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第6話

……やだ。 やだ、やだ、やだ…… 僅かに跳ね上がる、自身の指先。 その些細な痙攣により、心と身体を繫ぐ神経が波紋のように広がっていく。 酷く重い腕を持ち上げ、一斉に襲いかかる男達から、身を守ろうと── 「さくら」 暗闇の奥から響く、愛おしい人の声。 その声を頼りに指先で辿れば、眩い一筋の光が照らす。導かれるようにして腕を伸ばすと、脇の方から黒い手が現れ── 「……ゃ、やめっ!」 空を切って払い退ける。なのに、情けないほど非力な腕を簡単に掴まれて── 「おい、さくら!」 強く引っ張られ、上体を起こされる。僕の背中に大きな手が宛がわれると、掴まれていた手が離れ、僕の後頭部を優しく包む。 はぁ、はぁ、はぁ…… じりじりと痺れる指先。 脳から下がっていく血の気。 霧が晴れるように視界から暗闇が消えていき、愛おしい人の匂いや温もりに包まれているのに気付く。 「……」 力強い鼓動。 トクトクと響く音を感じていれば、強張っていた身体から力が抜け落ち、乱れた呼吸が整っていく。 「……さくら」 鼓膜を甘く震わせる声。 厚い胸板に手を添え、そっと視線を上げると、薄闇にぼんやりと浮かぶ竜一の顔が見えた。 瞬きをして視界をクリアにすれば、外から差し込まれる淡い光を反射した形の良い瞳が、真っ直ぐ僕を見つめている。 「お前、泣いてんのか?」 「……え……」 目頭の辺りに触れると、涙で濡れていて。 その刹那、フラッシュバックを起こした光景が思い出され、胸の奥が切り裂かれる。 ……なん、で…… 襲われた訳じゃないのに。 竜一、なのに…… 「……っ、!」 再び震える身体。 その身体を、竜一が強く抱き締める。一分の隙間もない程に。 「……悪かった。怖がらせちまってよ」 耳元で囁かれる科白に、心が震える。 ずっと見えなかった竜一の心が、こんなに近くにあったなんて── 「……ごめ、なさ……」 僕の、せいだ。 僕の軽率な行動で、竜一を傷つけた。 その上、竜一を拒絶するなんて…… 「ごめ、……」 「謝るんじゃねぇ」 ぶっきらぼうに。だけど優しく、僕の言葉を遮る。 甘く心を揺さぶる、竜一の溜め息。手のひらから伝わる、熱い想い。 優しい陽だまりのように温かい──僕の居場所。 とくん、とくん、とくん、とくん…… 心音と心音が重なっていき、ひとつに溶けあっていく。 竜一に身を委ねながら大きく息を吸い込めば、男らしい竜一の匂いが胸いっぱいに広がった。

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