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第4話
×××
「……んっ、」
腰を抱かれ、おかえりを言う間もなく重ねられる唇。
強引に歯列を割り開かれ、舌を絡められれば、微かな煙草の匂いと共に竜一の熱と唾液でいっぱいになる。
竜一の仕事は、決して楽じゃない。
常に何処かを怪我したり。体力仕事のせいで疲労を抱えていたり。足を滑らせた先輩が、高所から落ちて……なんて事もあったそう。
そんな、死と隣り合わせの危険な仕事をしているからこそ、こうして無事に帰ってきてくれることが、何よりも……嬉しい。
*
「インドカレー、か」
ローテーブルに並べたのは、深皿に盛られたバターチキンカレー。付け合わせのサラダ。初めての手作りナン。
風呂上がりの湿った髪を肩に掛けたタオルで軽く拭きながら、竜一が腰を下ろす。
「珍しいな」
「うん。いつも和食だと、飽きちゃうかなと思って」
「飽きる?」
ラッシーをテーブルに置く僕に視線を向けた竜一の声色が、僅かに変わる。
「だって、毎日同じような味付けのものだと……たまには違うものが食べたいなぁって思うこと、あるでしょ?」
「……何が言いてぇ」
僕を見る竜一の眼が、みるみる鋭くなっていく。
ピリつく空気。
空になったお盆をテーブルの足下に置き、不安な気持ちを抑えながら竜一の顔色を窺う。
「怒らないで、聞いてくれる?」
「あぁ。怒らねぇよ」
怖ず怖ずと尋ねれば、既に不機嫌そうな空気を纏う竜一が軽い溜め息をつく。
「今日、テレビでね。男性は好きな女性と一緒になったとしても、たまには違う女性を食べてみたくなる生き物だって、言ってて。
僕は、男だし。何の取り柄もないし。せめて、お洒落な料理でも作れないと……いつか飽きられちゃうんじゃないかと、思って──」
「……チッ。くだらねぇ」
僕から視線を外し、奪うようにスプーンを掴む。
「和食のお前に飽きて、欧米やインドの女でも食うんじゃねぇかって心配か」
「……だって竜一、格好いいしモテるから」
「……」
「夜で働く女子大生や、クラブのママやホステス達に、人気だったって。前に聞いた事が……」
カツンッ──、
皿の底にスプーンの先が突き立てられ、伏せられていた眼が此方に向けられる。
心臓を射抜くような、鋭い眼。
「お前……俺が他の女に手ぇ出す男だとでも思ってんのか?」
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