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五月①・委員会と部活
五月に入ると、一年生は部活と委員会に所属するルールになっている。
転校生の圭吾も、このタイミングでの加入だ。
圭吾には俺と同じ美術部を勧めたのに、よりによって、あの天文部に入るという。
部長の花睡美智雄(かすいみちお)が、入学式翌日に教室まで勧誘しに来たらしい。
美智雄はとびきり美形で、キリッとした目は威圧感がある。
あの目に誘われると拒否しにくいのだろう。
しかも苗字が「花睡」。
この学園の創設者の孫なのだ。
「絶対に、断ったほうがいいよ」
「いやそれは無理です。僕は天文部に入る必要があるんです」
雅史先輩が所属していた部を、悪くは言いたくない。
けれど、天文部が天体観測の話をしているのを聞いたことがないし、俺と和登は「悪の組織」ではないかと、ふざけ半分に噂している。
「本当に怪しいぜ、あの部活。何やってるんだかさっぱり分からないし。人生何回目?って奴ばっかりだし」
圭吾は「ふふふ」と笑う。
「光夜って意外と鋭いですよね」
意味の分からない言葉を返され、はぐらかされた。
天文部の何がそんなに良かったのか、謎でしかない。
—
圭吾の委員会は、俺と同じ園芸委員に決まった。
園芸委員は一クラスに一人か二人で、学年で五人。圭吾が加わって全員で十六人になった。
基本的に三年間、同じ委員を続けなければいけない。
「俺は一年生の時、じゃんけんで負けて、園芸委員になったんだ」
温室を活動場所とする園芸委員は、稼働日が多いので人気がない。
「ダリア好き?」
「キク科の花ですよね。和名は天竺牡丹。規則正しい正円の花が美しいと思いますよ」
「確かに綺麗だけど、暗がりに並んでるのを見ると怖いよ。ダリアってちょっと圧がある」
「あぁ。何となく、分かります……」
広い温室はガラス張りで、日光を満遍なく取り入れることができる。
更に温度も管理され、一年中、花を咲かせている。
育てられているのは、ダリアのみ。
品種が豊富だから「これもダリアなのか?」と驚くこともあるが、とにかく温室にはダリアしか植えられていない。
「この学園ではさ、この花がとても大事なんだって」
「立派な温室を見れば分かります。入学式にもこれでもかと飾られてましたし」
「一年中咲かせようとするなんて、狂気だよ。空調とかかなり金が掛かってるはず」
三十年前にこの学園を創立した理事長が、始めたことらしい。
その頃はもっとずっと小さな規模の温室だったらしいけれど。
「意外と皆がこの花を気に入ったんだろうな」
「魅せられてしまったんですね、ダリアに」
無駄話をしていると、担当教諭がやってきて「全員揃っていますか」と挨拶を始めた。
新一年生と圭吾が簡単に自己紹介をし、在校生も一人一人挨拶をした。
その後、委員長が全員を六グループに分け、月曜から土曜の当番表を作った。
作業については、花の状態を見て都度、庭師が指示してくれる。
主には水やり、支柱立て、脇芽を摘むこと。
あくまで庭師のサポートなので、難しくはない。
俺は二年生と二人で、水曜の担当になった。
圭吾は、一年生と二年生と三人で、月曜の担当だ。
—
俺と圭吾は「特別」になって、より親しくなった。
趣味は合わなくても、二人でいるのは互いに気楽で楽しく、しっくりくる。
まるで遠い昔にも、一緒にいたことがあるかのように……。
朝も、昼も、夜も一緒に食事をとっている。
一年生と二年生の時は、一人で食事をするのが何よりも気軽で好きだったのに。
朝と夜は寮の食堂で向かい合って。
昼はランチボックスにセットされ配布されるから、平日は図書室で、日曜は寮の部屋で。
たまに俺が四限目をサボってどこかに隠れていても、少し呆れた顔をして「光夜、昼ですよ」と探しに来てくれる。
まぁ大抵は美術室か、医務室か、温室にいるから、圭吾にはすっかり行動パターンを読まれているようだ。
探しにきてもらえて嬉しいくせに、俺はとぼけたフリして「もう昼?」なんて返事をしたりするのだった。
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