は俺の部屋にいくぞ」 「え、ちょっと……」  高瀬は成瀬の腕を掴むと、玄関に向かおうとする。 「私たちリビングかしてもらえれば大丈夫よ?少ししたら、たっちゃん起きるだろうし」  ルルの言葉に、んーともうーとも言えない声で、小さく高瀬が唸る。  その様子を察して、ルルが苦笑しながら付け加えた。 「あ、でも起きないかもしれないものね。私、ここの片付けやらせて欲しいし、満月ちゃんの面倒は見慣れたから任せて、ケンちゃん」 「いや、悪いですよ」 「いいから行きなさい」  ピシャリとそう言われ、成瀬は姉を思い出した。 「あ、あの、夕飯適当に食べてくれていいですから!」  高瀬に腕を引かれながら言う成瀬に、ルルは笑顔で手を振った。 「シンさん、ちょっと酷かったんじゃないんですか?片付けまで押し付けるのは……」 「あいつらが悪い。実家まで着いてくるなんて……」 「いいじゃないですか。みんなで旅行楽しみです」 「………………」 「シンさん……」  成瀬は高瀬のベッドに座り、両手を広げた。  戸惑うことなく、高瀬は成瀬を抱きしめる。 「お正月は家族がいるんで、二人だけの旅行はまた今度ですね」 「そうだな。どこに行きたい?」 「……仕事、一緒に休めるかな……」 「…………今回が特別だろうな……」 「ですよね……」  二人一緒にため息を吐き、ベッドに沈んでいった。  高瀬の耳に、隣の部屋の物音が聞こえ、多少イライラとする。  今頃仲良くやっているのだろう。 「ケン……」  成瀬の服の中に手を入れると、その手を掴まれた。 「今日は、ゆっくり寝ましょう?俺、我慢しますから……」 「…………我慢なんて……」 「ダメです。シンさん疲れてるでしょ……あんなに苦しそうだった……」  成瀬が高瀬に向くように体勢を変えてきて、背中に手を回し、撫で始める。  リズムよく撫でられる感覚に、次第に体が暖かくなってきて、瞼が重くなった。 「眠ってください。でも、明日は……気持ち良くしてくださいね……」 「ん…………」  成瀬の匂いを嗅ぎながら、高瀬は目を閉じた。

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