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第40話 重なる嘘※

 ふと、自嘲の笑みが浮かぶ。それを隠すように、俺は自らオルヴァ様にキスを仕掛けて、両腕をオルヴァ様の首にするりと絡めた。 「オルヴァ様、ベッドに行きましょう」 「……あ、ああ」  オルヴァ様は俺をひょいと横抱きにして、ベッドにそっと横たえた。俺の上に四つ這いになろうとしているオルヴァ様の頬はうっすら赤く、瞳はひどく真剣だ。  いったい何を思っているのだろう。感情の読めないオルヴァ様の視線を受け止めることができなくて、俺はふいと視線を逸らし、逆にオルヴァ様をベッドに押し倒す。  そしてそのままオルヴァ様の下履きに手をかけ……半ば勃ち上がったオルヴァ様のペニスに、俺は迷わずキスをした。 「へっ……!? ちょっ、リオン、何を……!?」 「動かないでください。まずは、ええと……刺激に慣れていただこうかと」 「し、刺激……!? だ、だめだそんな汚いものに、口を……っ、ァっ……」  ぱく、とオルヴァ様の先端を口内で柔らかく包み込む。驚きと怯えを含んだような表情で俺を見ていたオルヴァ様の腰がびくんと震え、吐息が乱れた。 「な、なんでこんなことを……っ、はぁ……」 「これは口淫といって、口で男性を昂らせる行為なんですよ」  亀頭に舌を這わせて柔らかく根元を扱きながら上目遣いにオルヴァ様を見上げると、顔を真っ赤にしたオルヴァ様の戸惑い切った表情がそこにある。だが、嫌がって腰を引いたりはしないようなので、俺はそのまま、くっぽりとオルヴァ様の性器を口の中いっぱいに頬張った。 「ぁ……はぁ、はぁ……」  ゆっくりと頭を上下してピストンするたび、オルヴァ様の色っぽい吐息が俺の鼓膜を震わせた。フェラなんて生まれて初めてやったけど、オルヴァ様のコレなら余裕でいくらでも舐めていられる。  みるみる硬くなっていく竿に舌を絡めながら吸い上げると、びくっ! と腰を跳ねさせて、抑えた声を漏らすオルヴァ様が可愛くてたまらない。じわりと口の中に広がる先走りの味でさえも愛おしく、俺は夢中になってオルヴァ様のペニスをしゃぶった。 「はぁっ……は……はぁっ……リオン、もう、やめてくれ」 「ん……? どうしてですか?」 「も、もう……出てしまう。だから」 「……いいんですよ、出してください。俺の口の中に」 「えっ!? だ、だめだそんな! そんなひどいこと、できるわけが……っ」 「ひどくありませんよ。……ね、飲ませてください、俺に」 「う、ぁっ……!」  俺の唾液でとろとろに濡れそぼったオルヴァ様のペニスを、ひときわ激しく愛撫する。ずっしりとした陰嚢を揉みしだきながらピストンを繰り返し、オルヴァ様を責め立てる。フェラをやめさせようと俺の肩を掴むオルヴァ様の手には、まるで力が入っていない。  初めての快楽に抗えず、淫らに息を乱すオルヴァ様の性器は硬く硬く張り詰めて、今にも破裂してしまいそうだ。 「んっ……リオン、だめだ、はぁ……っ、もう……!」  ちょうど喉奥で先端を締めつけた瞬間、びゅるるっ!! と熱いものが迸った。思わず咳き込みそうになったけれど、オルヴァ様の精液を一雫たりともこぼしたくなかった。 「っ……はぁ、はぁっ……リオン……っ」 「ん……けほっ、すごく、いっぱい……」 「だ、出すんだすぐに! そんな汚いもの……!」 「汚くなんて、ないです。……オルヴァ様のものだから」 「っ……何を言って……」  精液を残さず飲み干した俺を、オルヴァ様が信じられないものを見るような目で見ている。だが、目にはまだ興奮が滲んでて、吐精の余韻がオルヴァ様の表情をひどく淫美なものに見せていた。 「せめて水を……! さあ、飲んで」 「は、はい……」  よほど慌てているのか、ベッドサイドの水差しから直接俺に水を飲ませてくるオルヴァ様だ。  