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第38話 物置で秘め事。物足りない恋人をなだめてキスをしてたら……

 車を降りて、成瀬に手を引かれて来たのは、駐車場から続く物置きだった。  手作りなのか、色々な廃材を使って作られているその建物は、農機具が少し置いてあるのと、小上がりに二畳ほどのスペースがあり、米袋が数個積まれていた。  その米袋の隣で、成瀬を組み敷いている。  欲の発散を手伝うだけだと思っていたはずだが、数回果てた後に、くださいと懇願されてしまい、今、成瀬を突き上げ、限界が近い。 「んぁっ……だめ……やっ……あぁっ……」  行為中の成瀬の否定は、全て肯定だと高瀬は学んだ。  以前は、否定の言葉のたびに中断していたが、一度、恥ずかしそうに続けても良いということを教えてくれた。  良い所に当ててやれば、ダメだと首を振られる。  気持ちが良いサインだ。 「もっ……イクっ……シンさん……っ……」 「あぁ……」  ググッと奥の方へ入り込んで、成瀬を決壊させれば、ほぼ同時に締め付けられ、高瀬も欲を吐いた。  暖房も無い物置で、うっすらと汗をかいている二人の吐息が、だんだんとおさまっていく。  スゥッと引いていく快感が惜しくして、成瀬を抱きしめ口付ける。  しかし、ここは成瀬の実家の物置だ。  陽もだいぶ傾いてきている。  惜しいが離れなくてはいけない。  高瀬が体を起こそうとすると、成瀬の目がねだるように見つめてきた。 「もう、夕飯だろ」 「まだ、足りない……」 「我慢だ。明後日には帰るだろ」 「帰ったら、いっぱいしてくれますか……?」 「…………わかった……」  いっぱい……  成瀬の言ういっぱいは、本当に沢山の意味だ。  高瀬は明後日の自分にエールを送った。  物置を出ると、山からの冷たい風で、汗ばんだ体が一気に冷えた。  成瀬はブルリと体を震わせて、高瀬に向く。 「どうした?」 「ここ、まだ死角だから、最後に一回だけ」  体が冷えて温もりが欲しくなったのだろうか、高瀬に抱きつき、少し背伸びをされて口付けられた。  高瀬もそれに応える。  離れ難いのは同じだ。  神社の裏手の祠で、仙吉は語りかけていた。  もう、ルルも龍樹も神社に降りて、自分の声を聞くのは祠の子供神と狛犬のような石像だけだ。 「野良吉よ、健一がな、獣人を連れて帰ってきたんだ。虎だってよ」  あたりに鬱蒼と生えているクマザサがサラッと音を立てた。  聞いてくれているのだと、仙吉は続ける。 「ありゃ、だいぶ惚れてる。別に男だからってなんか言うつもりもないけどな、俺はどうも健一に肩入れしちまうんだ。他に孫は沢山いるのにな。あいつだけは特別なんだよ。お前も、健一の相手見たんだろ?半獣化させてくれたみたいじゃねぇの。ここら辺じゃ獣人知らない奴も多いんだから、みんなをビビらすんじゃねぇよ」  軽く笑って言えば、風で祠のしめ縄が揺れカラカラと音が鳴った。  良吉の優しい笑顔を思い出す。 「お前がそっちに行ってから、俺の力も無くなった。もう用済みだろ。婆さんもお前のすぐ後に逝っちまうし、寂しいじゃねぇか。健一ももう大丈夫だ。そろそろ俺もそっちいけねぇかな。会いてぇな。みんなによ」  木々がザワザワと大きくしなり、カランカランと枝が鳴り響く。  仙吉の耳に、微かに犬の鳴き声が届き、次に、小さな枝が頭を直撃した。 「痛って……くそ、まだ許されねぇのか、お前、そっちで婆さんとよろしくやってたら承知しねぇぞ!」  応えは無い。  そもそも、誰も話は聞いていないのだ。  ここは良吉の墓でもなんでもない。  仙吉は苦笑しながら立ち上がると、供えた握り飯を一つ口に入れた。  意趣返しのつもりだ。  長い口付けの後、背伸びが疲れたのか、成瀬が離れた。  しかし、見つめ合う目線は逸らさない。  もう一度、今度は高瀬が屈み、成瀬の口に唇を合わせると、ピピーっと原付の警笛が鳴らされた。 「何してんだ、犬っころ!」  同時に聞こえたのは仙吉の罵声だった。 「じっ、爺ちゃん!?ど……どこ行ってたの?」 「どこだっていい!犬っころのくせに健一に何してくれてんだ!」 「ち、ちが……これは……」  原付を適当に止めて仙吉はヘルメットを外しながら、ドスドスと駐車場の隅へとやってくる。  成瀬は弁解しようとするが、そんな余地など微塵もない。  高瀬は、ペコリと軽く頭を下げて、はっきりと言った。 「キスをしていました。健一くんとは、お付き合いをさせていただいています」 「おっ……き……すだとっ!?」  高瀬の態度に面食らったのは仙吉だ。  取り乱すかと思いきや、何か覚悟を決めたように強い目をしていた。  まるでどこかの犬っころのように。 「そ、外で接吻かますような奴に健一はやらん!もう飯だ、さっさと来い!」  早口で捲し立てて言うと、仙吉は母屋に入って行った。  駐車場からなら、玄関から入る方が早いのに、なぜか居間のある縁側へ回って行く。  そう、体に染み付いているようだ。 「あ……シンさん……?」  仙吉を見送ると、成瀬が真っ赤になって高瀬の腕を掴んでいた。 「余計だったか?」  今言ったことがまずかったかと問えば、勢いよく首が横に振られた。  そして、満面の笑みで抱きついてくる。 「夕飯の時、みんなに紹介し直します!」  成瀬の言葉に、高瀬はありがとうと抱きしめ返した。

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