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二月②・一緒に墓参り

車は海岸線を走る。 路地に入るとナビは目的地が近いことを知らせてきた。 減速し、路肩に車を止める。 庭のある二階建ての一軒家からは、賑やかな声が聞こえ、制服姿でスクールカバンを持った敦貴と、両親、兄、姉がゾロゾロと出てくる。 敦貴は恥ずかしそうに「いいよ、もうここでいいから」と家族を押し留めている。 「いや、先生にちゃんとお詫びをしないとだろ」 父親と思われる人が敦貴を叱る。 「あぁ、お父さん、そのことはもう。私は迎えに来ただけですので」 家族皆が同じ暖かい色に光っているのが、分かった。 あぁ、縁のある者同士で結びついた、素晴らしい家族だ。 「忘れ物はないか?」と世話を焼いている兄と敦貴は特にその光が夕陽のようなオレンジ色で美しかった。 この色味、前にも……。 それに気がつけば口にせずにはいられなかった。 「可笑しなことを言うかもしれませんが、お兄さんは三歳くらいの頃、クリスマスの夜に迷子になりませんでしたか?」 「え、あっ、はい。イルミネーションを見に行った時に」 母親が不思議そうに答えてくれる。 「もしかすると、その時にお会いしているかもしれません」 「まぁ!あの色違いのマフラーをしていた二人組の高校生?」 敦貴もその話にとても驚いたようで、俺を見てくる。 記憶は残っていても、その縁には気付けていなかったようだ。 「ご縁がありますね」 家族に皆に見送られ、敦貴は車に乗った。 「卒業まであと一ヶ月ですが、お預かりいたします」 そう挨拶をし、手を振ってくれる家族の元を出発した。 車の中で敦貴は口を聞かなかった。 私も何から話せばよいのか分からなかった。 軽自動車は学園に戻る前に大きくルートを外れて、光夜の墓に寄った。 後部座席に積んでいたダリアを持って、敦貴も降りるように促す。 敦貴にとってこの場所は、光夜の弟の墓という記憶だろう。 墓の前では、六十過ぎの女性が墓石に手を合わせていた。 敦貴の足がすくんだのが分かる。 それでも私は彼女に話しかけた。 「こんにちは。光夜くんのお母さんですか?」 女性は顔をあげ「はい」と答える。 茶色く柔らかそうな髪が、光夜と同じだと思った。 「私、高校生の頃、光夜くんと同室だった者です」 「あぁ」 女性は、嬉しそうに微笑んでくれた。 笑った顔も少し似ている。 「光夜に今になっても墓を参ってくれるような友達がいてよかったです。私はあの子に随分と辛い思いをさせてしまったので」 「光夜は、お母さんがこうしてお元気でいらっしゃることに、何より安心すると思います」 「ありがとうございます」 母親は俺に深々と頭を下げた。 そして、俺の横に隠れるように立つ敦貴を見た。 手に持つダリアを見て「お花をありがとう」と敦貴に微笑みかけ、俺たちに気を遣ったのか「お先に」と引き上げていった。 ダリアを手向け、敦貴と二人、墓前に手を合わせた。 私は思いを口に出して、光夜に告げる。 「光夜。私はもう光夜しか愛さないと思っていました。貴方のことが大好きだったから。でもね、私、好きな人ができてしまいましたよ。ごめんね。ゆるしてくれる?」 強い風が吹き抜け、光夜の母親が立てた線香の煙が大きく揺れた。 「光夜は、許すよ圭吾。全部許す」 敦貴は力強くそう言った。 車は学園に向かって走っていく。 しばらく考え込んでいた敦貴がようやく口を開いた。 「光夜のお母さんは、何回目を生きているところだろうね?九回目じゃないと思うんだ。彼女も色々なことを経験して、きっと素晴らしい九回目を迎えるよね」 「はい。私もそう思いますよ」 やはり敦貴は優しい子だ。 九回目らしく思慮深く、視野が広く、光夜が見たら、人生何回?っていうできる男だと、皮肉を口にするだろう。 そう考えたら少し愉快に思えた。

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