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第9話 ソムリエがベンネの収穫をするとセンシティブ判定
「あー、そっちに回ってください。植物はそこの牧柵からは入ってきませんから」
熊のような影は、壁沿いにある入り口を指す。
よくよく見れば細い牧柵が張り巡らされており、そこから壁までは植物は這ってこない。
蓮とバルドはふぅと一息ついて、車に乗り、入り口へと向かった。
農場の入り口から見る景色は圧巻だった。
ベンネの畑が広がっているものだと思ったら、様々な果実が植えられていた。
「すげ……」
両側に背の高い果実の木があり、真ん中に小道がある。遠くまでずっと続く一本道の先は地平線のようにも見えた。
「スーハにデュラン、シュルリ、キャルカもある!」
「蓮が好きなワインだな」
特に好みを伝えた覚えはないのに、バルドはしっかりとわかっている。
蓮は黙ったまま照れくさそうに運転する。
車は果実畑の細い農道を走り、建物へと到着した。
「やぁ、大丈夫でしたか?あの森を抜けてくる人いるんですね」
さっきの熊の影が近づいてきて、ようやく顔が認識できた。
熊の獣人かと思ったら、尻尾も無く、耳も人間だった。
蓮は本当に人間なのかとジッとその人を観察する。
「いやぁ、助かりましたよ。結構危険な森でした」
「怪我がなくて良かったです。こっちの道から来た方が遠回りなんですけど安全ですよ」
熊のような人間が示す道は、日陰になっている道だった。
「やっぱ、あそこで間違えたのか」
蓮はじっとりバルドを見るが、無地に辿り着けて良かったと本人は笑っている。
「で、何か御用ですか?」
「あ、すいません。ソムリエの蓮と言います。こっちはバルド。ノーティスさんの弟子です。これを、紹介状として預かってきました」
蓮は綺麗に礼をして、ノーティスの手紙を渡した。
「事前にご連絡をいてから伺わせてもらおうと思っていたのですけど、ご連絡がつかなったもので、突然すいません」
「いえいえ、いいですよ。ノーティスさんの弟子ね。ノーティスさん?」
「えっと……昔からのご友人と聞いていたんですけど……」
「象の獣人のノーティスです。コラッパ村でレストランをやっています」
「あ、あぁ!ぞうさんね。はいはい。あの人もあの森抜けてくるんですよね。あと、変な種持ってきては変な果実を育ててるって。変な人ですよね~」
(変な人は同感です)
蓮は営業スマイルを貼り付けながら差し出された手に握手で答える。
その握力の強さに顔を顰めそうになるが、なんとか堪えた。
バルドは平然と右手を差し出して、顔を歪めていた。
(また折れたか?)
そっとバルドの手を見れば、大事には至っていないようだ。
熊みたいな人間は、八郎と名乗った。
地平線の向こうから順に、一郎、次郎と畑を任されていて、この森の境にある端が八郎の畑だという。
「それで、ノーティスさんからはベンネを見せてやってくれって書いてあるけど、収穫手伝ってくれるんですか?」
突然来た客に、八郎は嫌な顔をせず、すぐさま農業用のつなぎを差し出していた。
「いいですね。やりたいです」
差し出された作業服にひき気味の蓮とは違い、バルドは生き生きと受け取って、着替え始めようとする。
「ありがとうございます。助かります」
「任せてください!」
バルドは大見栄を切るが、全く服が脱げない。
フゥンと子供のような目を蓮に向けて子犬のような声を出してきた。
「可愛くないからな……」
蓮はため息を吐きながら手伝ってやり、自分も着替えた。
八郎に連れてこられたのは、壁沿いの畑で、すぐそばにさっきの植物が蠢いていた。
「本当に、ここ大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。蓮さん、つなぎ大きかったですね。脇スカスカで逆に動きづらいですか?すみません」
「いえいえ、気にしないでください。それに力仕事は役に立てるかどうか」
