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第39話 日本文化を語ったら、爆笑されて、嫉妬されて、キスに巻き込まれた。
「明けましておめでとうございます」
成瀬の父親、和也の掛け声で、成瀬家の正月が始まった。
朝から酒が振る舞われ、豪華なおせちを囲んで、みんなで正月番組を見る。
特別なことは無いが、特別に普通の正月だ。
成瀬は、昨日の晩、年越しそばを啜る家族に高瀬との関係を伝え直した。
ルルは穏やかに、照れ顔の成瀬を見つめ、微笑んでいる。
龍樹は、胡桃ダレが気になるのか話半分に聞いていた。
そして、成瀬の家族もほぼ龍樹と同じ反応だった。
驚かないのかと言う成瀬に、最初から分かっていたとほぼ全員、春樹までもがそう返した。
ただ一人、仏頂面で蕎麦を啜る仙吉以外は。
改めてよろしくお願いしますと言った高瀬にニコニコと笑顔を返す家族の中で、仙吉はパチンと乱暴に箸を置いた。
それ以来、仙吉の声を聞いていない。
成瀬は、ひとまず家族に話ができたことが嬉しくて、多少照れながらも高瀬の横でおせちを食べていた。
「シンさん、これ美味しいですよ。伊達巻き。伊達男になれるんです」
「伊達男?」
「何それ!どこで教わったの、それ!」
成瀬の説明に、幸恵が笑い転げる。
高瀬も急に笑い転げる幸恵に驚く。
「ま、間違ってないだろ、だからバレー部みんなで食べたんだよ」
「はははっ、バレー部の男ってほんとにバカっ!!」
幸恵は酒の勢いもあるのか笑いがとまらない。
「伊達巻きは巻物に似ているから、知恵を増やすという縁起物だよ。派手な見た目だから伊達巻きって言われるようになったらしい」
龍樹が検索ツールのようにツラツラと応えてくれた。
「え、伊達男にはなれないんですか?」
「なってもいいんじゃないかな。でも、僕は成瀬くんにはシンプルな方が似合うと思うけどね」
「そうね、この前貸したTシャツは派手すぎて似合わなかったものね。着られちゃってる感じ?」
ルルも、いつだか店に飛び込んできた汗だくの成瀬に貸したTシャツを思い出して笑う。
「「待て」」
高瀬と龍樹が同時にルルに向いた。
「なんでTシャツを貸した?」
「何があった?」
二人の圧に、ルルは身を引きながら、冷や汗を流す。
やましいことは何もないが、執着が激しめのこの二人は少し怖い。
「ケンちゃん……」
目で成瀬に訴えれば、高瀬の腕を引いて自分の隣に戻してくれた。
「俺が汗だくだったんです。風邪引くからって貸してくれたんですよ」
「汗だくっ?!」
「あっはははっ、健一説明下手!!何それ、浮気じゃん!」
幸恵はことさら大声で笑い、バシバシと成瀬の背中を叩く。
「浮気じゃないよ!俺は、シンさん一筋だって!!」
「うるせぇぞ!酔い潰れる前に、初詣行ってこい!」
成瀬の勢いの告白に、幸恵がからかいの言葉を返す前に仙吉が場を沈めた。
「ごめん、爺ちゃん……」
御嶽神社は、餅つきの時より賑わっていた。
境内の参道には列が出来ていて、地元のボーイスカウトが甘酒を配っている。
ルルは、小さい男の子から甘酒を受け取って、笑顔でお礼を言う。
「あの子にもTシャツを貸すのか?」
「もう、たっちゃんしつこい」
「しつこくもなる。僕が日本にいない間に、何人に笑いかけた?」
「うわ……その質問、そっくりお返しします~」
「僕は人に笑いかけない」
「そうだけど」
ルルは甘酒に口をつけ一口飲む。冷えた体にホッとする暖かさだ。
自然に微笑むと、龍樹は甘酒に鋭い視線を向ける。
「何?飲みたいの?」
「違う。豪が僕以外に口をつけている」
「も~、分かったわよ」
よくわからない独占欲に、ルルは龍樹に軽くキスをした。
「これでい……んっ……ちょ……」
龍樹はルルを掻き抱いて唇を合わせる。
舌を絡め深く深く口づけている。
見ている成瀬が赤面するほどだ。
「やめろ。周りに迷惑だ」
周りの参拝客は一部始終を聞いていたのか、クスクスと笑っている。
ボーイスカウトの子供たちは運良く誰も見ていなかった。
「んっ……はっ……もう……」
高瀬が二人を引き剥がすと、ルルは溶けた顔で浅く息を切らしていた。
龍樹はムッとした表情のまま、高瀬を見る。
「じゃあ、臣が相手をしてくれ」
「なっ?!」
成瀬の顔が、別の意味で紅潮し、呆れる高瀬と迫る龍樹の間に体を入れ込んだ。
「だめ、ダメですよ!」
「本気にするな。俺だって嫌だ」
「成瀬くん、僕は君を恋敵と認定するよ」
「えっ!?」
「もう、気にしないで、ケンちゃん。ごめんね」
参拝の列は進み、四人並んで賽銭を投げた。
高瀬は意外にも神社の参拝の作法を知っていた。
成瀬が不思議そうに見れば、社会人として常識だろうと言われる。
そういう姿は、本当に格好良いのだ。
成瀬が照れ笑いをしながら視線を逸らすと、バレー部のメンツが、何やら資材を運ばされていた。
成瀬の視線に気づいた一人に呼ばれる。
「ケンチー!餅撒きやろうぜ!人足りないんだって。撒く人が!」
「えっ、やりたい!!」
成瀬は嬉々として、高瀬の腕を引っ張って連れて行こうとしたが、高瀬はその手を抑えた。
「やりましょうよ、シンさんも!」
「いや、俺は、目立つだろ。怖がられる」
「あー、でも、大丈夫じゃないかな」
「お前が投げた餅を下で取る。行ってこい」
高瀬は優しく微笑んで、成瀬を送り出した。
名残惜しそうな成瀬の顔が可愛いと思いつつ、いまだに小競り合いを続ける龍樹とルルの仲裁をしに向かった。
放っておくと通報されかねないからだ。
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