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第45話 こんなことになるのなら※
ソファでうつらうつらしていた大柄男がゆらりと立ち上がる。ゾッとした俺は咄嗟に膝を折り曲げ、壁に背中を押しつける。
「く、来るな……! 俺は大事な商品なんだろ!?」
「ちょっとしゃぶらせるくらいならいいだろ? なぁ? 元お貴族様のシュルツさんよ」
「……はぁ。ちょっとは我慢できないのか」
卑しい視線とともにぞっとするような悍ましいことを言われ、身が竦む。だが小男のほうがきっと制止するはずだ。だって俺は、大事な商品……
唐突に、足元が抜けるような不安と絶望が迫ってくる。
——……そうか、俺はこのまま売られて奴隷にされるんだ。カイゼル様が言っていたように、性奴隷として全身を弄ばれるのか……?
ここは、王都からどれくらい離れているんだろう。俺はどれだけ意識を失っていた?
雨戸が閉まっているから、外が明るいのか暗いのかさえわからない。何時間かけてここまで連れてこられたのだろう。
——婚活パーティ、とっくに終わってるんだろうな。
俺がいなくなって、多少はみんな戸惑ったかもしれないけど、資料も作ったしローゼンさんには手順を全部伝えてある。きっと滞りなく、オルヴァ様の結婚相手は見つかっただろう。
オルヴァ様のお嫁さん、いったいどんな人だろう。気が強い人のほうがいいかもって言ってたし、意外とあのフランチェスカ様みたいな子がよかったりして。
いやでも、おっとり系の女の子のほうがオルヴァ様が寛げるかもしれない。結婚生活ってのは一生ものだし、波長が合う人がいいよな。
——オルヴァ様。最後にもう一回、会いたかったな。
俺が消えて、オルヴァ様はどう思ってるかな。まあ、昨日の出来事が気まずくてパーティ前に去ったのかな……くらいに思ってもらえたらそれでいいや。実際気まずくて、夜中のうちにオルヴァ様から離れたわけだし。
こんなことになるなら、無理を言ってでもオルヴァ様に抱いてもらえばよかった。
こんなことになるなら、身分差がどうのこうのなんて気にせずに、玉砕覚悟でオルヴァ様に告白しておいたらよかった。
——そしたら、愛人くらいにはしてもらえたかもしれないな。……って、はは。純粋なあの人が、愛人作って浮気するわけないだろ。
男たちが言い合っている声を聞きながら、俺は自嘲の笑みを浮かべた。
「なぁ、いいだろ、口んなかで出すくらい。うがいでもさせりゃわかんねーって」
「毎度毎度お前は……。まあいい、傷をつけるなよ」
「やったぜ!」
——えっ……!? 俺、こんなやつにフェラさせられるのか……!?
最悪の方向で話がまとまってしまったようだ。全身から血の気が引いていく。
大柄な男は身に纏っていた毛皮を無造作に脱ぎ捨て、垢じみたシャツを脱ぎながらこっちに近づいていくる。
「さ~て、しっかり楽しませてくれよ」
「っ……いやだ!! 近づくな!!」
「ははっ、いいねいいね。お前みたいに、いやがってる綺麗な男をいたぶるのが最高に楽しいんだ」
ニヤニヤしながら革のベルトを外し、下穿きをずるりとおろした男の股座には、黒々とした巨大な性器がそそり立っていた。えづきたくなるような雄の臭いが鼻をつき、俺は思わず顔を背ける。
「おら、こっち向け。大丈夫大丈夫、ちょっとしゃぶってくれたらそれでいいからさぁ」
「っぐ……」
ベッドに上がってきた男によって、俺はふたたびベッドに押し倒されてしまった。顔を横に倒して抵抗しても、胸の上に跨った男に顎を掴まれ、無理やり上を向かされる。
「くそっ……離せよ!!」
「はぁ、はぁ……ああ~~イイね。その嫌そうな顔、最高だ」
「っ……いやだ、ァっ……!!」
口の中に指を突っ込まれ、無理やり口を開かされてしまう。有無を言わさぬ力で突っ込まれた太い指が口内で蠢き、掻き乱され、唾液が溢れて頬を伝った。
男は恍惚とした表情で息を荒げながら、「へへ、小さいお口だなぁ。顎が外れちまうかもしんねぇなぁ。あはははっ!!」と笑い、もう片方の手で自らのペニスを扱き始めた。
——くそっ、くそおっ……!! この野郎、口の中に突っ込んできたら食いちぎってやる……!!
嫌悪感と激しい怒りで、眦から涙が伝う。
悍ましい肉の塊がいよいよ唇に触れそうになったそのとき、部屋の外が俄かに騒がしくなった。
そして微かに、今俺が最も聞きたい声が、聞こえた気がした。
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