顎を仰かせてごくりと喉を鳴らしていると、口の端から溢れた水を、オルヴァ様が袖口で拭ってくれた。 「ありがとうございます……」 「……ふ、普通のことなのか。あんな……その、口淫というのは、皆やるものなのか?」    少し落ち着いたのか、オルヴァ様が微かに震える声でそう尋ねてきた。  ——……やばい。勢いでやっちゃったけど、上品なご令嬢たちは絶対しなさそうなプレイだぞ……  だが、やってしまったものはもう遅い。俺は曖昧に微笑んで、「ふ、普通じゃないですけど……まあ、好きな人は好きなんじゃないですかね……?」と曖昧極まりない答えを返しておいた。  するとオルヴァ様は大真面目な顔で、俺の股座をじっと見つめてきた。 「リオンも……好きなのか?」 「え? いや、俺は……わかんないです。されたことないので」 「えっ?」 「あ、いや! 今はそんなこと、どうでもいいっていうか……」 「どうでもいいわけないだろう」 「わっ!」  手首を掴まれたかと思うと、そのままベッドに押し倒される。四肢で俺を閉じ込めるように四つ這いになったオルヴァ様の瞳は真剣だった。 「僕もしたい。リオンに」 「へっ……!? い、い、いいです、必要ないですって!」 「でも、こんなに大きくなってるじゃないか」 「ひ、ぁっ……」  手首をベッドに押し付けられたまま股間をぐいと揉みしだかれ、痛みと快楽とがないまぜになった刺激が襲ってくる。オルヴァ様の握力は俺の比じゃないから、握られた場所がけっこう痛い。俺は何度もかぶりを振った。 「あ、あの! オルヴァ様は力が強いので、ご令嬢相手にこんなふうにしちゃいけませんよ!」 「……え? あっ……すまない!」 「俺はいいですけど、女性は柔らかくか細い存在です。優しく、柔らかく接してあげてください」 「……わかった」  オルヴァ様はしゅんとなって、ふわっと手の力を弱めた。だが俺の手首を離すことはなく、むしろするりと指と指が絡まり合って……恋人繋ぎになった。 「……あ、あの……」 「これは、どうだ?」 「あ、はい。痛くないです……」 「キスをしたときも、強引すぎたか? どこか痛いところはあったか?」 「い、痛いところなんて、ひとつも……」 「本当に? ……じゃあ、これは?」 「っ……ぁ」  さわ……とシャツ越しに胸の尖りを淡く撫でられ、思わずか細い声が出る。自分でもびっくりするような淫らな声音だ。咄嗟に空いた手で口を押さえたが、オルヴァ様は乳首への愛撫をやめてはくれない。 「っ……あの、オルヴァ様っ……ん、ん」 「感じている時は尖ると書物に書いてあったんだ。……どうだろう、気持ちいいのか?」 「っ……はっ……はい、っ……」  自分でするときも乳首はいじる。開発済みのそこに、オルヴァ様から与えられる刺激はあまりに強い快感だった。びく、びくっと身体が震え、擦られるたびに「ふっ」とか「ぁっ」と声が漏れてしまう。じわじわペニスに熱がこもってゆく感覚もあり、俺は焦った。 「や、やめてください! もう、上手なのはわかりました、からっ……!」 「正直に言ってほしい。じゃないと訓練にならないだろう?」 「だ、だって……ほんとに、きもちいい、から……っ、も、これいじょう、されたら……っ」  正直かなり限界だ。もう、軽く胸を弄られただけで出てしまいそうなのだ。  ——キスされて、フェラしてるときからけっこうイキそうなのに、こんなことされてたら、俺……っ!  なのにオルヴァ様は乳首攻めを止めるどころか、俺の寝巻きの前を器用に片手で開くやいなや、ツンと尖った俺の性感帯に舌を這わせてきた。 「あっ……うそ。や、やめてくださ……ん、はぁっ……オルヴァ、さまっ……!」  身を捩ってもオルヴァ様は動きを止めず、もう片方の乳首も指でいやらしく弄ってくる。こんなふうに人に——しかも、想いを寄せている相手にこんなにも気持ちいいことをされるのは初めてだ。  鋭敏になった感覚に甘い甘い快楽をこれでもかというほどに叩きつけられ、俺はオルヴァ様の下で身をくねらせる。 