「多分、蓮さんが一番役に立ちますよ」
「え?」
八郎は不思議そうな蓮に、爪先から頭まで視線を送って、うんと頷いた。
ベンネと書かれたプレートの畑には、森の植物のミニチュアがいた。ガサガサと動く蔦に、赤い果実がぶら下がっている。
「あの、あれ、なんか溶かすやつ落としてきませんか?」
「あぁ、森で見ましたか?大丈夫ですよ。改良して酸は出さなくなりました。さ、蓮さん、収穫のお手伝いよろしくお願いしますね」
「え、あ、はい。何をすれば…………」
バルドと一緒に畑へ入っていけば、八郎が手招きをして、ここで立っていろと言う。
「バルドさんは背が高いので、赤く熟れた実を採ってもらえますか?クルッと捻れば取れますので」
「わかりました。これとか大丈夫ですかね?」
バルドはゴソゴソ動く蔦をよけて、赤い実を指し示す。八郎からOKが出ると果実を捻り採った。途端にガサガサっと葉と蔦が寄ってきて、威嚇するようにバルドの腕に絡みついた。
「わっ、これは厄介ですね」
「そうなんですよ。こうやって収穫を邪魔されるんで、なかなか市場に出す数が増やせないんです」
(それを薫は独占で卸させてるってすごい事したんだな)
蓮が薫の営業力に感心していると、横から蔦が這ってきて様子を伺うかのように蓮の足に絡みついてきた。
「う、うわっ……」
「大丈夫か?蓮!」
「あー、蓮さん。そこから動かないでくださいね。ジッとしていてもらうのが蓮さんの仕事ですよ」
「え、あ、はい…………や、でも……これ……」
八郎は朗らかに笑うが、蓮の周りには蔦と葉が集まり、つなぎの裾から中へと侵入してくる。
(ま、待て待て待て、本当に喰われないだろうな)
やがて、腰まできた蔦は、シャツの中を上がってきた。
ゾクリと蓮が反応をする。
腰骨から、脇腹を這われ、肋骨に沿って胸元を上がってくる。
「あっ……んっ……まっ……」
バルドと八郎に助けを求めようとするが、二人はどんどんと奥へと進んで楽しそうな話し声も聞こえてきた。
(くそ……これ囮作戦だろ……八郎の奴……)
ようやく気づいたが、時すでに遅しで、蓮はあっという間に蔦に動きを封じられた。
バルドの舌とは違う、這われる感触に、身を捩る。
ブルっと震えて、息が上がってくると、触れている蔦が温かくなってきた。
同時に、粘液のようなヌルリとする感触もある。
クチャリクチャリと蓮の身体を這う蔦は、どうしようもない快感を引き出してきた。
「ぁふ……んんっ……あっ……」
蓮の反応が良い胸元を執拗に弄り、蔦は下半身の下着の中まで入ってくる。
(こ、こいつら、人の反応を分かってやがる……的確に……)
ゆるいつなぎのおかげで、蓮がしっかりと勃ち上がっても苦しさはない。
むしろ、簡単に果ててしまいそうで、蓮は目をつぶり歯を食いしばった。
バルドの怪我からの禁欲のおかげで、蓮の感度は上がっている。
(やっぱり昨日抱いてもらうんだった……)
ジワリと浮かんだ涙が落ちると、一瞬、蔦の動きが弱まった。
(は?)
蓮が目を開けると、ハラハラと涙がこぼれていく。
蔦はスルスルと服から出て行って、謝っているかのように、地面にへばり付いた。
「えっと、嫌がってんの、分かってくれたのか?」
チョンと蓮の足に蔦が触れる。
(マジかよ、意思疎通出来んの?)
「じゃ、じゃあ、果実分けてくれねぇか?」
トントントンと考えるような仕草で地面を叩いた蔦は、スルッと蓮の頬を這ってきて、唇を撫でた。
そして、降りてきたのは、赤い果実。
「…………キスしろって?」
半信半疑で蓮がキスをすると、蓮の手にポロリと果実が落ちた。
採れたての実は、華やかな香りで、蓮の喉が鳴った。
バルドと八郎の姿はまだ遠い。
(これ、あいつが匂いで分かったりしたらベンネ燃やしそうだな)
「バルド、早く帰ってこないと、俺こいつと浮気するぞ……」
おさまらない下半身の熱に身を捩り、蓮は果実に口付けをしていった
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