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十二月④・次回の約束
クリスマスの夜の俺たちは、これで終われるはずがなかった。
圭吾を湯船のヘリに掴まらせる。
ボディソープを指に絡め、圭吾の後ろへ右手中指をゆっくりと侵入させた。
左手にもボディソープを纏い、背中を抱え込むように胸の突起を弄れば、圭吾はピクンと身体を跳ねさせる。
結局今夜だって、余裕を持って挑むことはできなかった。
腰を揺らし艶っぽい声を漏らす圭吾を前にしたら、欲を制御することなんてできずに、先へ先へと行為を進めてしまう。
ビジネスホテルのバスルームはとても狭かったが、普段から窮屈な場所でセックスしている俺たちには、何の問題もなかった。
窄まりをほぐす指は二本に増え、俺の下腹部は再び張り詰める。
「ねぇ、早く。早く挿れて、ください」
圭吾のものも硬く勃ち上がって、揺れている。
「あぁ、分かってる、焦らせるなよっ」
肩越しに振り向いた圭吾の唇に、貪るように喰らいつくキスをしながら、この期に及んで、コンドームが無いことに思い当たった。
一瞬の躊躇いで唇を離してしまった俺に、圭吾が縋り付く。
「光夜、今日は、このままで、出して、いいから……」
「あぁーーー」
思わず雄叫びをあげてしまう。
俺は窄まりから指を抜き、硬く勃ち上がった自分のものを当て、奥まで一息に貫く。
圭吾は背骨を反らせ、甘いうめきを溢す。
どうして圭吾はこんなにも俺を煽り翻弄するのか。
やはり経験豊富なのではないかと、疑いたくなる。
「こうや、いい、いい、あっ、きもち、いい」
圭吾を貫くスピードを上げれば、嬌声も大きくなり、俺も追い詰められる。
何てイヤらしい身体だろう。
俺は仕返しだとばかりに、圭吾が湯船のヘリに置いている手を、背後から押さえつけ、自分のものを弄れないよう固定した。
「や、やだ、出したい……。前、触りたい……。あっ、こうや、こうや、あっ」
圭吾の言葉を無視して、腰を強く強く打ち付ける。
俺も頭が真っ白になる程気持ちよく「もうでるっ。んっ」と圭吾の最奥へと欲望を叩きつけた。
その瞬間、ガクガクっと圭吾の膝が崩れ「んあぁぁ」と甘い悲鳴がバスルームに響く。
湯船の側面に圭吾が飛ばしたものが、ベッタリとついていた。
—
「なぁ、春休みにも、またどこかのホテルに泊まろう」
二人ともホテル備え付けのペラペラな浴衣に着替え、コンビニで買った下着を身に着けていた。
圭吾はシングルベッドの上でウトウトしながらも「えぇ、今度は二泊しましょう」と答えてくれる。
春休みは、俺と圭吾が離れ離れになる卒業式の翌日からだと、分かって言っているのだろうか。
「その時はさ、互いの顔を見ながらしようぜ」
「ふふっ」
枕に顔を埋めて恥ずかしそうに、でも少し期待しているように笑ってくれた。
「約束だぜ。圭吾」
そう言って頬を擦り寄せたら「えぇ。その時もうんと気持ちよくして」と微睡みながら呟いた。
スースーと寝息が聞こえ、結局二つあるシングルベッドは片方しか使わなかった。
昼前に圭吾と駅で別れ、俺は乗り換えるはずだった駅まで電車で戻った。
朝起きてから二人でホールケーキを半分ずつ食べたから、まだ身体の隅々まで甘さが漂っている。
暖かなマフラーを巻いて、電車に揺られながら、圭吾の言動に思いを巡らせた。
圭吾は「魂は人生を九回繰り返す」と言っていた。
そして魂が生きられる年数は四百何年だかに決まっていて、皆が等しいと。
だから、弟は幼くして死んでしまったけれど、その分、他の人生で長生きができると。
亮太が死んだ時には、九回の人生を全うした、亮太自身がそれを知っていた、と話してくれた。
つまり亮太にとって、今回が九回目の人生だったのだろう。
「圭吾が今死んだら立ち直れないよ」と俺が言った時には、自分は今回が最後の人生で六十年残っているから大丈夫だと教えてくれた。
圭吾も現在が九回目ということだろうか。
圭吾のじいさんは俺を「八回目」と呼んでいた。
どうやら俺は、もうそんなに何度も、人生を繰り返しているらしい。
こんな人生を繰り返す話、もちろん半信半疑だけれど、もっと良く分からないのは、圭吾はなぜ自分が九回目だと分かっているのか、なぜじいさんは俺が八回目だと分かるのか、そして縁は見えるものなのか。
ガタンっと電車が揺れて駅に着いた。
ここでまた乗り換えだ。
電車を下り寒風にさらされると、オカルト話について真剣に考えていた自分が、可笑しく思えて笑えてきた。
実家に帰宅すると、数日分の食事が作り置きされていた。
心が満たされている俺は、それを見ても寂しさは募らず、素直にありがたいと思えた。
翌朝見たテレビのワイドショーでは、高校生が殺される事件のニュースをまたやっている。
今だ犯人は一人も捕まっていないとのこと。
既に日本だけで三十二人の高校生男女が、背中を刺されて殺されたらしい。
幸い、十二月に入ってからは、パタリと犯行が止んでいるという。
「警察は彼ら彼女らの共通点の洗い出しに、全力をあげています」
アナウンサーは、夏に聞いた時と同じようなことを述べていた。
テレビはその後、年末年始らしいガヤガヤした番組ばかりになって、俺がテレビを付けているような時間帯に、もうその事件のニュースを目にすることはなかった。
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