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第二章 三月・プロローグ
ライトアップされた庭園には、今まさに満開の桜の大木から花びらがハラハラと舞い散る。
視界に入る木々は、学園の森とは随分と様子が違う良く手入れされた庭木だ。
お祖父様の七回忌が終わった夜、都内のホテルで兄二人と、食べ慣れないフレンチの食事をした。
兄二人は、揃って政治家になり、立派にお祖父様の跡を継いでいる。
「圭吾、そろそろ柚木の家に帰ってきたらどうだ」
上の兄が言い、下の兄が頷く。
「あの家で、また大きな犬を飼ったらいいじゃないか」
今度は上の兄が頷く。
「教諭の仕事が好きなんです。私には政治家よりも生徒たちと過ごす毎日が向いています。それに私にとっての飼い犬はクロワ一匹で十分ですから」
「圭吾はいつもそうだな。二十年前に死んだ犬を思い続けて新しい犬を飼おうとはしない。何事においても、そういう執着をみせる」
「あの犬だって、お前が新しい犬を可愛がっても、裏切ったなんて思わないぞ。むしろ安心するんじゃないか」
兄たちの言う通りかもしれない。
それでも、やはり私にとっての飼い犬は、モフモフした毛のシェットランド・シープドッグの雌、クロワだけでいいと、思うのだ。
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