「はぁ……っ、ぁん、っ……ん、んっ……」 「リオン、……気持ちいいかい?」 「ん、っ……はい、きもちいい、っ……も、出ちゃいそ……」 「胸をいじられるだけで?」 「だって、オルヴァ様とするの、きもち、よくて……っ、んっ」 「……」  息も絶え絶えで涙目になりながらそう訴えると、オルヴァ様の瞳がぎらりと光り、雄の凄みを帯びていく。うっとりするほど美しい瞳に見惚れていると、濃厚で深いキスが、ふたたび俺の唇を封じた。 「っ……ンっ……ふぅっ……ん」 「リオン……どうしてそんな、可愛いことばかり言うんだ」 「はぁっ……ァっ……ぅ」 「どうして……」  オルヴァ様は何か言いかけ、つと黙る。そして問いを無かったことにするかのように濃密に俺の呼吸を奪いながら、とうとう俺のペニスに直接手を触れてきた。 「あっ……! オルヴァ、さまっ……」 「こんなに溢れさせていたんだな……ああ、なんていやらしい」 「っ……ごめんなさい、っ……はぁっ、ア……っ」    大きな手で扱かれるたびにちゅくちゅくと淫らな水音が響いて聞こえる。キスであやされながら、昂り切ったペニスをやわやわと扱かれ、気持ちよくて気持ちよくてたまらない。  気づけば俺はあられもなく脚を開いてオルヴァ様の手に合わせて腰を揺らし、快楽を貪っている。両腕をオルヴァ様の首に絡めて自ら彼の舌をしゃぶり、くぐもった喘ぎを漏らしながら腰を振るうち、とうとう俺は達してしまった。 「ぁ、はぁ、イク、イく、んんっ——……っ……!」  快楽で溢れかえった俺の身体を、オルヴァ様はしっかりと抱きしめていてくれた。真っ白になった頭では何も考えられない。ただただオルヴァ様が愛おしく、この人に抱き留めていてもらえる幸せだけが俺の全てを満たしている。 「はぁっ……はぁ、オルヴァ様、オルヴァさま……っ……」 「……ん?」 「っ……は……はぁ……おれ」  絶頂後の痺れた身体が重い。震える指先でオルヴァ様の頬を撫で、俺は…… 「……抱いてください」 「え……?」 「……奥様を抱く練習を、俺で、してください」 「リオン……」  つう……と頬を伝う涙の感触がある。俺はオルヴァ様の裸の胸にそっと額を寄せ、訴えた。 「……これは訓練です。訓練、だから、俺の中に子種をください」 「で、でも」 「さっき、湯浴みのときに準備をしておいたんです。女性のようにはいかないかもしれませんが、濡れています、から……」  オルヴァ様の手を取って、そっと後ろへと導いた。  街でこっそり仕入れてきたものの中に、性行為で使うジェル状の薬品がある。女性のように濡れ、中で出された体液を腸内へいかないようブロックする作用のあるものだ。  コンドームがないかわりに、この世界では一般的に使われているものらしい。男女問わず使えるものだと、薬屋の主人に説明を受けた。 「……っ……こんなに濡れて、やわらかく……?」  オルヴァ様に触れてもらった場所は、とろとろと濡れてとろけている。こうなることを予期して……いや、俺自身が望んでいたから、準備をしておいたのだ。 「ください、中に……。俺の中で、達してください」  身を寄せたオルヴァ様のペニスは、すでに硬さを取り戻している。むしろフェラをしたときよりも硬く硬く張り詰めて、下腹にくっつきそうなほどそり返った長大なそれに、俺は自ら腰を擦り寄せる。  するとオルヴァ様は小さく呻いて、ぐいと俺の腰を抱き寄せた。 「本当に、いいのか?」 「もちろんです! 俺……ほら、慣れてますから」 「……そうだったね」  苦しげに微笑むオルヴァ様の表情が、痛い。  俺は半ば強引にオルヴァ様にキスをして、お互いの視界を塞いだ。  ——……これでいい。オルヴァ様に抱いてもらった思い出を一生の宝物にして、これからもこの世界で生きていこう。

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